晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

吉田修一 『悪人』

2013-03-12 | 日本人作家 や
国際映画祭であれだけ話題になったというのに、まだ原作を読んで
ないからという理由で映画を見るのをガマンして、とはいってもけっ
こう時間はあきましたが、ようやく読みました。

まあ、あれだけ宣伝をされると、いやでもチラリと内容は聞こえて
しまうわけで、なんでも、主人公?の金髪の男が逃げていて、それを
匿う女性?そのくらいの前知識は持っていました。

物語の舞台は九州北部、福岡と佐賀と長崎。佐賀と福岡を結ぶ国道に
ある三瀬峠で、福岡市在住の保険外交員、石橋佳乃の死体が発見され
ます。

久留米の理容店の娘で、彼女がどうして福岡で働くことになったのか、
そして、殺される直前までの行動が、警察の調書ばりに、心理描写など
ものすごく事細かに描かれています。

保険会社の寮に住む同僚2人とギョウザを食べに行って、その帰り、
佳乃は男と待ち合わせしているといって2人とは別行動に。

長崎に住む土木作業員の祐一は、出会い系で佳乃と連絡を取り合って
会い、そしてこの夜、福岡市内で再び会うことになっていました。
車を飛ばして、福岡に着いた祐一。待ち合わせ場所の公園沿いの道
に停めて待つと、向こうから佳乃が。クラクションを鳴らす祐一。

殺された佳乃の生前の交友関係から、祐一のもとに警察の聞き込みが。
しかし、いっしょに暮らす祖母は、その日の夜は車で出かけていない、
と言うのです。
警察の話では、もう犯人の目星はついている、とのこと。後日ニュース
で知るのですが、ある大学生が行方不明になっているのです。

佳乃は、その大学生と付き合ってるんだかそうでないんだか、とにかく
脈アリみたいなことを同僚に話していて、その彼が行方不明・・・

さて、話は変わって、佐賀の紳士服量販店の女性店員、光代が登場します。
ある日、出会い系で気になる男性を見つけます。その男は長崎に住む
土木作業員の男。

光代は、休日に祐一と会うことに。佐賀まで車で来た祐一。ふたりは
ドライブへ。そこで祐一は衝撃の告白をするのです・・・

話のはじめの部分で、佳乃を殺した犯人は大学生ではなく祐一だと書いて
あるので「いったい犯人は・・・」と書く必要もないのですが、件の大学生
は、じつは逃亡する相当の理由があったのです。

先述しましたが、佳乃と祐一と光代のバックグラウンドの描写がハンパない
ほど事細かに描かれていて、もう「恐れ入りました」の一言。

そして、この3人の周囲の人たちの描き方も”仔細漏らさず”といいますか、
ああ、こうやってこの登場人物たちが”出来上がった”んだなあ、と思わさ
れます。

久しぶりに「よくこんなすごいの書けるなあ」と感心してしまいました。
コメント
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