できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

この先、どうなるんですか?

2007-08-10 17:55:25 | アート・文化

さっき、大阪市こども青少年局のホームページを見ていたら、下記のイベント(体験事業)の参加者募集の記事がありました。

http://www.city.osaka.jp/kodomo/report/report_07.html

私がいうのも変なのですが、どういうイベント(体験事業)なのか、興味関心のある方はぜひ、応募してください。イベントそのものの中身としては、有名デザイナーやスポーツ選手などと子どもたちが交流して、その仕事の中身に直接触れる機会を作っていくものなので、面白そうだなという印象です。

と同時に、「これって、大阪市の青少年施策のなかで、どういう位置づけなんだろう?」という疑問や、「もしかして、『創造都市戦略』でいう、子どもたちの創造性を高めるための『一流の人材に触れる』体験活動の充実って、この程度のものなの?」という疑問もわいてきました。

特に後者の場合、「本当に大事なのは、こういうイベントで高まった子どもたちの社会・文化への興味関心を、例えば学校内での日々の学習や学校外での自主的な活動などにつなげて、どう持続的に育てていくのか、ということでは?」と私などは思います。たとえば、それこそ旧青少年会館施設を使って、子どもたち向けのファッションのデザインを学ぶセミナーとか、宇宙について学習教室とか、そういうことをやっていくんでしょうかね? そういうものがなければ、せっかく単発でイベントを組んでも、あとあとどこまで興味関心が持続し、そこから創造性が生まれてくるのか、と思ってしまうんですよ。

私としては、こうした有名人を招いての子ども向けの体験活動イベントは、「その後」の学習・文化活動と密接につながりをもって、はじめて意味を有してくるとも思うのです。そして、このように考えた場合、「はたして、大阪市として子どもたちの体験活動の充実ということについて、どういう枠組みを持っているんだろうか?」という、前者の疑問も芽生えてくるわけです。

また、この記事によると、今回のイベントは、大阪市全体で、各イベントごとにいえば、たった数十人が数回程度活動に参加できるという形態のようです。もちろん、新しい事業やイベントは、最初はこの程度の枠組みから出発せざるをえないというのも、私としてはたいへんよくわかります。

でも、最初はこの程度でも、「来年、再来年と同じような取り組みを続けていって、数年後にはこんな規模で子どもの体験活動充実に向けたイベントをやりたいんだ」というビジョンがあって活動に取り組むのか、「いやいや、とにかく今年はこの程度のイベントが組める予算がついたので、まずはできそうな範囲で体験活動のイベントやってます」というのとでは、同じ新規事業でも位置づけは変わってきますよね。

そんなわけで、この体験事業の実施それ自体は大事だと評価しつつも、「これからどうするんだろう?」という疑問を、「この体験活動事業に参加した子どもたちの興味関心をよりのばす」ということと、「大阪市として子どもの体験活動事業そのものの枠組みをどうするんだろう?」ということの2つの観点から、私としては大阪市の側にこの場を借りて示しておこうと思います。