晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

万城目学 『鹿男あをによし』

2011-09-03 | 日本人作家 ま
とにかく最近の作家には疎いのですが、それでもこの作家の
名前くらいは知っていまして、たしかこの作品はドラマ化
されましたっけ。
ドラマは見てないのですが、放送開始前の番宣で、奈良に赴任
した先生が鹿と喋る・・・という、なんともファンタジックな
内容に一瞬心引き付けられたのですが、ドラマは見てません。

コミュニケーション力のやや欠ける大学の研究室で、ちょっと
した失敗をやらかしてしまった「おれ」は、教授から、神経衰弱
なので、ちょっと違う空気を吸ってみないかと、奈良県にある
高校の臨時教師を勧めます。

ほとぼりを冷ますために「おれ」は、奈良の高校「奈良女学館」
の1年生クラスの担任を2学期のみ受け持つことに。
さっそく教壇に立ち、生徒の出席をとっていると、遅刻してきな
がら反省の色も見せない、堀田という生徒が。

反抗的な態度ならまだしも、奈良ではマイシカという、自転車や
車のように、シカに乗って通勤通学していて、そのシカのせいで
遅刻したと、先生を小ばかにしてくる始末。
怒った「おれ」は学年主任に報告、放課後に説教された堀田は、
翌日、教室の黒板に「チクリ」と大文字を書いて・・・

それを皮切りに、生徒と先生のムードは険悪に。それもこれも
あの堀田という女子のせいで・・・と憤っていたある日、「おれ」
は公園を歩いていると、誰かが呼びます。が、あたりに人はいま
せん。また呼ぶ声が。その声の主は、なんと鹿だったのです。

いよいよ頭がおかしくなったと思う「おれ」。しかし鹿は、「おれ」
に、奇妙な頼みごとをしてきます。それは、人間が持っている、
サンカクと呼ばれているものを、奈良に持っていてほしい、お前
はその「運び番」に選ばれた、というのです。

意味が分からずパニックになっていたのですが、答えはすぐに
見つかります。どうやらサンカクとは、奈良女学館の姉妹校の
京都、大阪との定期交流体育大会での、剣道の優勝校に贈られる
三角形の盾のようなものだったのです。

しかし、京都女学館の剣道部は全国クラスで、大阪は今年こそと
鼻息荒く、一方、奈良の剣道部はというと、部員も足りないとい
う悲劇的な状況。

しかし、そこに、堀田が新入部員として入ることに・・・

はたして「おれ」はサンカク」を手に入れることができるのか。
そもそもサンカクとは何なのか。鹿が「おれ」に話かけた理由とは。

もう、荒唐無稽もいいところですが、それらがきちんと整理つけら
れてちゃんとしたストーリーになっており、しかも最後は「おおっ!」
と唸ってしまう、これは素晴らしい、見事な作品。

「おれ」の教員の期限は2学期までということで大学に帰ることに
なり、そのとき堀田が渡した先生への手紙があるのですが、結びの
一言が、なんともくすぐったいような、ほろ苦いような。

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