晴れ、ときどき映画三昧

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「ボーダー」(81・米)70点

2020-09-22 14:31:26 | (米国) 1980~99 


 ・ J・ニコルソンのイメージ・ギャップを楽しむヒューマン・ドラマ。


 名優ジャック・ニコルソンがテキサス州エルパソの国境警備隊員に扮したサスペンス・ドラマ。監督はトニー・リチャードソン。ハーヴェイ・カイテル、ウォーレン・ウォーツなど個性派が脇を固めていて期待大。

 ニコルソン扮する警備隊員に、派手好みで浪費家の妻と貧しいメキシコ人女性を対照的に絡ませ、さらに私腹を肥やす警備隊員たちの姿を俯瞰で捉えることで不法入国の実態を描いている。

 テキサスの農業従事者にとって、メキシコ人の安い労働力なくして立ち行かないため不法労働者は必要不可欠な存在。経済状況が苦しく治安が悪いメキシコから安全なアメリカへ逃れようとするメキシコ人。今でも40年前と実態は好転していないのだ。

 そのボーダーラインで任務についている警備隊員はいたちごっこを容認するか、それにつけ込んで私腹を肥やすのか二者択一状態で主人公はどちらなのか?

 主人公のチャーリーは「シャイニング」(80)、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(81)のJ・ニコルソンのキャラクターから当然一筋縄では行かないだろうと推測するが、意外にも善悪をわきまえたいい人だった。

 同僚の隣人キット(H・カイテル)から悪事の誘いを頑なに断り、幼い弟ファン(マニュエル・ビエスカス)と乳飲み子を抱えたマリア(エルピディア・カリーロ)の救済に尽力する姿は何か企みがあるのでは?と勘ぐる程。
 おまけにレッド隊長(W・ウォーツ)まで賄賂を貰っていることを知りカモに餌やりをしていたロス警官時代からカモを射撃する立場になりかねない状態へ。原因は後払いをいいことにウォーターベッドやら家具まで世俗的な贅沢に走る妻マーシー(ヴァレリー・ペリン)の浪費から。

 想定外なことに、<たまにはいい人間でありたい>とマリアの赤ん坊を人身売買から救い、マリアに何の見返りも要求しない。終始ライ・クーダーのマリアッチが優しく語りかけるヒューマン・ドラマと変身していった。

 貧富の差や正義の喪失を描いた社会派ドラマか?それともB級アクション・ドラマか?この頃のJ・ニコルソンのイメージとは違う役柄に浸った110分だった。


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