遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

ライオンのおやつ

2021年06月16日 16時31分50秒 | 読書

      ライオンのおやつ  小川糸(著)2019年10月発行

  偶然なのだが、近頃読む小説が、いずれも涙なしには語れないものが続いている。

  で、本書もまた涙なしには読めず、最後はタオルで顔を拭う羽目に。

  主人公「雫」(しずく)は、人生これからという時期に、癌で余命宣告を受ける。

  最期の時を穏やかに迎えようと、身辺を整理し都会を離れ、瀬戸内海の小島にある

  ホスピス『ライオンの家』にやってくる。

  ライオンの家の運営はとてもユニークで、美味しいものを食べ、好きなことをして

  決して無理することなく過ごせる環境が整えられ、残された時間を自分らしく生きる

  手助けをしてくれる施設。

  そこでは、利用者たちが自らで選択し、日々できる限り心地よく穏やかに、

  苦しむことのないように見守られながら、最期の時を待つ。

  その施設のお楽しみの名物の一つが入居者一人一人が望む「おやつ」。

  施設で手作りしてくれるおやつを、想い出とともに味わうひと時が表題となって

  「ライオンのおやつ」。各々のおやつに込められた入居者の想いの由来が語られ、

  みんなで、それらのおやつを味わう人生の大切なひと時は、涙を誘う。

  「ライオンの家」の代表・マドンナや料理担当の姉妹、島の人々、そして景色、、、

  それらの全てが穏やかで優しく、しみじみと味わい深い小説でした。

  そして、さて、と我が身を省み、そろそろ身辺整理をせねばならないのかも、、、

  などと、考えさせられもしたり、登場するスペシャルな“お粥”とは

  いったいどんな味なのかしら? そんなに味わい深いお粥には、

  まだ出会ったことないので興味が湧いてきたし、

  現実に、「ライオンの家」のようなホスピスがあるのなら予約しておきたいものです。

      わがまま母

 — あらすじ(ポプラ社)—

  男手ひとつで育ててくれた父のもとを離れ、ひとりで暮らしていた雫は病と闘っていたが、

  ある日医師から余命を告げられる。

  最後の日々を過ごす場所として、瀬戸内の島にあるホスピスを選んだ雫は、

  穏やかな島の景色の中で本当にしたかったことを考える。

  ホスピスでは、毎週日曜日、入居者が生きている間にもう一度食べたい思い出のおやつを

  リクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫は選べずにいた。

  — 著者から—

  母に癌が見つかったことで、わたしは数年ぶりに母と電話で話しました。

  電話口で、「死ぬのが怖い」と怯える母に、わたしはこう言い放ちました。

  「誰でも死ぬんだよ」けれど、世の中には、母のように、死を得体の知れない恐怖と

  感じている人の方が、圧倒的に多いのかもしれません。母の死には間に合いませんでしたが、

  読んだ人が、少しでも死ぬのが怖くなくなるような物語を書きたい、

  と思い『ライオンのおやつ』を執筆しました。

  おなかにも心にもとびきり優しい、お粥みたいな物語になっていたら嬉しいです。

       小川糸
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