角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

学問のススメ。

2010年02月23日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ベージュ基調のみつばちプリントをベースに、ベージュ基調の龍プリントを三本配してみました。
角館草履にしては珍しい、柄も色も抑えた配色ですね。一般に汚れ易さの観点から、白っぽい草履は敬遠されがちです。でもこちらの草履は見ようによって、かつてのワラ草履を思い起こさせる色ですね。さぁて、いったいどんなお客様がお選びになるのか、公開実演にはこうした楽しみもあるんです。

今日は全国的な晴天のようですが、当地角館もすっかり春の陽気です。最高気温は6℃ほどまで上がったようで、屋根に積もった雪が溶け出し、一日中ダラダラと水の流れる音がしました。これこそ春を身近に感じる音でしょう。
明日は今日を上回る二桁に近い予想です。春が近いと言っても未だ二月、ちょっと驚くくらいの気温ですよ。

1月28日のブログにご登場のおばあちゃんお二方。今日またふたり仲良くお越しくださいました。おひとりのおばあちゃんが、息子さんへプレゼントする草履をお買い上げのためなんですね。それが、『靴のサイズ何cmだっけシか?』とお訊ねすると、『あっ、大事なごど忘れだぁ』。あらあら、何のためにこの間は買わずに帰ったか分からなくなっちゃいましたねぇ。
それでもおばあちゃん、『まぁ、26cmもあれば大丈夫だべっ』と、息子さんに似合いそうな配色をお選びでした。

『せっかくだがら、今日も少し見せてもらうべっ』と、ふたり真剣な眼差しで実演見学です。ひとりのおばあちゃんが、『この草履、あれがらときどき夢サも出てくるものぉ』。夢にまで見る草履ですかっ、過分なお言葉ありがとうございますっ。
布草履を編むおばあちゃんは、『この間見せでもらって勉強になったぁ。あれがら参考にさせてもらってるものぉ。さすがにこごまで綺麗にはならねどもなっ、はははっ』。

この言葉を聞いて思ったのは、人というのはいくつになっても勉強が出来るということです。こちらのおばあちゃんはたまたま角館草履でしたが、対象はなんでもイイわけです。それまで見たことのなかったモノと出会い、心の中にひとつの目標が生まれる。「もっと上手くなりたい」「もっと深く知りたい」と考えている人は、実に元気ですよ。
これがまさに“学問のススメ”じゃないですかね。

町内にお住まいの母娘ペアさん。お母さんがとても面白い人で、『何年か前に一度見だったども、あらためて見でみればスゴい草履だねがっ』。娘さんもとても気に入ってくださり、今日のところは持ち合わせの都合で娘さんだけのお買い上げとなりました。
お買い上げは娘さんでも、おしゃべりはもっぱらお母さんです。角館草履の素材から健康効果、そして「首のツボ」からスリッパの弊害に至るまで、これまで私の知りえる情報をほぼ出し尽くした感じでしょうか。

お帰り際にお母さんが、『いや~、いろんた話教えでもらって、今日はありがどっ!』。
私が草履職人という道と出会わなければ、当然知りえない情報ばかりです。好きな道であれば、その「学問」はとても楽しいものですね。
コメント
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