角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

草履職人は攘夷派!?

2010年02月24日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤の唐草をベースに、緑唐草・茶唐草・紺唐草を三箇所に配してみました。
唐草四色揃い踏みとでも言いましょうか、ときにはこういう楽しい草履もイイですね。こちらであれば、まず年齢を問わずお勧めできるでしょう。

天気予報通り、二月とは思えない気温になった今日の角館です。おそらく二桁に乗ったんじゃないでしょうか、冬用作務衣では背中辺りが少し汗ばむ感じさえしました。
雪解けも一気に進んでいます。と言うか、こう暖かいと雪消しをしたくなるもんですね。乾いたアスファルトに日陰の雪を撒くと、僅かの時間で消えてなくなります。
明日は今日以上の気温になるとか。ほんとに桜の早咲きが気になってきました。

東京からお越しのおばさまひとり旅。『ツアーでは二回くらい来てるんだけど、ひとりでゆっくり雪を見たいと思って…』。今冬もこうして「雪を見たい」というお客様とは、何人もおしゃべりしました。それが今日のような春を想わせる気温では、その期待は裏切られた感じでしょうか。
それでも、『ゆっくり散策してみると、案外面白い町でしょっ』と言うと、『そうなのっ、ちょうど雛めぐりをやってるじゃない。もうあちこち寄って来たわよっ』。
お帰りにはご自分用の草履をお買い上げくださり、笑顔で次のお雛様へと向かいました。

今冬の「雪を見たい」で特筆すべきは、韓国からのお客様でしょう。韓国ドラマ「アイリス」の撮影に使われた田沢湖や男鹿を観光し、そんな中の一部が角館散策を愉しんでいます。
ただ残念なことに、そのほとんどがまったく日本語を話せません。実演の写真を多くが撮っていかれましたが、ほとんどが無言のままパチリですね。草履職人も日本語以外まったくダメですから、草履のご説明どころかおしゃべりそのものが皆無でした。

近年韓国人観光の増加に対応し、当地でも韓国語を学ぶ教室のようなものがあるそうです。もちろん自身の商いにプラスとなるならば、独自に勉強する角館人だっているでしょう。私にはそういうのがどうしてもダメなんですよ。これを偏屈と言われれば返す言葉はないのですが、いわゆる迎合が出来ないんですね。

何日か前、韓国ツアーのお客様がお越しでした。米蔵の中を見ているとき、日本語を話せる添乗員さんにスタッフのひとりが、『これからは韓国語ができないとダメだよ』と言われたそうです。スタッフは『はいっ、そうですね』と応えたようですが、もし私がそう言われたら、『日本に来るなら少しくらい日本語を覚えてくればっ』でしょう。もちろん実際には言えませんから、心の中だけですけどね。

大河ドラマは土佐藩が舞台です。当時の土佐藩は、尊皇攘夷派が激しく活動していました。それは外国人など寄せ付けない空気だったでしょう。藩主の山内容堂という人は、新しい日本を目指す薩長側にも組し、またあるときは幕府側を思っての言動もあったようです。西郷隆盛が山内容堂を指し、『単純な佐幕派のほうがはるかに始末がいい』と言わしめたエピソードさえありました。一見八方美人に思える山内容堂も、諸々のいきさつがあってのことでしょう。

角館に外国からのお客様が増えるのは、基本誰しも望むところだと思うんです。角館の良さがアジア各国あるいは世界に広く知られたらと思うと、こんな楽しい話はありません。でもそのために、たとえば角館の街に外国語の看板が並ぶのは、「なんだかなぁ」と思うわけです。

角館の草履職人は、山内容堂タイプの人間かも知れませんなぁ。

コメント (2)
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