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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

「乳幼児期」だけでいいの?

2007-08-17 13:08:33 | 学問

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/h1224-4c.html

「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について」(2004(平成16)年12月24日、少子化社会対策会議決定、以下「具体的実施計画」と略)という文書を、上記の厚生労働省ホームページで見ました。

これによると、今後の少子化対策関連の施策のなかに「きめ細やかな地域子育て支援の展開」という項目があり、この項目に沿った取り組みを通じての「目指すべき社会の姿」として、次のことが言われています。

「すべての子育て家庭が歩いていける場所に気兼ねなく親子で集まって、相談や交流ができるようになる(子育て支援拠点がすべての中学校区に1か所以上ある)」

この「目指すべき社会の姿」を実現していくために、今後の少子化関連の諸施策を実施していくということになれば、大阪市内には何か所の「子育て支援拠点」が必要になるのでしょうか。

「平成18年度学校基本調査」のデータによると、大阪市内の公立中学校の数は127校あるそうです。とすると、国レベルでの少子化関連の諸施策を前提にしていえば、大阪市内での子育て支援拠点は最低、127の中学校区に1か所以上ないといけない、ということになりますね。

このあたりの子育て支援拠点の整備って、いま、大阪市ではどんな状況になっているのでしょうか? また、もしかしたら、下記に述べるように、「乳幼児期の子どものいる親」対象の各種拠点の整備というところで、大阪市の場合も終わっているのではないか、という気がしています。「それで本当にいいんだろうか?」というのが、今の私の問題意識です。

というのも、国の考えているこの「子育て支援拠点」というのは、どうも乳幼児期の子育て中の保護者対象の拠点のようです。そのことは、「具体的実施計画」を見てもわかります。

たとえばこの「具体的実施計画」では、「つどいの広場事業」と「地域子育て支援センター事業」を軸として、2009(平成21)年度までに6000か所(全国の中学校区の約6割)の拠点を整備するといっています。しかし、この地域子育て支援センター事業は、「具体的実施計画」によると、「保育所等」で「専業主婦等が育児不安について専門家に相談したり、地域の育児サークル活動を行うことのできる」ものだということです。

私としては、乳幼児期の子育てが大事でないという気はないし、専業主婦の子育てはたいへんでないという気はありません。しかし、子どもが就学後だって親たちは子育てに悩むことがあるし、何らかの形で就労している親たち(それは父親も含む)だって子育てに悩むということ。この「具体的実施計画」でいうと、この就学後の子どもを育てている親たちへの支援という点に、今はあまり目が向けられていないな、という気がしました。

「具体的実施計画」の中身を見ても、少子化対策として打ち出されている国の諸施策は、乳幼児期の子育て中の親だけを対象としているものだけでなく、たとえば、若年層の就労支援や、体験活動を通じた子どもの社会参加・参画支援的なものも含まれています。それこそ、従来の児童福祉・社会教育(生涯学習)・学校教育・青少年健全育成・労働・医療などの施策の枠組みを越えて、乳幼児期(場合によれば妊娠期)から青年期に至るまで、トータルに子どもと保護者の権利保障を実現するという観点から考えていく必要があるような、そんな側面が強いように思われます。

とするならば、今後国レベルや大阪市を含めた地方自治体レベルでの「子育て支援」施策についても、乳幼児期の親子関係だけでなく、たとえば就学時のことや思春期以後のことも視野に入れた支援施策を考える必要があるのではないでしょうか。そのほうが、私の目から見ると、少なくとも今、国レベルで少子化関連施策が目指そうとしている方向性に合致しているような気がするわけです。また、せっかく大阪市が「こども青少年局」をつくって、全市的な少子化関連施策をこの局を中心に推進しようというのであれば、やはり乳幼児期の「こども」だけでなく、「青少年」の時期まで視野に入れた子育て支援プランの検討・実施が必要なのではないかとも考えます。

私は今ある少子化関連施策のすべてがまちがっているとも思いませんし、乳幼児期の子どもやその保護者向けの取り組みが不要だという気もありません。でも、「乳幼児期にだけ手厚くすれば、それで子育て支援は終わりなの?」と感じるのです。もちろん、家庭での子育てについて、国や地方自治体レベルでの支援施策がどこまで必要か、ということについては、いろんなケースを想定しながらの議論が必要だとも思いますが。


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