晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

アーサー・ヘイリー 『ホテル』

2010-05-18 | 海外作家 ハ
翻訳家で、去年2009年に亡くなった永井淳さんといえば、ジェフ
リー・アーチャーの作品の翻訳が有名で、個人的な話ですが、「ケインと
アベル」を10代のときに読んで、はじめて翻訳者というのは素晴らしい
ということを意識させていただいた、いわば「恩人」のような方なのですが、
その永井淳さんが翻訳した海外の作品では、他にスティーヴン・キングや
アーサー・ヘイリーなどが挙げられ、娯楽小説の翻訳に徹しました。

そのアーサー・ヘイリーの作品は未読。出世作の『ホテル』は永井さんの翻訳
ではないのですが、ついでに永井さんの手がけた「ストロング・メディスン」も
買ったので、それは後日読むことに。

時代は1960年代でしょうか、アメリカの南部、ニューオーリンズにある
ホテル、セント・グレゴリーは、全米じゅうのホテルが大手チェーン化されつつ
ある中、いまだにオーナーのウォーレン・トレント所有の個人ホテルとして
なんとか営業しています。

しかし、その経営はずさんの一言、やる気のない従業員、レストランの料理はまずく、
エアコンやエレベーターもあちこちガタがきていて、深刻な赤字状態。
そんな中、ある大手ホテル・チェーンをトラブルで解雇され、ブラックリストに
載っている、セント・グレゴリー副総支配人のピーターは、なんとか立て直そうと
します。

数日後には抵当の期限が切れて、銀行からの融資も得られずといった状態のなか、
ある大手ホテルチェーンの経営者がセント・グレゴリーに宿泊するというニュース
がホテル内の従業員じゅうの噂となって・・・

ピーターにとっては、過去の汚点のために、セント・グレゴリーがチェーンホテル
となってしまったら、辞めさせられるのではと危機感を募らせます。
そんなことはお構いなしに、ホテル内ではさまざまなトラブルが起こり、ピーター
はトレントの秘書であるクリスティンとともに奔走します。

大手ホテルチェーン総帥のオキーフェとトレントの買収に関する折衝、宿泊中の
イギリス貴族夫妻が起こしたあるトラブル、エアコンの壊れた部屋で死にそうに
なる謎の老人客、若者のパーティーで襲われかけた女性客、このホテルに目をかけ
た客室荒らし(泥棒)と、なんともバラエティ豊かな登場人物や出来事。
さらに、この時代の社会的な問題である人種差別も盛り込まれ、娯楽であり社会派
でもあり、といった幅の広さを感じます。

なんというか、終盤にこのホテルで大事故が起きてしまうのですが、最終的に話が
うまくまとまって大団円とまではいかなくとも、変な「含み」を持って終わらす、
といったことはありません。「まあそれが小説だよ」という安直なフィクションでは
なく、構成がしっかりしているなあ、と。


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