緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

岩重孝 作「うち、若葉!」を読む

2022-02-26 00:32:14 | アニメ
今夜は講習会で親しくなった方とラインセッション。
その後、ふと随分昔に読んだマンガのことを思い出し、そのマンガの作家の作品をアマゾンで見つけて読んでみた。

岩重孝 作「うち、若葉!」。

岩重孝という名前を聞いて知っている方は恐らく殆どいないのではないか。
私がこの作家の代表作に出会ったのが大学1年生の時。
中学時代の友達の家に遊びに行ったときに、友達から見せてもらったマンガがきっかけだった。
そのマンガとは、「ぼっけもん」。

九州、鹿児島出身の大学生が東京の夜間大学でおんぼろアパートに住み、アルバイトをしながら様々な人たちと交流を重ねて成長している姿を描いた作品で、私の中では名作とも言える存在のマンガだ。
友達の家で初めて読んでから惹き込まれ、その後何冊かコミックを買ったのだが、4,5巻を読んだところで中断してしまった。

浅井という不器用だけど曲がったことが嫌いな九州男児の主人公、恋人で気が強くしっかりもので優秀な西本(?)加奈子、頼りになり親友、泉、がさつだけど人のいい太士郎(漢字は忘れた)、それから故郷鹿児島の高校時代の親友、白石、川辺、米森といった名前がよみがえってくる。

このマンガのことが忘れられずに、30代の前半の頃だったと思うけど、まだインターネットが無かった時に、古本屋を地道に探して残りの巻を少しずつ買い集め、全14巻を完読した。今から20年以上前のことだ。

この14巻は今でも保管してあるが押し入れの奥の方にしまい込んでいるので、容易には取り出せない。明日明後日の休日に引っ張り出して読んでみたい。

今日、この岩重孝の数少ない作品の中で、「うち、若葉!」を読んだ。
昭和40年代から50年代前半の頃であろうか。
日本が最もいい時代だった頃だ。

「うちの家は 小さな港町の 昔は運河だったドブ川を500メートルほどさかのぼった町工場街で ささやかに定食屋を営んでいる」
この定食屋の高校生の少女が主人公だ。
気が強く男勝りだが、純粋で気持ちが真っすぐな優しい女の子の周辺で起きるさまざまな出来事を誇張も装飾もなく、実直なほどの表現スタイルを貫いているが、貧しくも社会の底辺で日々を一生懸命生きている人々に対する暖かい気持ちが行間に滲み出ている。

この定食屋。私も学生時代によく利用した定食屋に共通したものを感じる。
狭くて小汚いが、何故かそこにいるだけで気持ちが安らぐものを感じる、貧乏学生の私に帰り際にいくら入りのおにぎりを握って渡してくれたあのおかみさん。
20数年振りで再会したときはすっかり耳が遠くなってしまっていたが、メニューの「焼肉定食」とみそ汁の味は全く変わっていなかった。
そして確か2015年に訪れたときには廃業していた。

また工場勤務時代、毎週金曜日にある町に出かける用事があって、その帰りに立ち寄った、狭くて小汚い中華料理屋。
60歳くらいの夫婦でやっていた店だが、その時も黙々とマンガを読みながら食べている私に、毎回小鉢をサービスしてくれた。

こういう定食屋が好きだ。
金持ちや小ぎれいな人が入るような店ではない。でも人情がある。
食べ物にしても何にしても、高級品ばかりに目が行くようになったら、恐らく心は反比例するように貧しくなっていくと思う。
1年に2,3回、寿司やトンカツが食べれるくらいの生活が最も豊かなのだと教えてくれているような気がする。





コメント    この記事についてブログを書く
« パコ・デ・ルシア 「二筋の... | トップ | 絶えず起きる怒りの感情の原... »

コメントを投稿

アニメ」カテゴリの最新記事