・ 斬新なヒーローとして話題を呼んだ、巻き込まれ型サスペンス・アクション。
ロデリック・ソープの原作をジョン・マクティアナン監督、ブルース・ウィリス主演で映画化。定石を変えた等身大のヒーロー、精緻な脚本、斬新なカメラワークと編集で話題を呼び大ヒット。
B・ウィリスはTVシリーズ「こちらブルー・ムーン探偵社」のデヴィッド・アディスンで知られるコメディアンだったが、本作が出世作となりシリーズ6作を全て主演していてその第一作目。
クリスマスのロスで武装テロリストたちに占拠された高層ビルを舞台に、たった一人戦いに挑んだNY市警刑事ジョン・マクレーンの孤独な奮闘を描いている。
巻き込まれ型サスペンス・アクションのお手本のような本作。ジェフ・スチュアートとスティヴン・E・デ・スーザの脚本に無駄がない。冒頭飛行機嫌いの主人公が裸足で親指を丸めるシーンが伏線となるなど前半の回収も見事。
当時としては最先端のSFXによる爆発やヘリの墜落シーンなども迫力があるし、密室での巧みなカメラワークやワイルドな映像は、のちのノンストップ・アクション「スピード」(94)でブレークしたヤン・デ・ボンの手腕によるもの。
ビル内で孤軍奮闘する主人公を困らせるのがロス市警やFBI、TVリポーターたちで、黒人のパウエル巡査部長やリムジン運転手が救世主となる愉快な展開も皮肉たっぷりで大衆受けを狙っている。
バブル期の日系企業支社長(ジェームズ繁田)を殺害し社員30人あまりを人質にとったテロ集団のリーダーも、従来の悪役とは違ってダンディな知能犯なのも異色。そのハンスに扮したアラン・リックマンは、クールさで荒くれ男たちをリードし最後までジョンを苦しめる。実態は金庫に眠る6億4千万ドルの債権が狙いだったのも、政治色を出さない娯楽大作に相応しい。
別居していた妻・ホリー(ボニー・ベデリア)に会うためのクリスマス休暇は、<世界一運の悪い男>の「愛しているとは何度も言ったが謝ったことはない」という妻との和解のメッセージとなった。
彼らが狙うのは、6億ドルの巨額の債権。
外部と完全に遮断された、このビルの一室に、刑事が一人残っていた。
彼は、ロサンゼルスならぬ、ニューヨークの刑事。
たった一人の刑事と13人のテロリストの凄絶な戦い。
場所が閉ざされたビルの内部ということと、全てがコンピュータ仕掛けで、おいそれと動きがとれないスリル。
ブルース・ウィリス扮する刑事のアクションは、誠に凄絶で、我々観る者をグングン引き込んでいく。
このビルが日系資本のものであるという皮肉や、離婚を目の前にした、単身赴任の刑事という設定などが、いかにも現代的でリアリティーを感じさせる。
監督は「プレデター」のジョン・マクティアナン。
全てが解決したと思わせておいて、次から次へとショッキングなアクションのつるべ打ち。
かなり荒っぽい演出だが、存分に満腹感を味わわせてくれる。
外部から協力したロサンゼルス警察のサージェントが黒人で、ラストでがっちり握手するあたりも、観客層を意識した演出でニヤリとさせられる。