晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

白川道 『海は涸いていた』

2009-04-16 | 日本人作家 さ
面白い作品には、はやく結末まで読みたくてスイスイ読み進めて
いくタイプのものと、できるだけこの作品世界に浸っていたいと
思わせるものがあり、著者のヒット作『天国への階段』もそうで
したが、後者タイプとして楽しめました。

養護施設に育ち、事件を起こして服役、その後親友の布田とともに
上京した伊勢は、暴力団の資金をバックに会社経営をしています。

伊勢は少年時代、両親の離婚後、母についていき、母は船医と再婚
します。しかし継父は航海途中で病死、その後を追うように母も火事
で死に、伊勢は神戸の養護施設へ、父親違いの妹は養子縁組で東
京へ行きます。
母の死の原因は家の火事だったのですが、実は別れた元夫に、再婚
した新しい夫の実家の土地を騙されて奪われ、それを悲観した自殺
だったことを伊勢は知り、10年前、実父を銃で撃ち殺したのです。

それから10年が過ぎ、渋谷の公園でフリーのジャーナリストが銃
殺されているのが発見され、その銃は10年前、多摩川で金融業の
男が殺された銃と同じものであったことが分かります。
その金融業の男とは、10年前伊勢が撃ち殺した実父。
拳銃は、伊勢と同じ養護施設で育った仲間に預けて海に捨てるよう
に頼んだのですが、その仲間は捨てていなかったのです。

フリージャーナリストはどんな情報を掴んでいたのか。なぜ殺され
たのか・・・

伊勢のうしろ暗い過去が描かれており、また、闇の世界のごたごた
も物語に絡んできます。

ただ、フリージャーナリストが掴んだある女性の生い立ちは、伊勢
と密接な関係があるのですが、伊勢と女性との接触は文中では出て
きません。ちょっとだけ再会させてもよかったかな、と思いましたね。

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