緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

太田キシュ道子 2018年一時帰国ピアノリサイタルを聴く

2018-06-25 01:40:38 | ピアノ
今日(24日)は東京でマンドリン合奏の社会人団体の練習があったが、終了時間の1時間前に退出し、千葉の検見川浜駅近くにある美浜文化ホールへ向かった。
太田キシュ道子 2018年一時帰国ピアノリサイタルを聴くためである。

太田キシュ道子氏の演奏を初めて聴いたのは丁度1年前の6月、2017年の一時帰国リサイタルであった。
この時のプログラムはショパンやリスト編曲のシューベルト歌曲集であったが、ピアノの生の音で、こんなに美しい音を聴いたのは初めてであった。
このリサイタルの感動を記事にしたのであるが、確か半年前ほど前にこの記事に対し、太田氏ご本人がコメントを下さったのだ。
コメントで今回のリサイタルのことを教えて下さったが、去年のコンサートで聴いた音をまた聴きたいと思っていたので、自ら今年のコンサートの情報を収集したに違いにない。
いずれにしても今日のコンサートを聴けたことは自分にとって収穫だった。

千葉は自宅から遠く、コンサートが終って家に着いたのが真夜中。
明日は仕事なので、あまり夜更かしは出来ないが、コンサート直後の感動はすぐに書いておかないと時間が経過するうちに思い出せなくなるもの。
本当はもっと各曲ごとに具体的な感想を書きたいのだが、時間が足りないのが残念だ。

今日のプログラムは下記のとおり。

シューマン:子供の情景
メンデルスゾーン:無言歌集より14曲、カプリス作品33-3
ドビュッシー:子供の領分
チャイコフスキー作曲、プレトニョフ編曲:組曲「くるみ割り人形」

彼女の演奏で最も素晴らしいと感じるのは「音」だ。
ピアノという楽器が持つ鍵盤楽器特有の「音」を最大限に引き出している。
高音は突き抜けるような艶のある音。もちろん芯のある音だ。
一方でしなやかさ、繊細さもある。
今日聴いた高音の分散和音などは柔らかく、しなやかで絹の生地のようなイメージがする。
そして低音が重厚で力強い。
各音が織り重なりなるように響いてくる。
決して力任せに弾いているわけではない。
脱力している。楽器と格闘していない。
しかし聴こえてくるのは、様々な音が調和されて織り重なった力強い低音なのである。
このような音は録音でも聴ける奏者は限られるが、生の音で聴くと一層、その音の魅力に惹き込まれる。
つまりピアノの音は何百万も投資して立派な再生装置を通して聴いても、生の音には決してかなわないのである。
再生装置にお金をかけるより、ピアノは生の音を聴いた方が絶対にいい。
太田氏の音を聴きながら、そんな考えが頭によぎった。

また太田氏の演奏は流れが自然なのだ。
今日の演奏を聴きながら、自我というか、頭の意識的なものを乗り越えていると感じた。
作曲家の創造物そのものが表すものに身を任せるというのだろうか。
つまり曲の価値をそのままに自然に、また最大限に自分に同化させて演奏しているように感じた。
ここまで到達するのは大変な修練を要するのではないか。

音楽を表現するって、とてつもなく奥が深いと思う。
自分も楽器を多少やっているので、少しは分かるのだが、楽譜に書かれたことをいくら頭を使って解釈したところで、その曲の本質に到達できるわけはないのだ。
その曲の放つもの、それは人間の感情だったり、「美」そのものであったり、人の心を浄化するものだったり、そのようなものを感じ取れる能力が演奏家にとって何よりも大切であることを考えさせられる。
音楽の本質に立ち返ればおのずと大切なものが見えてくるように思う。

組曲「くるみ割り人形」はピアニストであり指揮者の編曲であるが、難曲だ。
太田氏はテクニックも凄い。
アンコールで最後に弾いたチャイコフスキーの曲で、彼女の持つあらゆるものが集約、凝縮されて表現されていたと感じた。

コンサートが終り、帰りの電車の中で気持ちが満ち足りていた。
いいコンサートを聴いた時はいつもそう感じる。
音楽が自分にとって必要なものだと感じられる瞬間だ。

来年も一時帰国リサイタルを行うことがプログラムに書いてあった。
実力者なのにコンサートや録音が少ないのは残念。
来年も太田氏の音を聴きに行きたい。

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4 コメント

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Unknown (太田キシュ道子)
2019-05-06 21:41:44
昨年は私のピアノリサイタルにお越し頂きまして誠にありがとうございました。

さて今年も、6月2日(土)14時より美浜文化ホールにて一時帰国リサイタルを開くことになりました。 お忙しいとは存じますが、ご都合がつきましたら聴きにいらして下さい。

まことに厚かましいお願いで申し訳ありませんが、お知り合いの方にこのコンサートを宣伝していただけませんでしょうか? どうかよろしくお願いいたします。

太田キシュ道子
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Unknown (緑陽)
2019-05-06 23:14:23
太田キシュ道子さん、こんにちは。コメント下さりありがとうございました。
今年のコンサートも聴きに行くことを楽しみにしておりました。
しかし予定を確認したところ、あいにく6月2日(日)は10時から17時までマンドリンクラブの練習日となっておりました。
6月23日に定期演奏会があり、練習を休むことはかなり難しそうです。
午前中だけ練習参加、午後は早退させてもらうことが出来るかどうかですが、今のところ状況次第といったところです。
インターネットで当日のプログラムを調べさせていただきましたが、今年も大曲ばかりの大変魅力的な曲目です。
しかも最後の曲は私の大好きなシューベルトのピアノソナタ第21番変ロ長調。
こうなったら是が非でも聴きに行きたいと思いますね。
マンドリンクラブの練習と重なっていなければクラブのメンバーにも宣伝しようと思ったのですが前述のようにこのつながりでは無理そうです。
5月25日のトークコンサートの方は聴きに行けると思います。
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太田キシュ道子さんリサイタル (グループ・アリス)
2020-07-14 13:32:20
緑陽さま
今週土曜日夜に、ご縁あって太田キシュ道子さんの
横浜、関内ホールでのリサイタルをお世話することになったものです。 キシュさんのピアノの音に感銘を受けていらっしゃるという記事を見て、ご連絡させていただきます。おっしゃる通り、ピアノで一番大事なものは音だと、私も思います。 いろいろな方のピアノコンサートを聞きに行っていますが、同じピアノでも百人百様の音が出ることに驚きます。ころなでせっかく予定していたコンサートがいくつか中止になってしまったと聞きました。
今回ご縁あって急に予定をすることになり、感染予防対策を実施しつつ皆さまのご来場をお待ちしております。 
7月18日(土)19:15開演 関内小ホールです。
曲目はピアノソナタ「月光」ブラームス幻想曲集
シューマン幻想曲 他
今回幻想曲特集で、興味深いです。
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Unknown (緑陽)
2020-07-14 21:48:23
グループ・アリスさん、こんばんは。コメント下さりありがとうございました。
実はコロナの緊急事態宣言が解除された6月下旬頃のことでしたが、もしかして太田キシュ道子さんの今年のコンサートがあるかもしれないと、インターネットで探していたのです。
けっこう時間がかかりましたが、2020年のコンサートプログラムが画像集のなかから見つかり、7/18、関内ホールで開催されることを知りました。
ただコロナ禍で中止の可能性もあるため、念のため関内ホールのホームページでイベントカレンダーを見たところ小ホールで7/18のイベントが掲載されていなかったため、その時点では中止になったとあきらめていたのです。
しかし、グループ・アリスさんがこのブログにお知らせくださったことで、聴き逃さずに済みました。とても感謝しております。
昨年はトークコンサートを聴かせていただき、太田さんと直接お話することも出来たのですが、その後の検見川のコンサートを聴きにいくことができず、残念に思っておりました(とくにシューベルトのピアノソナタ第21番は是非聴きたかった)。
7/18の関内ホールでのコンサート、もちろん聴きに行きます。
太田さんのコンサートは毎年楽しみにしております。
またあの素晴らしい音を生で聴くことが出来るのが本当に楽しみです。
このタイミングでお知らせいただき、幸運でした。とても嬉しく思っております。
ありがとうございました。
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