緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

合唱曲「沈黙の名」を聴く

2021-07-16 21:27:33 | 合唱
今日の夜、いつものように静かな週末の夜であったが、しばらく疎遠になっていた合唱曲を聴いた。

作詞:谷川俊太郎 作曲:三善晃 合唱曲「沈黙の名」
演奏:北海道立札幌北高等学校(平成12年度NHK全国学校音楽コンクール全国大会高等学校の部)

この曲、この演奏は私が今までたくさん聴いて来た合唱曲、合唱演奏の中ではトップクラスのものであり、このブログでもこれまで何度か記事に取り上げたことがあった。
今日久しぶりに聴いたが、冒頭から知らないうちに強い感情が溢れ出てきた。
この曲の持つ力は計り知れない。
合唱曲の中でも間違いなく屈指の名曲と言える。
これほど曲と詩が高次元で融合した合唱曲は無いのではないかと思えてくる。

この詩に出てくる主人公は間違いなく戦争体験者であろう。
「呼ぼうとして、ついに呼びえなかったもの」、「名づけられぬものの名」。
何故ならば、このものの「名」は、「彼女らを不幸にするばかりだから」、「故知らぬさびしさに誘うばかりだから」。

この詩の作者は答えを鑑賞者に問うている。
恐らく戦争の体験の無い世代には理解を求めても得られぬものなのかもしれない。
しかしこの主人公には戦争体験者として何かを伝えたいという強い衝動があった。

執拗に繰り返される「夏よ」という言葉。
伝えたくても伝えられない激しい葛藤、理解されぬことの淋しさ、無意味さ、諦念の情、あたたかいやさしさ。

この曲を聴くと心がリセットさせる。是非聴いて欲しい。それも無心に。
5分にも満たない、このシンプルな曲が秘めているさまざまな感情の持つ力が、聴く人のしばられた心を解き放ってくれる。

手持ちのCDから冒頭の録音をMP3に落としてリンクを貼った。
音が悪くなっている。ちゃんと聞くならCDの方が絶対いい。

作詞:谷川俊太郎 作曲:三善晃 合唱曲「沈黙の名」
演奏:北海道立札幌北高等学校(平成12年度NHK全国学校音楽コンクール全国大会高等学校の部)


【追記202107171055】

今日、昨日に続きこの谷川俊太郎さんの詩「沈黙の名」をあらためて読んでみた。
この詩の中に出てくる若い娘たちとは、この土地の人たちではなく、夏にだけ、つまり観光などで夏休みにだけ訪れる人たちではないかと感じた。
現在は、美しい花々、木々、小鳥たちに満ち溢れている平和で美しいこの地も、かつては戦争の舞台として数多くの死者を出したという負の歴史があったのかもしれない。
この詩の主人公はこの土地に生まれ育ち、この地で恐ろしい戦争を体験したのではないか。
主人公は、今となっては想像できないこの美しい地で、かつて戦争が繰り広げられ、多くの人々が犠牲になった、ということを少女たちに伝えたかったのかもしれない。
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