緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

伊福部昭作曲「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲」を聴く

2021-07-10 21:51:13 | バイオリン
久しぶりに伊福部昭の曲を聴いた。
「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲」(第2稿)(1948年作曲、その後1951年、1959、1971年に改訂)。
今日聴いたのは1959年の第2稿。

指揮:山田夏精(山田一雄)
ヴァイオリン:前橋汀子
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
録音:1960年

前橋汀子氏が17歳でロシアに留学する前に録音されたものらしい。
それにしても純粋さを感じさせるいい音、いい演奏だ。
冒頭のヴァイオリンソロの旋律、ゴジラのテーマが終ったあとのソロの旋律がすごく心に響いてくる。
日本人にか感じられない感性から生まれたものに相違ない。

この旋律を聴くと、伊福部昭のギター曲「古代日本旋法による踏歌」(1967年作曲、1990年に二十絃箏用に編曲)のModerato ballabile ma poco pesanteからしばらく続くフレーズが思い出される。
この「古代日本旋法による踏歌」は伊福部昭の曲で私が初めて聴いた(弾いた)曲だ。
1983年の秋のこと。大学のマンドリンクラブで鈴木静一の「交響譚詩 火の山」の練習をしていた頃だ。
あの北海道の晩秋の最も感受性の高まる季節の頃だった。
この鈴木静一の超名曲と重なって、伊福部氏の数少ないギター独奏曲を、絶版になっていた楽譜を偶然見つけて手に入れて弾いた時の感動は今でも忘れることは出来ない。





伊福部氏のギター独奏曲は1967年から1970年にかけて3曲発表されたが、この素晴らしい日本が誇るべき曲を取り上げるギタリストは皆無に近かった。
渡辺範彦や阿部保夫の録音があったが、私がギターを始めた1970年代半ばの頃からは聴くことは出来なかった。
(のちに阿部保夫氏の復刻版や西村洋氏のレコードに出会って初めてこの3曲を聴くことになる)

今日聴いた「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲」は、後に作曲されたゴジラのテーマやヴァイオリン・ソナタのフレーズや交響譚詩などの過去に作曲された曲のフレーズの片鱗が随所に現れる。
だからちょっと、曲の完成度にやや物足りなさを感じるが、前述のヴァイオリンソロの部分の旋律を聴くだけでも心が洗われるような
気がしてくる。
この旋律から聴こえてくるものから、日本人のもつ根源的な感情、比類のない感性の独自性といったものが感じられてくる。
本当に素晴らしい。

聴いた録音のYoutubeのリンクを貼り付けさせていただく。
冒頭の片山杜秀氏の解説がいろいろ参考になる。
「日本狂詩曲」がチェレプニン賞を取ったときのエピソードや、「北海道というローカルに狭く徹することで、かえって拡がってしまうという逆説的存在となった」、「北海道的なものの実感から離れようとしなかった。そのこだわり続けるしぶとさというものが、変節を知らない力強い音楽を育てた」という解説が印象に残る。

伊福部昭:協奏風狂詩曲(第2稿)

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