サンクコスト

風邪と生理前でだるだる～。しかも咳をする度に頭痛がする…。もうだめぽ。

生理がこない。
このまま女ではなかったことにできないだろうか。
知らぬ内に性転換したことになっていて、明日から女を営業停止にしたい。
無駄に女を生きるのには疲れた。

無駄。
サンクコスト。

この生理こそ、私にとってのサンクコストではないだろうか。

生理前って、神経質になる。
ムショウに片付けに執着できる。
この波に乗って、部屋を掃除と思い立ち、実行。
さっきまでゴロゴロしていた私とは思えぬほどの働きっぷりである。
結局、ゴミ袋3袋分のガラクタが出てきた。

上京当時、私は独り暮らしというものに幻想を抱いていたようだ。

素敵なオブジェ
観葉植物
籐でできたアジアンな小物入れ
かわいい食器
コルクボードに貼られた絵ハガキ

…などを幻想の果てに購入したが、やがてそれらはヤニ＆埃まみれになり、9年後、こうしてゴミになってしまった。
かなりの量のサンクコストを前に、私は昔の私にがっかりしてしまった。

掃除の途中、思わぬものを発見した。
中学時代のテストの成績表である。
親のコメントなんて、「この2行にどうやって簡潔に成績についての感想を述べようか」という熱意に溢れていて、見ていて面白かった。
コピーライターばりに作成された文言が、妙に熱く、そしてユニークに富んでいた。担任はこれを見て、どう思ったんだろう。しかも父は喫煙しながら書いていたらしく、ピンクの成績表には、煙草の焦げ跡が刻印されているではないか。…煮詰まっていたのね、父。
また、父が私の点数と偏差値を丁寧にグラフ化してくれたものも一緒に見つかった。
Excelで作成すれば一発で完成できる表。Excelだなんて、そんなハイカラなものがなかった当時、父はグラフ用紙と鉛筆を使って、私の成績の軌跡を記してくれていたんである。
私が、もし親であったら、こんな几帳面なことは絶対にできないだろう。
あまり成績の良いとは言えない娘に対し、両親は塾代や諸経費を惜しむことはなかった。

コンスタントにかかる経費、しかも自分以外の人間の為の経費を当たり前のように出資してくれていた両親に対し、それらのお金がサンクコストにならないように生きるのが、私の勤めなんだろう。

綺麗になった部屋でコーヒーを啜りながら、そんなことを思った。