晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『この世の春』

2021-02-07 | 日本人作家 ま
ちょっとここのところ忙しくて本を読む時間が取れず、酒を隠れて飲むように寝る前にチビリチビリと少しずつ読んでいます。

さて、宮部みゆきさん。この作品は「作家生活三十周年記念作」なんだそうでして、文庫で買ったのですが、上中下の三巻、ページ数が上が三百余、中が三百余、下が四百余とそれぞれ合わせると千ページ超という、まあなかなかの長編。先月中には読み終わるかなと余裕ぶっこいていたら二月に突入してしまいましたとさ。

北見藩という二万石と小藩ながら譜代、場所は下野といいますから現代の群馬県あたりですが、架空ってことで。この北見藩で政変が。六代藩主の北見重興が病のため隠居となりますが子がおらず、七代目は従兄が就任します。重興が藩主の時代にちょっとしたゴタゴタがありまして、藩の中枢は初代からの家臣か身内でがっつり固められていたのが、郷士あがりの伊東成孝という新参者が出世し御用人頭になり、重興はこの伊東にまかせっきりにし、引きこもり状態に、というバックグラウンド。

物語は、元作事方組頭で現在は隠居の父と暮らす各務多紀の家に夜中「ごめんください」と女の声が。そこには幼い男子を抱いた見知らぬ女。「ここは各務数右衛門さまのお宅でしょうか」と聞かれますが、はて、この女とそしてこの男子は?と考えていると、わたしは御用人頭の伊東成孝様のご嫡男の乳母でございます、と名乗り、さらに「本日、主がお役を解かれて蟄居禁足(自宅謹慎・外出禁止)を命じられました」というではありませんか。しかし、隠居する前の父と伊東とはこれといって接点もなかったのですが、女はふらふらで男子も具合悪そうだったので、とりあえず今夜だけは泊まってもらい、翌朝に知ってる寺を紹介します。
数日後、六代藩主の重興が病を理由に隠居、そして御用人頭の伊東成孝は役を解かれたその日のうちに自害という衝撃ニュースは父と多紀の暮らす村にも届きます。あの伊東の息子は無事に寺に着いたようです。

これと言って悪い評判の無かった重興ですが、強制隠居の理由は「乱心(心の病)」で、隠居後は「五香苑」という藩主別邸に医師の監視のもとで暮らすことになります。それから数か月後、従弟の田島半十郎が旅姿でやってきて「今すぐいっしょに出向いてもらえないか」と急いでいる様子。明らかにデートの誘いではありません。そして馬に乗ってしばらくして着いた先は、五香苑・・・

父を訪ねてくる藩士から「重興様は五香苑にお住まいに・・・」と耳にしていた多紀は五香苑に連れてこられた理由が分かりませんが、そこにあらわれたのは前の江戸家老、石野織部。石野は多紀に「(みたまくり)について知っているか」と尋ねます。

「御霊繰(みたまくり」とは亡くなった霊と交信をするという霊媒師のようなもので、じつは多紀の母親は北見の領地にある出土という村の村長一族の出で、母の家は御霊繰の一族だったのです。石野は多紀を五香苑近くの洞窟に連れていくと、檻の中にいた男が「息子を助けてくれて礼を言う」と言います。そう、この囚人は伊東成孝・・・

じつは伊東も出土の村長の一族の血を引いていて、伊東が話すには、出土村は焼き討ちに遭って村民は殺された、といいうのです。真相を知るため伊東は(御霊繰)の技を使って重興に近づき、重興の乱心の理由は殺された出土の亡霊に憑りつかれているそう。

重興と会うことになった多紀。しかし重興は大人なのに発する声はまるで少年。さらにもうひとり、女性にもなったりします。多重人格なのでしょうか?
嫁ぎ先から離縁されて出戻った多紀の身の上話に重興は同情し、徐々にですが重興の心の病のきっかけとなった出来事が判ってきます。

重興が別人格になってしまうのは過去にどんな忌まわしい出来事があったのか。重興の前の藩主、つまり重興の父は名君と評判だったのですが、その父の秘密とは。十数年前に起きた数件の少年の失踪事件はこれに関係があるのか。

宮部みゆきさんの得意ジャンル「時代小説」「推理小説」「SF」「ファンタジー」を合わせたような作品。ぶつかることなくそれぞれうまく混ざり合っています。
「こいつぁ気合いを入れて読まないといけんぞ」と、久しぶりに本好きの心を震わせてくれました。

はじめのほうで触れましたが、文庫で千ページ近くある場合、一冊ではさすがにぶ厚くて無理ですが、五百ページくらいならけっこうありますよね。上下の二巻にするのか、上中下の三巻にするのか、出版社のほうでいろいろ販売戦略はあるんでしょうね。

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