晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

三浦明博 『滅びのモノクローム』

2010-08-09 | 日本人作家 ま
この作品は、第48回江戸川乱歩賞受賞作で、よくこのブログでも
書いているように、乱歩賞といえば、「新人で即戦力」をおおいに
期待されていて、実際、過去の受賞者を見てみると、そうそうたる
顔ぶれです。しかしだからといって、全員が全員、受賞後に大活躍
しているわけではなく、まあ、それはどこの世界でもいっしょで、
プロ野球でドラフト1位で鳴り物入りで入団しても「あの人は今」
状態になってしまうことも珍しくはない、プロの厳しい世界なので
すからね。

東京に本社のある広告代理店の仙台支社勤務、日下は、二日酔いで
ふらつく中、仙台の神社で行われてる骨董市を見てまわります。
そこで、日下は、たばこを吸っているところを、ある女性に咎められ
ます。その女性は骨董市で出店していて、その店構え(というほどでも
なく、ただシートに商品を並べているだけ)をみると、食器セットも
箪笥もどれも高額。しかも、その女性はあまり商売の気はなさそう。

商品を見てみると、ある行李に、釣りのリールが入っています。それは
イギリス、ハーディ社製のフライフィッシング用リール。
これは「ビンテージ」と呼ばれる、マニア垂涎のリールで、日下はこの
リールを欲しがるであろう人物を知っていて、このリールを1万円で
買い、ついでにこのリールの入っていた行李も貰います。

売り主の女性は、アンケートに答えてほしいと日下に頼み、職業、趣味、
商品を買った動機などを答えます。
そして、この行李の中には、スチールの缶も入っていたのです。

スチール缶の中には、古くなった映像フィルムが入っていて、触ると
ボロボロと割れてしまうほど。
ちょうど、会社にフィルムに詳しい人物にたずねてみると、ある職人を
紹介してもらいます。

一方、骨董市でリールと行李を売った女性、月森花は、実家の日光にある
旅館に戻ります。市で売っていた商品は、家にある蔵の中にあったもので、
持ち主の祖父から承諾を得ていたのですが、行李の中のリールとスチール缶
は、祖父の趣味とは結びつかず、花は祖父に聞いてみると、たちまち祖父の
顔色が悪くなり・・・

日下は、職人にお願いしていたフィルムを見てみると、外国人とおぼしき男
が釣りをしている映像。場所はどうやら日光らしいことが分かります。

祖父は倒れて入院してしまい、花はリールとスチール缶の謎が分からずにいる
ところに、自称雑誌記者を名乗る男が訪ねてきます。
記者は、戦時中に起こったあるテーマについて調べていたのです。どうやら
そこに、祖父が知っていることがあるらしいのですが・・・

釣り、それもフライフィッシングというマニアックなジャンルと、戦時中の
忌まわしい出来事を絡めて、本筋とマニアックなジャンルとが混合すると、とも
するとごちゃごちゃしてしまうのですが、その辺りはきちんと整理されている
といった構成、ですが、その代わりにスカスカ感は否めませんでした。
登場人物の描写も、メイン級は印象薄く、逆に脇役のほうが印象に残るといった
チグハグ感があったかな。


前に、ミステリー系の新人賞で、プロの作家の選評だから、ありふれたトリック
は通用しないと思ったので、ボディビルをテーマにした、という作品があった
のですが、そういえばこの『滅びのモノクローム』の翌年の受賞作は、プロレス
をテーマにしたミステリー。
たんなるガイドブックではない、そこに喜怒哀楽の込められた物語があって、
知らない世界を垣間見たような気にさせてくれるのが読書の楽しいところ。



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