ドット・コム・ラバーズ 吉原真里(著)2008年6月発行
(ネットで出会うアメリカの女と男)
う~む、かなりタフな女性だなぁ・・・というのが一番の感想です。
著者は、人生の半々を(といっても若いですが)日本と米国で暮らし、
米ブラウン大学で博士号を取得、研究者の道へすすみ、現在はハワイ大学
の米国研究の教授。
そんな著者のバックグラウンドを踏まえ読むと、興味深い文化論も付随
しているかな?とも思いますが、、、。
話は、彼女が「オンライン・デーティング」というインターネットで
デート相手を探す大手サイト『match.com』に登録し、そこで出会った
さまざまな男性との体験をまとめたものです。
サバティカル(授業から離れて研究のために与えられる期間)で1年間
NYに滞在したのを機に、時間的にも余裕ができたし、
彼女は「普段の生活では巡りあえないような人と出会えたら」との動機で
「オンライン・デーティング」を開始。
自分のプロフィルと写真をサイトに掲載、条件の合う相手を検索するのです。
このサイトに掲載する「自己紹介文」が、なかなかのもので、完服!
こんな風に、自分を表現できて、かつ相手に対する条件をこんなに上手く
提示することが出来る表現力って素晴しい。さすがです。
例えば、ごく一部ですが、
略
二つの言語と文化をまたいで生きているということは、私のアイデンティティ
の重要な一部で、デートの相手としては、他の文化に積極的な興味をもって
いる男性を好みます。文学、音楽、芸術を楽しむことも重要です。(私は
かつて、付き合っていた相手がトニ・モリソンが誰か知らなかったという
理由でわかれたことがあります。だから、この一文読んで、who's he?と
言っているような人は、メールをしないで下さい)
略
いかにも頭が固くてお高くとまったヤツに聞こえるかもしれないけど、
そんなことはないですよ!楽しいことが好きで、気取らなくて、だいたいは
情緒が安定した人間です。
略
くたびれるので止めますが、本当に分かりやすい自己紹介文なんです。
また、最後の7章では、彼女も花丸をあげたくなったという、彼女の文に
応答するメールが紹介されていて、その彼の文がなんとも素敵なのだ。
とにかく、NY滞在期間とハワイに戻ってから、付き合った相手は、
メールだけで終わったものから真剣な交際に発展した相手まで
さまざま綴られているので、私は途中、あきてしまいましたが、
最後のジェフの文章には、思わずニンマリ、『上手いな~』と。
こんな出会いがあるのなら、これだけ頑張った甲斐があったね、といいたく
なります。
結局、彼女自身はこの本では、ハーピーエンドにはならなかったのですが。
ですが、彼女の
「米国が人種、宗教も多様な国ということ。研究書、論文では伝わらない
個々の人たちの暮らしぶりや人間関係を、一人ひとりの男性と自分との関係
という一断面を通して読者に知って欲しい」
という意図は充分に伝わることと思います。
わがまま母