goo blog サービス終了のお知らせ 

晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「クリムゾンタイド」(95・米)70点

2021-09-13 12:01:20 | (米国) 1980~99 

 ・D・ワシントン、G・ハックマンの適役演技対決を楽しむ。

 ディズニー大人版製作会社(ハリウッド・ピクチャーズ)による原子力潜水艦で繰り広げられる男たちのドラマを描いたポリティカル・サスペンス。
 リチャード・P・ヘンリック原案、マイケル・シファー原案・脚色を「トップガン」(86)、「トゥルーロマンス」(93)のトニー・スコット監督で映画化。デンゼル・ワシントン、ジーン・ハックマンの2大オスカー俳優競演である。

 ロシアでクーデターが発生し、ウラジオストックの海軍基地が制圧されてしまう。アメリカはフランク・ラムジー艦長(G・ハックマン)率いる米軍原子力潜水艦アラバマを、核ミサイル発射に備え出航させる。
 冷たい雨の降る夜、経験豊富な叩き上げのラムジー艦長は部下たちを大いに鼓舞する。副長はハーバード大卒のエリート、ロン・ハンター(d・ワシントン)。この対照的な二人が有事のときどのような対応を取るか?潜水艦という狭い密室で繰り広げられて行く。

 お互い自分の持ち合わせていない長所を認め合いながら<戦争とは、他の手段を持ってする政治の継続である>というラムジーと<戦争は、政治目的の手段だが戦争が目的になり得る>というハンターでは軍人としての在り方には違いがあった。
 
 ハンスジマーの重厚かつダイナミックな旋律、ダリウス・ウォルスキー撮影の華麗でスピード感溢れる映像とともに、潜水艦映画ならではの緊迫感あるストーリー展開は火災時の演習から始まり、ミサイル発射の是非で頂点に達する。

 無線機の破損により通信の途絶えた指令を巡ってミサイル発射を命令するラムジーと、無線機を修理して最終指令を確認すべきというハンターで意見が対立。お互いを反乱罪で役職を解任するなかで刻々とタイムリミットが迫って行く。
 
 組織人としてリーダーはどう在るべきか?その部下たちはどう動くべきか?まるで企業の教育訓練の場のような展開で身につまされる。

 本作はキューバミサイル危機のソ連潜水艦副長ヴァシリー・アルヒーポフのエピソードをモチーフにしたフィクションで、あくまで核戦争の危機を訴える社会派ドラマではない。
 現在、核ミサイルの発射権限は大統領のみである。しかし一歩間違えればこのような事態は起こらないとも限らない。ましてラムジーはヒロシマ・ナガサキの原爆投下は正しいといいハンターは容認すると言っているのだから。

 赤いキャップとシガーを愛用し、小型の猟犬ジャックラッセルテリアを艦内に持ち込む頑固で負けず嫌いのラムジーはどこか前大統領を彷彿させ、妻子を愛する黒人エリートでリベラルなハンターは元大統領を連想させる。
 演じた二人はともにはまり役で他にキャスティングは思い浮かばないほど。

 部下を演じた先任伍長ジョージ・ズンザ、補給担当艇長ジェームズ・ガンドルフィーニの個性派ベテラン俳優や兵器システム将校ウェップスを演じた若き日のヴィゴ・モーテンセンなど、自らの仕事に誇りを持つ男たちが見えない敵との戦いの緊迫感を盛り上げていた。

 「眼下の敵」(57)、「U-ボート」(82)、「レッドオクトーバーを追え!」(90)など<潜水艦ものに外れなし>という映画界のキャッチフレーズに納得の娯楽大作であろう。



 
 
 

 
 


「ボーダー」(81・米)70点

2020-09-22 14:31:26 | (米国) 1980~99 


 ・ J・ニコルソンのイメージ・ギャップを楽しむヒューマン・ドラマ。


 名優ジャック・ニコルソンがテキサス州エルパソの国境警備隊員に扮したサスペンス・ドラマ。監督はトニー・リチャードソン。ハーヴェイ・カイテル、ウォーレン・ウォーツなど個性派が脇を固めていて期待大。

 ニコルソン扮する警備隊員に、派手好みで浪費家の妻と貧しいメキシコ人女性を対照的に絡ませ、さらに私腹を肥やす警備隊員たちの姿を俯瞰で捉えることで不法入国の実態を描いている。

 テキサスの農業従事者にとって、メキシコ人の安い労働力なくして立ち行かないため不法労働者は必要不可欠な存在。経済状況が苦しく治安が悪いメキシコから安全なアメリカへ逃れようとするメキシコ人。今でも40年前と実態は好転していないのだ。

 そのボーダーラインで任務についている警備隊員はいたちごっこを容認するか、それにつけ込んで私腹を肥やすのか二者択一状態で主人公はどちらなのか?

 主人公のチャーリーは「シャイニング」(80)、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(81)のJ・ニコルソンのキャラクターから当然一筋縄では行かないだろうと推測するが、意外にも善悪をわきまえたいい人だった。

 同僚の隣人キット(H・カイテル)から悪事の誘いを頑なに断り、幼い弟ファン(マニュエル・ビエスカス)と乳飲み子を抱えたマリア(エルピディア・カリーロ)の救済に尽力する姿は何か企みがあるのでは?と勘ぐる程。
 おまけにレッド隊長(W・ウォーツ)まで賄賂を貰っていることを知りカモに餌やりをしていたロス警官時代からカモを射撃する立場になりかねない状態へ。原因は後払いをいいことにウォーターベッドやら家具まで世俗的な贅沢に走る妻マーシー(ヴァレリー・ペリン)の浪費から。

 想定外なことに、<たまにはいい人間でありたい>とマリアの赤ん坊を人身売買から救い、マリアに何の見返りも要求しない。終始ライ・クーダーのマリアッチが優しく語りかけるヒューマン・ドラマと変身していった。

 貧富の差や正義の喪失を描いた社会派ドラマか?それともB級アクション・ドラマか?この頃のJ・ニコルソンのイメージとは違う役柄に浸った110分だった。

「ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場」(86・米)70点

2020-06-25 12:01:30 | (米国) 1980~99 


・ C・イーストウッドの分岐点となったスラング連発コメディタッチの戦争映画。

 朝鮮・ヴェトナムで先攻を重ね名誉勲章を受けた軍曹が、古巣の海兵隊で落ちこぼれ小隊を鍛えグレナダ侵攻する戦争ドラマ。C・イーストウッド製作・主演で初老の鬼軍曹ぶりが見どころ。
 この手の映画は軍の協力なしでは不可能なため当初は陸軍に協力要請したが、内容が相応しくないという理由で拒否され海軍に変更された。その海軍も完成後プロパガンダ映画ではないことから軍の推薦は得られず、同年製作の「トップガン」とは対照的な扱いとなった。

 C・イーストウッド演じるトム・ハイウェイ一等軍曹はタフで頑固な愛国者だが、PTSD症状の酒浸りで別れた妻とヨリを戻すことにも不器用な軍隊馬鹿。朝鮮・ヴェトナムの歴戦の強者だが、除隊せず再び海兵隊に戻ってくる。
 戦地経験のないエリート上官ややる気のない落ちこぼれ集団を相手に戦場体験者ならではの実践的訓練で鍛えて行く。前半は「愛と青春の旅立ち」(82)に似た鬼軍曹物語プラス元妻アギー(マーシャ・メイソン)との物語がミックスされたストーリー。自称ロックの帝王スティッチ(マリオ・ヴァン・ピーグルズ)など、およそやる気のない隊員相手の訓練ぶりはまるでコメディ。
 上司パワーズ少佐(エヴァレット・マッギル)との確執は戦地体験のない官僚批判が痛烈。題名は気の良い直属上司でもあるリング中尉(ボイド・ケインズ)から出身大学を聞かれ<朝鮮戦争の激戦地>と答えたことからつけられている。
 後半は三度目の戦場グレナダ侵攻へ。パワーズ少佐の指示を無視見事目的を果たす流れは類型的だが、クレジットカードで支援要求したというウソのような逸話が目を惹いた。 

 盟友レニー・ニーハウスの音楽が懐かしく「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」(06)、「グラントリノ」(08)、「アメリカン・スナイパー」(14)へと変遷して行く戦争ドラマの彼の姿勢が窺える作品でもあった。

「カリートの道」(93・米)70点

2020-05-08 17:32:14 | (米国) 1980~99 


 ・ 2度目のタッグを組んだデ・パルマ×A・パチーノの米国版ヤクザ映画。

 エドウィン・トレスの同名小説の続編「それから」をもとに、ブライアン・デ・パルマ監督と「スカーフェイス」(83)以来2度目のコンビを組んだアル・パチーノ主演で映画化。

 NY麻薬ビジネスで名を馳せたチャ-リーことカリート・ブリガンテの40代を描いたサスペンス・アクション。

 麻薬犯罪から足を洗おうと決意し、恋人ゲイル(ペネロープ・アン・ミラー)とバハマで暮らすことを夢見るカリートは、捜査当局からマークされ、新興マフィア・ベニー(ジョン・グレイザモ)とのイザコザに巻き込まれるなど命の危険にさらされる・・・。

 息絶え絶えのカリートがバハマで暮らす夢を見ながら過去を回想するシーンから始まるこのドラマは、義理と人情に縛られながら足を洗おうとする日本のヤクザ映画によくあるパターン。

 デ・パルマ得意のハンディカム長回しとクレーンショットを多用した終盤ハイライトが見どころだ。クライマックスの地下鉄での逃亡と「アンタッチャブル」(87)でも魅せたNYグランドセントラル駅のエスカレータでの銃撃戦はデ・パルマの真骨頂。

 50代になったA・パチーノは前年の「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」で新境地を魅せ、ギラギラした面も程良く抜け渋味が出てきた。自分の衰えを密かに感じながらも、恩義を感じた相手の頼みを断れず深みに嵌まっていくオトコの葛藤を哀愁たっぷりに演じている。

 コカインに溺れるクレイジーな弁護士で怪演したのはショーン・ペン。自毛を抜いたパンチ・パーマの風貌はカメレオン俳優の面目躍如。

 中盤で中だるみも感じるが、ラストがより一層際立つための伏線で必要だったのかも・・・。

 ジョー・コッカーが歌う主題歌<You Are So Beautiful>がラブ・シーンとエンディングで流れ感傷を誘い、心に染み入ってくる。

 「アンタッチャブル」(87)と「ミッション・イン・ポシブル」(96)という大作の狭間でデ・パルマ本領発揮の144分を楽しんだ。

 
 

 

 

「追跡者」(98・米)70点

2020-04-13 16:47:22 | (米国) 1980~99 


・T・L・ジョーンズの当たり役を楽しむ。

「逃亡者」(93)で、オスカー助演男優賞を受賞したトミー・リー・ジョーンズが扮したジェラード連邦保安官(補)とその部下たちが逃亡した殺人容疑者の元CIA特殊工作員を追うサスペンス。監督はスチュアート・ベアード、共演はウェズリー・スナイプス、ロバート・ダウニー・Jr。原題は「U.S.Marsyals」

新型コロナ拡大に伴い在宅を余儀なくされ、映画館通いも2か月半ほどご無沙汰している。こんなトキはスカッとするアクション・サスペンスが最適だと思い本作を鑑賞した。

「逃亡者」(93)はリアルタイムで観ている。本作は公開当時評判があまり芳しくないためスルーしたが、懐かしい想いも重なって充分楽しめた。
あれから5年後チキンの着ぐるみで登場したジェラード。サントリーの缶コーヒーBOSSの原型を見る再登板は真面目な捜査に笑いを誘う。
上司のキャサリン保安官(ケイト・ネリガン)やレンフロ(ジョー・パントリアーノ)など4人の部下たちもお馴染みの面々も再登場。
加えて囚人護送機での墜落事故などド派手な序盤は、つかみの巧さが光っていた。

逃亡者の元CIA工作員シェリダン(W・スナイプス)が身を守るため同僚二人の殺人を犯したことがまもなく判明するが、スピード感が溢れ131分の長さを感じさせず編集マンとして実績を重ねた監督の本領発揮によるものだ。

中国人スパイと情報を流した犯人捜査が絡んで外交保安局と連邦保安局との合同捜査という展開は説得力がなく、サスペンスの魅力が希薄になってしまった。これが脚本デビュー作のジョン・ポークの力量不足が要因か?

その分補うかのようにアクション満載で若いW・スナイプスと中盤登場したR・ダウニー・Jr(ロイス捜査官)の切れの良いアクションが際立っていたし49歳のTLジョーンズも大奮闘。
イケメン捜査官に扮したR・D・Jrは当時薬物依存症で苦しんでいたというから驚きだ。

紅一点シェリダンの恋人マリー役のイレーヌ・ジェコブが彩を添えるが、演技力を魅せる場面がなく気の毒。ハリウッドは彼女を活かせる場所ではなかったようだ。

ジェラード保安官とその部下の連邦捜査官の活躍を描いたシリーズ化を企画していた思惑は外れてしまったが、その後「ハンテッド」(03)、「ノー・カントリー」(07)など一連の作品でT・L・ジョーンズのはまり役となっていった功績は大きい。



「ダイハード」(88・米)80点

2019-12-13 12:03:49 | (米国) 1980~99 


 ・ 斬新なヒーローとして話題を呼んだ、巻き込まれ型サスペンス・アクション。


 ロデリック・ソープの原作をジョン・マクティアナン監督、ブルース・ウィリス主演で映画化。定石を変えた等身大のヒーロー、精緻な脚本、斬新なカメラワークと編集で話題を呼び大ヒット。
 B・ウィリスはTVシリーズ「こちらブルー・ムーン探偵社」のデヴィッド・アディスンで知られるコメディアンだったが、本作が出世作となりシリーズ6作を全て主演していてその第一作目。

 クリスマスのロスで武装テロリストたちに占拠された高層ビルを舞台に、たった一人戦いに挑んだNY市警刑事ジョン・マクレーンの孤独な奮闘を描いている。

 巻き込まれ型サスペンス・アクションのお手本のような本作。ジェフ・スチュアートとスティヴン・E・デ・スーザの脚本に無駄がない。冒頭飛行機嫌いの主人公が裸足で親指を丸めるシーンが伏線となるなど前半の回収も見事。

 当時としては最先端のSFXによる爆発やヘリの墜落シーンなども迫力があるし、密室での巧みなカメラワークやワイルドな映像は、のちのノンストップ・アクション「スピード」(94)でブレークしたヤン・デ・ボンの手腕によるもの。

 ビル内で孤軍奮闘する主人公を困らせるのがロス市警やFBI、TVリポーターたちで、黒人のパウエル巡査部長やリムジン運転手が救世主となる愉快な展開も皮肉たっぷりで大衆受けを狙っている。

 バブル期の日系企業支社長(ジェームズ繁田)を殺害し社員30人あまりを人質にとったテロ集団のリーダーも、従来の悪役とは違ってダンディな知能犯なのも異色。そのハンスに扮したアラン・リックマンは、クールさで荒くれ男たちをリードし最後までジョンを苦しめる。実態は金庫に眠る6億4千万ドルの債権が狙いだったのも、政治色を出さない娯楽大作に相応しい。

 別居していた妻・ホリー(ボニー・ベデリア)に会うためのクリスマス休暇は、<世界一運の悪い男>の「愛しているとは何度も言ったが謝ったことはない」という妻との和解のメッセージとなった。
 

「スタンド・バイ・ミー」(86・米)80点

2019-09-20 11:35:21 | (米国) 1980~99 


 ・ ベン・E・キングのナンバーとともに蘇る少年時代を描いた名作。


 S・キングの原作<短編「THE BODY」>をロブ・ライナー監督で映画化。

 作家ゴードン・ラチャンス(リチャード・ドレイファス)は「弁護士エクリストファー・チェンバース、刺殺される」という新聞記事で知った親友の死。

 50年代末期、オレゴンの田舎町キャッスル・ロックで12歳だった少年時代を回想する・・・。

 行方不明の死体を探すため旅に出た少年四人組の冒険とひと夏の思い出を綴る一編は、S・キングの半自伝的物語でもある。

 当初監督はエイドリアン・ラインで企画されたが、スケジュールが合わずR・ライナーが起用された。監督自身の少年時代も重ねられ描かれている。

 男の子が大人の世界へ第一歩を踏み出す時期であることを思わせる12歳の少年時代。筆者も本作を観るたびにその頃を想い出す。

 頭が良く物語りを作るのが上手なゴーディ(ウィル・ウィートン)は兄(ジョン・キューザック)の死がトラウマとなっている。親友クリス(リヴァー・フェニックス)はアル中の父親や犯罪者の家族に悩まされている。

 後の二人、テディ(コリー・フェルトマン)とヴァーン(ジェリー・オコンネル)も、PTSDの父親や不良の兄(キファー・サザーランド)を抱え家庭が崩壊してしまっている。

 こんな四人の少年が死体を見つければヒーローになれると冒険の旅に出る。線路伝いに歩き汽車に轢かれそうになったり、鹿と対面したり犬に追いかけられたりヒルに噛まれるなど、危なっかしい2日間はかけがえのない男の子との決別でもあった。

 現在社会派に転じたR・ライナー初期の作品としても貴重なものとなっている。

 四人の少年を演じた俳優たちも同様だが、なかでもクリスを演じたR・フェニックスのその後の活躍とドラマを地で行くような23歳での早世は伝説となっている。

 樹の上での秘密小屋でポーカーとタバコで大人の疑似体験をする彼らは、ひと夏の体験からダンダン疎遠になって行くがこのたわいもない2日間は2度と味わえない貴重なもの。

 夏の終わりになると毎年観たくなる映画のひとつで、ベン・E・キングのスタンダード・ナンバーとともにまた蘇ってくる。
  

「ハードウェイ」(91・米)70点

2019-08-30 17:43:26 | (米国) 1980~99 


 ・ マイケル・J・フォックスとJ・ウッズの異色コンビによるバディ・ムービー。


 ハリウッドのアイドル・スターが役作りでNY市警の刑事とともに連続殺人犯を追うハメになるというアクション・コメディ。アイドル・スターにマイケル・J・フォックス、刑事にジェームズ・ウッズが扮し異色コンビによるバディ・ムービーに挑んでいる。監督は「サタデイ・ナイト・フィーバー」(77)、「張り込み」(87)のジョン・バダム。

 マイケルは「バック・トゥー・ザ・フィーチャー」のマーティ役でお馴染みだが、そこから抜け出せるかが見どころ。

 J・ウッズは「ワンス・ア・ポンナ・イン・アメリカ」(84)のマフィア役以来、個性的な脇役で鳴らした演技派。シリアスな役柄が多くアクション・コメディは珍しい。

 この二人のコラボによる相乗効果は期待通り成功したようだ。

 ただし、シリーズ化するほどには至らなかった。原因は二人の役柄に限界があって、次はどんな展開になるのかという広がりには無理な設定だったかもしれない。
 
 あるいは、マイケルの病(パーキンス病)が重くなったからか、ウッズが大作での貴重な脇役に引く手あまただったのか。

 連続凶悪犯パーティ・クラッシャーを捕り逃がした刑事ジョン・モス。
 新しい役柄に挑むため、本物の刑事から演技を学ぼうと知るアイドルスターのニック・ラング。<スピルバーグのオスカー授賞式で自分の名前をいわれなかった>とか<メル・ギブソンの刑事アクションは誰が観たいのか>とか自虐的ネタで本作は始まる。

 短気で乱暴だが刑事という仕事に命を懸けるが恋には不器用なジョン・モスのコンビは連続凶悪犯パーティ・クラッシャー(スティーヴン・ラング)という難敵を追ってマンハッタンを駆け巡る。

 最大のハイライトは、ジョンの交際相手であるシングル・マザーのスーザン(アナベラ・シオラ)まで巻き込んだタイムズ・スクエアの広告塔で繰り広げられるスリリングなアクション・シーン。

 改めてマンハッタン中心街でのロケができたハリウッドのパワーを知る想い。バブル末期の日本企業ブランドの華やかさも懐かしい。

 ポリス・アクション全盛期のこの時代、チョッピリ変わった相棒による本作は笑いありアクションあり心情ドラマありの盛り沢山なバディ・ムービーだった。

 

「眠れぬ夜のために」(84・米)70点

2019-08-28 12:01:13 | (米国) 1980~99 


 ・ J・ランディス監督による緩めの巻き込まれ型サスペンス・コメディ。


 不眠症のエンジニアが、ロスの空港で謎の美女をひょんなことで助け事件に巻き込まれるサスペンス・コメディ。「ブルース・ブラザース」(80)のジョン・ランディス監督でジェス・ゴールドスミス、ミシェル・ファイファー共演。
リチャード・ファーンズワース、ヴェラ・マイルズ、イレーネ・パパス、デヴィッド・ボーイなど豪華な布陣が脇を固め、さらに監督本人のほかポール・マザースキー、ロジェ・バディム、ドン・シーゲルなど著名な監督がカメオ出演している。

 この手の作品ではヒッチコックが第一人者だが、「ケンタッキー・フライド・ムービー」(77)でメジャー・デビュー以来ユニークな作品を手掛けてきたJ・ランディス監督が事件以来2年後、再起作として挑んでいる。

 事件とは、「トワイライトゾーン/超次元の体験」(82)撮影でヴィッグ・モローと子役二人の死亡事故のことで、落ち込んでいたランディスを応援するため有名監督のカメオ出演とつながった。
何しろトイレから出てきた浮気男がD・シーゲルで、J・デミは殺しや一味,J・アーノルドは浮浪者など、今となっては貴重なフィルムになっている。

 肝心のストーリーはかなり緩めで、行きずりの美女に振り回される主人公のお人好しぶりを追う展開は、ハラハラ・ドキドキ感は皆無。長身で個性的風貌のJ・ゴールドスミスの初主演。

 ヒロインM・ファイファーは「スカー・フェイス」(83)の情婦役で注目された若手時代。シャム猫のような魅力でシャワーを浴びるサービスカットも潔く?赤いジャケットと細身のジーンズがお似合いだ。

 その後J・ゴールドスミスは「ザ・フライ」(86)のハエ男、「ジュラシック・パーク」シリーズでの活躍、M・ファイファーは「危険な関係」(88)、「恋のゆくえ/フェビラス・ベイカー・ボーイズ」(89)などでブレークして行く。

 ふたりが繰り広げるエメラルドを巡る国際密輸組織との逃亡劇は、BBキングの<アーバン・ブルース>が流れる80年代夜のロスがお似合いだ。

「リバー・ランズ・スルー・イット」(92・米)80点

2019-07-23 12:01:12 | (米国) 1980~99 


 ・ モンタナの自然が美しいR・レッドフォードの監督3作目はB・ピットの出世作。


 「普通の人々」(80)で監督として高評価を得たロバート・レッドフォードが監督に専念、ノーマン・マクリーンの自伝「ノーマンの川」を映画化。グレイグ・シェイファーが主人公ノーマンを演じ、弟ポールに扮したブラッド・ピットがブレイクしたヒューマンドラマで、モンタナの雄大な自然を美しく切り取ったフィリップ・ルースロがオスカー・撮影賞を受賞した。

 厳格な牧師のマクリーン一家の真面目な長男ノーマンは、幼い頃から厳格だが慈愛に満ちた父(トム・スケリット)から自由本奔放な弟ポールとともにフライフィッシングの極意を教わってきた。
 モンタナの自然で生まれ育った兄弟は、やがてそれぞれの人生を歩み始める・・・。

 映画化を渋るマクリーンをレッドフォードが口説き落とし映画化したため監督に専念。ただしナレーターとして、ノーマンの人生を辿るその熱い想いを観客の心に語りかけている。(若干、語りすぎの面も)

 モンタナの風景は、雄大な自然と美しい川の流れがとてもマッチしていて、そこで穏やかで慎ましく暮らす4人家族がとても羨ましくなってくる。釣りに興味がなくてもフライフィッシングが神聖なものだという父の言葉に幼い兄弟がそれぞれの解釈で馴染んで行く様が丁寧に描かれる。

 一家はキリスト教長老派の教えを忠実に守る父と心優しく控えめな母(ブレンダ・ブレシン)の両親から性格の違う兄弟を描き、理想の教育を示唆するようなところもあった。
 決して何事も押しつけず兄弟を平等に愛しながら、父は弟を母は兄がより愛しているのでは?と感じさせるシーンがある。

 長じてノーマンが愛した雑貨やの娘ジェシー一家との家族の違いが描かれているのも興味深い。

 ゆったりとしたテンポで描かれるそれぞれの逸話は丁寧だがメリハリがないともいえる。とくに若い頃本作を観ると退屈でブラピの金髪と少年のような屈託のない笑顔しか記憶に残らなかったという人も多かろう。

 筆者のような高齢者には、美しい川の流れと人生の教訓に満ちた数々の言葉とともに懐かしく味わう作品として楽しめた。

 とくに父が最後の説教「ひとは家族であっても完全に理解することはできない。でも完全に愛することはできる。見守ることは可能だ。それこそが家族の役目である」が印象的。

 俳優業を引退するのでは?というレッドフォードが今後も監督として映画作りに関わってくれることを願っている。