晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

真保裕一 『奪取』

2013-11-13 | 日本人作家 さ
真保裕一の作品は今まで3~4作品くらい読んだのですが、この『奪取』を読んで
それまで持っていたイメージがガラリと変わってしまいました。

といっても、読んだのが出版された順番ではなくバラバラなので、こちらが
勝手に間違ったイメージというだけなんですけどね。そう、例えば奥田英朗の
「オリンピックの身代金」を読んだあとに「空中ブランコ」を読んだ、そんな
感じ。

手塚道郎という男。22歳。ある夜(仕事)に出ようとすると、怪しい男に呼び
かけられます。どこからどう見ても”ザ・やくざ”は、西嶋雅人を知っているか、
と聞いてきます。どうやら雅人は自分の名前を保証人にして金を借りたようで、
彼らのベンツに乗せられて事務所に着くと、奥からボコボコに殴られた跡で顔が
膨れた雅人が。

その返済額はなんと一千二百万円。

一週間以内に全額返済できなければ「ちょっとした荷物の受け渡し」という、なん
とも素敵な仕事を斡旋(どう考えても”ブツ”の運び屋)してくれます。

これから一週間、2人で寝ずに働いたとしてもさすがにそんな金額を稼ぐのは無理
なので、道郎の思いついたのは、ニセ札作り。

ウダツの上がらない毎日から、ここらで一発デカイことをやりたいと考えていた
道郎。ニセ札とはいっても、アタッシェケースの札束の上だけ本物で下は新聞紙
のようなセコい手ではなく、どうせやるなら一千二百万全額”ホンモノ”を手に
してやろう、と・・・

まずは、田舎にある人通りの少ない場所にあるキャッシュコーナーに狙いを定め、
板金で働いてる雅人にバーナーを借りてきて焼き切って、中から現金の識別機を
頂戴しよう、と計画。

もちろんこれには危険が一杯。日本の警察のレスポンス・タイムは世界一優秀な
ので、近くの信号機に発火装置を仕掛け、そちらに警察が出動している最中に
終わらせて逃げよう、と。

第一の計画はなんとか成功。ついでにキャッシュコーナーに入っていた現金数十
万円もいただきます。
さて、ここからが本番。盗んだ識別機がきちんと識別するようなニセ札を作るこ
とに。返済期限は明日、どうにかニセ札は完成します。

いよいよ実行に移りますが、その最中、ちょっと気になることが。とある銀行の
支店で道郎は、謎の老人に声をかけられます。そのあと、別の支店でもその老人に
ふたたび遭遇。バレたのか・・・?

あとほんの少しというところで失敗に終わり、ヤクザに捕まってしまう雅人。
道郎も捕まりそうになりますが、なんとそこにさっきの老人が助け船を・・・

老人はいったい何者なのか。そしてヤクザの追っ手から逃れるために名前を
変える道郎。どうにかして雅人を助け出さなくては・・・

テーマこそ重苦しそうですが、全体的にライトタッチで端々にユーモアもあって
スラスラと読み進みました。そしてラストは、まさかまさかの大どんでん返し。

しかしまあ、この作品を読んでの収穫は、真保裕一ってこんな一面を持ってたのね、
ということと、ニセ札を作るにはそれなりの資金も必要で、結局は「いってこい」
じゃん、ということ。




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