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晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「殺したい女」(86・米 )65点

2018-07-30 12:16:28 | (米国) 1980~99 

・ 理屈抜きで楽しめるブラック・コメディ。




オー・ヘンリーの短編「赤い酋長の身代金」をヒントにジェリー、デヴィット・ザッカーとジム・エイブラハムのZAZによる監督、デイル・ローナー脚本で映画化されたコメディ。

財産家の妻を殺そうとしていた男が誘拐されたことを知り、犯人との交渉に応じず見殺しを企んだ。そのことを知った妻は、誘拐犯の若い夫婦とともに夫に仕返しを目論む。
さらに夫の愛人やその彼氏をも巻き込んだ大騒動となって行く。

夫のサムにダニー・デヴィート、妻バーバラにベッド・ミドラーの凸凹コンビが扮している。これだけでドタバタ感満載のキャスティングだ。

B・ミドラーは歌手としても一流でジャニス・ジョプリンがモデルの「ローズ」(79)ではオスカー・ノミネートされ、主題歌はグラミー賞を受賞していて、スタンダードナンバーとして今もってカバーされている。筆者のお気に入り歌手島津亜矢が昨年の紅白で歌っていたのも記憶に新しい。

そのB・ミドラーの怪演ぶりが、断然光っている。誘拐されたのに監禁先でダイエットに励みドンドン綺麗になっていく。挙句に気弱な誘拐犯夫婦(ジャッジ・ラインホルド、ヘレン・スレイター)を完全にリードして夫への仕返しを実行に移す。

D・デヴィートはどこか憎めない小悪党がはまり役で、ここでは思惑をことごとく外される気の毒な男。80年代にこうした勘違い男があちこちにいたことを思い出させてくれた。

警察も巻き込んだ、理屈抜きで楽しめるブラック・コメディは酷暑の夏にピッタリだ。



「インサイダー」(99・米)80点

2018-07-18 16:13:13 | (米国) 1980~99 

・ マイケル・マン監督渾身の社会派ドラマ。




「ラスト・オブ・モヒカン」(92)、「ヒート」(95)のマイケル・マン監督による実話をもとにした社会派ドラマ。米国タバコ産業における不正を報道したTVプロデューサー(アル・パチーノ)と大手タバコ研究開発担当(ラッセル・クロウ)の告発による葛藤を描いた。原作<「知りすぎた男」>はマリー・ブレナー。

CBS人気ドキュメンタリー番組「60ミニッツ」の熱血プロデューサー、バーグマン役のA・パチーノが信念のTVマンぶりで画面を終始圧倒する。冒頭、中東情勢が混沌とする中単身現地に乗り込んで、インタビューする様子で彼の人となりが窺える。

B&W社の研究開発担当だったワイガンド博士は良心と生活不安のハザマで苦悩する研究者。当時34歳だったR・クロウが悩んだ末告発に向かうまでを等身大で演じている。

マン監督はとことんリアリティに拘りドキュメンタリー手法で撮影しながら、ドラマとしての盛り上がりは忘れずにしっかり描いていて、157分の長さを忘れるほど。

これだけ堂々とメディアの裏側と企業の内部告発を絡めたドラマが実話がもとであるのは、あまりお目に掛からない。

TV局は会社を譲渡しようとしていて、B&W社の提訴により譲渡価格が下がることを恐れワイガントのインタビュー収録部分をカットして放送してしまう。

機密保持契約で縛られながら信念と良心に苛まれ情報提供したワイガントを守るため東奔西走するバーグマン。権力に屈しない熱血漢ぶりがA・パチーノにはピッタリなはまり役だ。

人気キャスターマイク・ウォレス役には本人かと見違えるほどイメージそっくりなクリストファー・プラマーが扮し、会社としてのTV局の立場とキャスターとして本来の役割を果たすのか微妙な立ち位置を好演。
ドン・ヒューイット役のフィリップ・ベイカー・ホールとともに本物感を醸し出している。

雑誌社に番組編集の信実を伝え世論を味方にすることでインタビューは放送されるが、そのための犠牲はバーグマンが負う破目に。その潔さは巨大な悪に向かう正義の漢だ。

大向こうは拍手喝采だが、バーグマンもワイガントも多大な傷を負ってしまった。しかしタバコに発がん性物質があるという事実は揺るぎのないものだ。

いまこんなストレートな映画は滅多にお目に掛からないほど貴重な作品だ。オスカー無冠に終わったが映画史に残る作品といって良い。

「バックドラフト」(91・米 )60点

2018-07-10 17:35:43 | (米国) 1980~99 

・ 消防士兄弟の葛藤と火災現場の臨場感を描いて大ヒットしたエンタテインメント。




消防士経験もあるグレゴリー・ワイデン脚本を「スプラッシュ」(84)のロン・ハワードが監督。

当時最先端の特撮技術を駆使して、シカゴ消防署17小隊の男たちの火災との戦いを描いたエンタテインメント・ドラマ。

題名は消防用語で密閉した室内で不完全燃焼の一酸化炭素ガスが外の酸素が入り化学反応で爆発する現象のこと。

父が17小隊の消防士だったスティーヴンとブライアンの兄弟。殉職した父の跡を継いだ兄・スティーヴンは小隊長で英雄的存在。弟が放浪ののちシカゴへ戻り消防士になる。

新入り消防士にことさら厳しく指導する兄の心中と弟の苦悩は夫々の葛藤となって行く・・・。

兄を演じたカート・ラッセルが男らしくはまり役だ。(父と二役)仕事一筋の命知らずで家庭を顧みることに欠け家を出てボート・ハウスの独り暮らし。

弟(ウィリアム・ボールドウィン)は少年時代ヒーローだった父の死の現場にいたトラウマから消防士になることを避けていたが、20年後シカゴへ戻った消防署には小隊長の兄や父の盟友アドコック(スコット・グレン)もいた。

シリアスなドラマ進行が放火犯探しや市議会議員とブライアンの恋人である秘書の登場などが絡みサスペンスやラブストーリー色が出始め収拾がつかなくなってきた。

辛うじてドラマを締めたのが放火捜査官のロバート・デ・ニーロ、服役中の常習放火犯のドナルド・サザーランドの登場。放火犯のカギは薬品<トリクティコラレイト>。

最大のハイライトは終盤の火災現場の炎とスタントマンを使わず頑張った消防士たち。監督は結局このシーンを魅せるために最大のエネルギーをつぎ込んだ感がある。

ハンス・ジマーのテーマ曲による消防士賛歌で強引にエンディングへ持っていったが、犯罪ドラマや恋愛ものが中途半端な印象は拭えない。

4半世紀ぶりに続編ができるそうだが、最新のSFXなどで魅せ場は格段に進歩した映像や音声で驚かせてくれることだろう。シナリオの破綻がないことを願うのみ。


「刑事ジョンブック 目撃者」(85・米 )80点

2018-05-13 14:40:04 | (米国) 1980~99 

・ アーミッシュ文化の理解・交流を描いたヒューマン・サスペンス。




’84ペンシルバニア州ランカスター郡からボルチモアへ旅するアーミッシュの少年が、フィラデルフィア駅のトイレで殺人事件を偶然目撃してしまう。その母親と少年を守るため刑事が奮闘するヒューマン・ミステリー。

監督はピーター・ウィアーでウィリアム・ケリー、アール・W・ウォレスの脚本。丁寧なつくりと巧みな編集でオスカー脚本・編集賞受賞作品。

冒頭、雄大な大自然に黒ずくめの衣装で現れるアーミッシュの人々。モーリス・ジャールの清々しい音楽とジョン・シールの映像アングルが期待感を持たせる。

アーミッシュとはドイツ系移民の宗教集団で、17世紀の生活様式と自給自足の農耕・牧畜をしながら質素に暮らす。争いを禁じ、異教徒との恋愛・結婚はご法度である。

母親レイチェル(ケリー・マクギリス)は夫を亡くしボルチモアの親類を訪ねるつもりが、息子・サミュエルが事件の参考人として引き止められる。

可愛い瞳のサミュエル(ルーカス・ハース)がトイレの隙間から事件を目撃するシーンはナカナカの緊迫感。

殺人事件の担当ジョン・ブックは、自分だけが正義という性格の刑事。結婚に責任を感じ、いまだ独身である。演じたハリソン・フォードが適役で「スター・ウォーズ」「インディ・ジョーンズ」シリーズでマンネリ気味だったイメージを払拭した。

緊張感あふれるサスペンスから、負傷したジョンブックが二人を村へ送る展開から切ないラブ・ストーリーへ展開する。

サム・クックの<ワンダフル・ワールド>が流れるカーラジオでのダンス・シーンが「マジソン群の橋」のような印象的なシーン。

二人の関係は「シェーン」のようでもあり、高倉健と倍賞千恵子の「遥かなる山の呼び声」に似ている。

3回出てくる字幕「イギリス人には気を付けろ」はアーミッシュではない米国人のことで、「外の世界の人には気を付けろ」という意味。

現在社会が抱える異文化への理解・交流の大切さを思わせる秀逸な作品だと感じた。





「ケープ・フィアー」(91・米 )70点

2018-05-09 12:20:28 | (米国) 1980~99 

・ デニーロの怪演で、恐怖より狂気を描いたスコセッシ演出によるサイコ・スリラー。




「タクシー・ドライバー」(76)以来の黄金コンビ、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の本作は、ジョン・D・マクドナルド原作で「恐怖の岬」(62)のリメイク。

ノースカロライナ州ローリー市を舞台に、刑期を終え出所したマックス・ケイティとその復讐相手である弁護士サム・ホーデン一家を描いたサイコ・スリラー。

マックスは14年前に起こしたレイプ事件での国選弁護士サム・ボーデンの前に現れた。

このことを忘れていたサムは、レイプ事件を憎むあまり、女性の素性などを隠し単なる暴行として処理してケイティの弁護をまともにしていなかったことを思い出す。

マックスに扮したデニーロは役作りのため肉体改造し、2万ドルもかけ歯並びを変える役作りは有名なデニーロ・アプローチそのもの。

家の塀に腰かけたり、一家の愛犬を殺したり、サムの愛人を誘惑しケガをさせたり、ハイスクールの娘へアプローチしたり、サムを巡る周辺にジワジワと恐怖感をあおり、追い詰めて行く。

対するサムはとても人間的で、金で解決しようとしたり、妻に愛人問題で問い詰められたり、すべて後手に回ってしまう。

私立探偵を雇ってもケイティに見抜かれ、暴行教竣で告訴される始末・・・。

オリジナルのサムは品行方正で一家を愛する正義の弁護士なので共感できたが、ニック・ノルディが扮するリメイクは現実味があるとはいえとても共感できそうな人物には描かれていない。

しかしケイティに同情できるかというと、執拗に一家につきまとう狂気の沙汰は尋常ではない。

スコセッシはバイオレンスを過剰なまでに加味させ、法の網を掻い潜って悪事を働くものへの制裁はどうあるべきかを宗教的な味付けしているようだ。

ケイティは背中に十字架の天秤に聖書と剣のタトゥーを入れ「俺は神で、神は俺と同格だ」と私刑とキリスト教的倫理を訴えている。

そして「過去を引きずることは、毎日少しづつ死んでいくことだ。それよりも私は生きていきたい。」といって自分の行いを納得させている。

スコセッシはオリジナルへの敬意も忘れない。前作のバーナード・ハーマンの音楽をエルマー・バーンスタインがアレンジしてグレゴリー・ペック、ロバート・ミッチャム、マーティン・バルサムをカメオ出演させている。

見比べてみるとケイティ役のデ・ニーロとミッチャムによる復讐劇の競演ともいえる。





「レッド・オクトーバーを追え」(90・米)70点

2018-03-02 12:15:59 | (米国) 1980~99 

・ <J・ライアン>シリーズのデビュー作は、米ソ冷戦時代での原潜を巡るポリティカル・アクション。




5作が映画化されているトム・クランシーの小説<ジャック・ライアン >シリーズ。デビュー作「乱気流/タービュランス」を「ダイ・ハード」のジョン・マクティアナン監督、ショーン・コネリー主演で映画化。撮影は後に「スピード」で監督デビューしたヤン・デ・ボン。

本作のCIA分析官J・ライアンに扮したたのはアレック・ボールドウィン。その後ハリソン・フォードが2作、ベン・アフレックなどが主演しているが、初演した彼のイメージが一番お似合いだ。

主演はソ連原潜「レッドオクトーバー号」艦長ラミウスのJ・コネリー。威厳のある風貌で物語を惹き込む力量は男のドラマに相応しい。

ゴルバチョフ政権が発足する’84年の米ソ冷戦時代。北大西洋で原潜レッドオクトーバー号が不審な航海をしているのを発見した米国は、その調査にCIAライアン分析官(A・ボールドウィン)があたることとなった。
ソ連はKGB政治官プーチンがレッドオクトーバー号で事故死したことに不審感を持ち、コノヴァロフ号などが追跡を始める。

ライアンはラミウスが亡命するためではないかと推測するが、国家安全対策本部は取り合わない。グリーグ提督の進言もあってライアンが3日以内にその真意を証明するよう命令を受ける。

一度しか会ったことがないラミウスとライアンの二人が、どう絡んで行くかがハイライト。

長編を2時間余りにドラマ化したため、流れに無理があるものの潜水艦同士の対決や男対男の意地の張り合いなど見所は満載。

脇を固めた脇役陣が多士済々。レッドオクトーバー号副長にサム・ニール、USAダラス艦長にスコット・グレン、ソ連コノヴァロフ号艦長にスティラン・スカルスガード、CIA本部提督にジェームズ・アール・ジョーンズなど顔を見ればお馴染みの男たちが登場するたびその言動に目を奪われる。

荒唐無稽で非現実的な展開にもかかわらず、結末まで興味深々で観ることができたのは、スタッフ・俳優たちの技量の賜物だろう。

「ナイト・アンド・ザ・シティ」(92・米)60点

2018-02-03 12:11:08 | (米国) 1980~99 

・ 「街の野獣」(50 J・ダッシン監督)を、A・ウィンクラー監督、R・デ・ニーロ主演でリメイク。




赤狩りで米国を追われたジュールズ・ダッシン監督がジェラルド・カーンの小説を映画化した「街の野獣」(50・R・ウィドマーク主演)を、舞台をロンドンから90年代のNYへ移し、アーウィン・ウィンクラー監督、ロバート・デ・ニーロでリメイク。

デ・ニーロ扮するしがない弁護士ハリーが、ボクサー同士の揉め事を知り示談を狙ったのがキッカケで、ボクシング界に魅せられ興行師になろうと大奮闘する物語。

A・ウィンクラーといえば、ロッキーシリーズのプロデューサーで有名な人だが、「真実の瞬間」で監督デビューし、本作が2作目。

デ・ニーロといえばNY大好きでボクシングでは「ライジング・ブル」など名作を輩出。しかも前年「ケープ・フィアー」で共演したジェシカ・ラングがコンビとなれば、自ずと期待が膨らむ。

デニーロ好きの筆者。ほとんど出ずっぱりで口先三寸の三流弁護士のデニーロだが、何とか這い上がろうとする男の悲哀さに欠け、軽さもなく失敗作と言わざるを得ない。

夫から独立して酒場経営を目指す愛人ヘレン役のJ・ラングは好演だが、あまりにも好い人で現実味がない。

拾い物だったのが、元ボクシング・チャンプのアル役・ジャック・ウォーデンや高利貸し・ペック役のイーライ・ウォラックが見られたこと。

「羊たちの沈黙」のタク・フジモトのカメラもダウンタウンの雰囲気を捉え、エンディングに流れるフレディ・プリテンダーの主題歌<グレート・プリテンダー>がぴったりだっただけに、シナリオさえ良ければ名作になれたのに・・・と想わせる作品だった。


「カラー・パープル」(85・米)80点

2018-01-11 12:36:57 | (米国) 1980~99 

・ 黒人女性の自立を描き、賞狙いと言われたS・スピルバーグ初のシリアス・ドラマ。




「ジョーズ」や「インディジョーンズ」などでヒット作を手掛けたスティーヴン・スピルバーグが、初のシリアス・ドラマに挑んだのは、20世紀初頭、米国南部ジョージアで暮らす黒人社会での女性の自立を描いた153分。

アリス・ウォーカー原作をメノ・メイエスが脚色、オスカー11部門でノミネートされながら無冠に終わった、その原因に憶測を呼んだ作品でもある。

1909年、紫のコスモスの花が咲く美しい小さな町ハートウェルに育つ少女のセリー(デスレータ・ジャクソン)は家で父さんと呼ばれる男の子供を生むが、子供は町へ養子に出される。

いきなりショッキングな展開で始まるこのドラマは、100年前の暮らしの在り方の異様さに驚かされる。

セリーは4人の子持ちで”ミスター”と呼ばれる若い男(ダニー・グローバー)と結婚。賢くて美人の妹ネッティ(アコーシア・ブシア)の身代わりだった。それは父さんが手放さかったから。

結婚したセリー(ウーピー・ゴールドバーグ)の暮らしは家事や子供の世話で奴隷のような扱いで夜はミスターのDVという過酷なもの。辛い環境にも彼女には悲惨さがなく、その暮らしを受けとめる包容力があるのが救い。

さらにネッティとの別れ、ミスターが憧れる歌手シャグ(マーガレット・エイヴリー)との出逢いと別れ、息子ハーボとソフィア(オブラ・ウィンフリー)の結婚と離婚と続いて行く・・・。

ほとんどが黒人社会での差別・幼児虐待など暗部が描かれ、スピルバーグには限界があるのでは?という予想を覆すリアルな描写だが、性描写の不得手なスピルバーグには、イビツながら夫婦の情愛があったミスターが極悪人にしか見えない。人物描写が類型的で、アカデミー協会からの反感もその辺にあったのかも。

白人市長夫人に抵抗してメイドにされたハーブの元妻役のO・ウィンフリー。本作でも「男からの暴力を許すな!」と叫んだ彼女は今年のゴールデン・グロ-ブ賞・セシル・B・デミル賞(功労賞)授賞式での名スピーチで喝采を浴びている。
オバマ大統領の立役者ともいわれる彼女はトランプ大統領の対立候補と噂されているが、本作でのソフィアは推薦した製作にも参加した音楽のクインシー・ジョーンズがいうとおりまるで本人のようだ。

U・ゴールドバーグの映画本格デビューでもある本作はブラックパワー全開で<女性の自立>を描いた力作となった。



「コンタクト」(97・米)60点

2018-01-06 10:43:50 | (米国) 1980~99 

・ 人類は、地球外生物との接触をどう対処するのか?カール・セーガンのSF小説を映画化。




カール・セーガンの小説を「バック・トュー・ザ・フィーチャー」シリーズ、「フォレスト・ガンプ/一期一会」のロバート・ゼメキスが監督。当時のSFXの粋を尽くした映像とそのストーリーは、SF映画のエポックメイキングとなった。主演の若き美しい天文学者エリーにジョディ・フォスターが扮している。

少女時代、無線ハムに熱中していたエリー。そのころ抱いていた夢を追求すべく、SETI(地球外生命体探査)研究所の電波天文学者となって宇宙からの電波を探査していた。

ついに26億光年彼方のベガ星雲からの電波信号をキャッチ。それは何らかのメッセージがあり、映像であることが判明。

解読にアメリカを始め全世界の英知が総動員され信号を解析、ついに映像化された・・・。

どちらかというと苦手なジャンルのSF映画だが、J・フォスター主演というだけで映画館で観た記憶がある。ストーリーは現実離れしているなと思いながら、彼女の美しさと神秘的なファンタジー映画として納得した作品。

今回20年ぶりに観たが、科学の進歩により「こんなに広い宇宙」にSETIが存在するかもしれないということがまんざら妄想ではないかもしれない現在、人類はどう対処するのかというこのドラマは、とても興味深い。

マシュー・マコノフィー扮する宗教学者が、出会った途端ラブメイク。ひた向きな主人公に 科学と宗教の在り方を問いながら、対立しながらもその考えを尊重するという不思議な役割りだった。

謎の大富豪ハデン(ジョン・ハート)はモデルがいる。マイクロソフト社創立者のひとりポール・アレンで、現にSITI研究所に1150万ドルの基金援助したという。

先端研究の世界でも熾烈な競争をしているのは周知のとおり。本作でも上司ドラムリン(トム・スケット)が成果を横取りしていた。

宇宙戦争の危機管理と米国のリーダーシップ争いに巻き込まれながら、日本から宇宙に飛び立ったエリーが見た宇宙は、まさにファンタジーだった。

映画を楽しみにしていたセーガンが完成前に亡くなってしまったが、感想を聴いてみたかった。

「ナチュラル」(84・米)60点

2017-12-30 15:59:21 | (米国) 1980~99 

 ・ 正義感溢れるヒーローを演じたR・レッドフォードの野球映画。 


バーナード・マラマッド原作「奇跡のルーキー」をもとに、米国における30年代のプロ野球界を舞台に不遇を乗り越え35歳でメジャー・デビューした男の半生を描いたファンタジー。

野球で天性の才能を発揮したロイ・ホップスがスカウトの目に留まりプロ入りを決意、シカゴへ来たとき不運にも謎の女性に銃で撃たれ道を閉ざされる。
16年後、35歳のルーキーとしてNYに現れた彼は、賭けが横行しているなか<愛と正義を遺憾なく発揮する>という大人の寓話。

原作は悲劇だったが、映画ではハッピーエンドに脚色。野球奨学生だったロバート・レッドフォードが47歳にして念願の野球映画に主演している。

アメリカにとってメジャー・リーグは日本の相撲のような存在。人気スポーツにつきものの賭けの対象になっていてスキャンダルも多く、20年代から世間を賑わしていたのは八百長問題。映画でも後にK・コスナーの「フィールド・オブ・ドリームス」にも取り上げられたシューレス・ジョー・ジャクソンのブラック・ソックス事件が有名。

本作でもベーブ・ルースがモデルの飛ばし屋(ジョー・ドン・ベイカー)との賭け対決があったり、なんと球団オーナーがギャンブラーと結託して自分のチームの負けに賭けるという奇想天外なもの。

弱小チーム・NYナイツの4番バッターとして彗星のごとく現れたホップス。オーナーの愛人メモ(K・ベイシンガー)の誘惑によるスランプを乗り越え、ホームランを連発する。
ボールが裂けたり、ネットを突き破ったりするのを観て、マーシー記者(ロバート・デュヴァル)はシカゴで会ったホップスを思い出す。
ホップスは大切なワールドシリーズ進出を決める試合に古傷が疼き、選手生命を絶たれるのを覚悟で愛称・ワンダー・ボーイのバットでバッターボックスに立つ・・・。
それは幼馴染だったアイリス(グレン・クローズ)のためでもあった。

ストーリーは奇想天外だが、R・レッドフォードを巡ってスポーツ選手連続殺人鬼の女性(バーバラ・ハーシー)・オーナーの愛人メモ(K・ベイシンガー)・幼馴染アイリス(G・クローズ)が彩を添え、名手キャレヴ・デシャネルの詩情豊かでノスタルジックな映像とともにこの時代感覚を醸し出している。

照明灯が花火のようになるなど、ケレンミたっぷりのレビンソン演出にはいささか荒唐無稽さはあるものの、ホップスが息子とキャッチボールするエピローグは<不遇だった父親が挫折から立ち直るための応援歌>でもあった。