緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

不朽の名作「タイガーマスク」を読む

2018-02-18 22:03:18 | アニメ
1960年代終わりから1970年代初めにかけて、タイガーマスクという漫画があった。
原作:梶原一騎、作画:辻なおき。
同じ時期にテレビでも放映された。
日本の漫画、アニメ史上、「巨人の星」とともに最高傑作であり、不朽の名作である。
私は小学校に上がる前後にテレビで見た。
ミスターNO、エジプトミイラ、黄金仮面といった、虎の穴が放った殺し屋レスラーとタイガーとの死闘の場面は今でもその場面を憶えている。
まだ白黒テレビの時代だった。
一緒に見ていた母から「面白かった?」と聞かれたことも記憶に残っている。
ただ、この頃、父がテレビのチェンネル権を握っており、父がナイター好きだったので、殆ど見ることが出来なかった。
同じ時期に放映されていた「巨人の星」も同様だった。

私は6歳か7歳だったのであるが、このタイガーマスクのテレビのエンデング・テーマ曲のシーン、メロディーは憶えていた。
「みなし児のバラード」という曲だった。
ものすごく寂しく、暗い曲だった。
伊達直人が独り孤独に、自分の孤児だった過酷な時代を回想しながら、真夜中をさまよい歩き、最後は朝日に向かって独り消えていくシーンだった。
こんなテーマ曲が現代にあるだろうか。
伊達直人という人物の全てを表現している曲だ。
自分が育った「ちびっこハウス」という孤児院の経営者、若月先生や、その妹であり直人の幼馴染のルリ子、そして孤児院の幼い子供たちに道化を演じ、決して最後の最後まで自分がタイガーマスクであることを明かさなかった。
ちびっこハウスの子供たちに、お金持ちでおっちょこちょいの「きざ兄ちゃん」と馬鹿にされても、そのことにむしろ嬉しさを感じるほどだった。
ただ、唯一、ルリ子だけが直人がタイガーマスクであることを見抜いていた。
直人は命を懸けて戦って得た莫大な賞金を、わずかな自分の生活費を除き全てを、ちびっこハウスを始め全国の孤児院に寄付する。
伊達直人ことタイガーマスクは、自分と同じ境遇にいる全国の孤児たちを幸福にするために、血みどろの命を懸けた戦いを続ける。
その戦いのシーンはあまりにも残虐で、現代では決して放映されることも漫画にされることもないものだ。そのくらい凄まじい。

タイガーマスクの命を支えているのは、この孤児たちへの一途な思いのみである。
厳しい世の中に出ていき荒波にもまれても決して自分を見失わなずに強く生き抜いていく「生き様」を死闘を通して子供たちに教えようとする。

それは言葉ではなく、行動のみが人を動かすことを示している。
人間の真心から出た行動のみが、人の気持ちを変えるのである。

5年ほど前にアニメのDVDをレンタルし、全巻見終えた。
今回、1か月ほど前に漫画(全14巻)を古本で購入に、今日完読した。
アニメと漫画ではストーリーがかなり違う。
原作の漫画では12巻あたりからアニメ全く異なる展開となる。
アニメと漫画で、決定的に異なるのはラストシーンだ。
私は原作の漫画のラストシーンの方が優れていると思う。
このラストシーン、小学生の時に友達の家で読んでいる。
あまりも悲しく、伊達直人という人物の孤独な生き様が、胸を打つ。
まさに不朽の名作に相応しい終わり方であろう。

アニメは孤児と伊達直人との交流のシーンが多い。
この孤児との交流のシーンに、現代で失われてしまったものを見る。
アニメではこのストーリーで成功しているし優れている。
このシーンを見たならば、昔の、1960年代後半から1970年代前半の日本に素晴らしい人間たちがいたことに気付くに違いない。とてつもなく優しい人間たちがいた
今の時代に失われてしまったものを、新たなものとして感じとるに違いない。

日本が高度経済成長を成し遂げ、世界第2位の経済大国を築いた背景に、この「タイガーマスク」という漫画の影響があったと信じたい。
伊達直人は恐らく戦災孤児であったであろう。
この「タイガーマスク」から、戦後の日本、廃墟から信じられないほどの繁栄を築きあげた日本人の凄まじいほどのエネルギー、根源的な人間愛を感じる。









【追記201802182322】

Youtubeで「みなし児のバラード」のオリジナル曲が見つかりました。



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