晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『菜種晴れ』

2013-03-07 | 日本人作家 や
この作品は、千葉の勝山(現在の安房郡鋸南町)の菜種農家
に生まれた次女、二三(ふみ)が、5歳になって、江戸の深川
にある油問屋に養女になり、強くたくましく生きてゆく、とい
った、女性一代記的な内容です。

女性一代記「的」と書いたのは、二三が30歳になって話が終わる
からで、そういえば先日読んだ「だいこん」も、江戸屋の女将の
話も、生まれてから途中までの半生の作品が多く、若干の物足り
なさ感はありますが、いずれの主人公も魅力的です。

房州の勝山にある菜種農家に女の子が誕生します。1月23日に生ま
れたので、はじめは名前を「一二三(ひふみ)」にしようとします
が、菜種を扱っているので何よりも火は縁起悪いということで、一
を抜かして「二三」にします。

兄の亮太、姉のみさきと、そして飼い犬の”くろ”といっしょに畑や
海で遊び、健康的ですくすくと育ちます。
そして二三が5歳になり、江戸から油問屋「勝山屋」の主人、新兵衛が
家にやって来ます。しかし、兄は複雑な心境、姉は不機嫌。

地元でとれた新鮮な魚介で母が作る天ぷらは絶品で、二三も母から
教わって天ぷらを揚げて、それを新兵衛が食べて大絶賛。

ところで、なぜ亮太とみさきが不機嫌だったのかというと、じつは
二三が江戸に養女にもらわれていくということを兄は知っていて、姉
は、二三だけが江戸に遊びに連れて行ってもらえることにふくれてい
たのです。

5歳の女の子にいきなり「明日からうちの子じゃないよ」というのも
酷な話で、新兵衛は「江戸見物に行かないか」と誘います。

しかし、家族の様子が違うのを二三は感じ、そして、じつは江戸に
養女に行くことを知りますが、「ここで私がごねてオジャンになって
はいけない」と気丈にふるまいます。

さて、二三にとって”新しい家”である勝山屋に来て、ここでも気丈に
ふるまいますが、朝ごはんを食べたあと、庭に植えられた菜の花と、
勝山屋で買われている犬を見て、勝山のことを思い出し、ひとり泣きます。

新しい母のみふくは30歳を過ぎても子どもができませんでしたが、娘の
母親になれたことが嬉しく、「費えはかまいません」といって雛人形を
誂えます。
優しいみふくと新兵衛、そして女中のおみののおかげで、だんだんと不安
は消えていきます。

ある日、外に遊びに出た二三は、天ぷらの屋台があることに驚きます。
そして興味を持って、買って食べてみて、母の作った天ぷらとの味の
違いに愕然とします(母の作ったほうが数倍美味しい)。

そこで、新兵衛とみふくに、おみのに手伝ってもらいながら二三は
母に教わった天ぷらを揚げて、あまりの美味しさに新しい両親は大喜び。

この子の料理の腕をもっと上げさせたいと新兵衛は、加治郎という職人
に料理を教えに来てもらい、そして躾は、元辰巳芸者の太郎に教わります。

そして、深川に来て10年、二三は15歳になります。

ここから、さまざまな試練が二三に襲いかかりますが、両親の愛情、姉
代わりになって可愛がってくれたおふみ、加治郎と太郎の教育のおかげで
人間的に素晴らしい女性になります。

そして、30歳になった二三は・・・

主人公の強い生き方に、勇気をもらえますね。そして、江戸における「油問屋」
の重要性といいますか、当時は電気なんてものはありませんでしたから
油は揚げ物だけではなく、夜の灯りとしての生活必需品であり、また当時は
当たり前ですが木造住宅で、なにより怖いのが火事ということで、江戸時代
の「人々と油」という歴史にも触れて、勉強になりました。

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