できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

もう一度、原点に立ち返る必要性

2012-09-11 17:49:05 | いま・むかし

http://mainichi.jp/select/news/20120911k0000e040233000c.html (兵庫の中学:同級生から集団暴行受け中3肋骨骨折:毎日新聞2012年9月11日付けネット配信記事)
この記事ですが、よく読めばわかるように、兵庫県川西市の公立中学校で起きたケースです。
兵庫県川西市には、市の条例にもとづく子どもの人権オンブズパーソン制度があって、それが私の前の職場であることは、このブログでも何度も書いてきました。
川西市子どもの人権オンブズパーソン制度の出発点は、90年代半ばに相次いだ子どものいじめ自殺などの問題に対して、「他市で起こりうることは自分の街でも起こりうること」という前提に立って、子どもの人権を尊重する教育を学校・地域社会・家庭で実現していこうという意識を高め、その方向でさまざまな取り組みを実施していくということ。そのことを、まずは教育委員会関係者が持ったことにありました。
また、市を挙げての子どもの人権を尊重する取り組みのなかで、学校や行政の対応の不十分な点を是正したり、実際にいじめの被害などで悩んでいる子どもへの相談・救済活動を行うシステムとして、この川西市の子どもの人権オンブズパーソン制度ができたのでした。
一方、実際に市議会で条例が出来たのが98年12月、実際に制度の運営が始まったのが99年4月、相談の受付開始が99年6月。本格的にこの川西市の制度が動きはじめて、13年が経過しました。そして、川西市の子どもの人権オンブズパーソン自体は、この13年、まさにフル稼働といってもいいくらい、熱心に仕事をしてきたと私自身は理解しています。
ですが、その13年間、オンブズはフル稼働していたとしても、当初の「子どもの人権を尊重する教育を学校・地域社会・家庭で実現していこうという意識」を高める取り組みを、川西市及び川西市教委、その下にある市立学校園は、いったい、どのくらい取り組んできたのでしょうか?? 
どうもこの新聞記事での川西市教委のコメントを見る限り、当該校や市教委は、被害を受けた子どもが当初、「からかい」を受けいていたことへの認識が甘かったのではないか、と思われてなりません。その段階ですでに何か対応しておけば、この暴行にまで至らずに、もっとちがった子どもどうしの関係が作れていたのではないか、とも思われてなりません。
また、この暴行が起きた背景に部活のあり方があるのだとすれば、99年7月に起きた故・宮脇健斗くんの市立中学校ラグビー部での熱中症死亡事故以後、川西市教委及び市立中学校はどんな部活改革をしてきたのかということが問われます。その時、死亡事故をふまえて原因究明の調査などに携わった私としては、あらためて、2000年当時の勧告・意見表明の中身に立ち返って、部活のあり方を見直してほしいと言いたくなります。
いずれにせよ、あらためて川西市、川西市教委及び市立学校園として、この暴行事件に関する報道を重く受け止め、自分たちが90年代後半に議論してきたことに立ち返って、もう一度、子どもの人権を尊重する学校・地域社会・家庭のあり方をどのように実現するのか、徹底的に検証・議論を行っていただきたい。また、そのために、子どもの人権オンブズパーソンとして、積極的に意見表明等、できる限りの対応をしていただきたい。
「もう一度、原点に立ち返って、みんなきっちり、やるべきことをやろうじゃないか」
あらためて、川西市、川西市教委、市立学校園、そしてオンブズの関係者に、このことを伝えておきたいと思います。




最新の画像もっと見る