晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

スティーヴン・キング 『スタンド・バイ・ミー』

2010-11-19 | 海外作家 カ
去年あたりから読みはじめたキング、もっとも小説ではなく
キング原作の映画はずいぶん見ていて、映画を先に見たのなら
別に後になって本を読まなくてもいいだろう(ネタバレを先に
知っていれば驚きが半減してしまう!)とも思っていたのですが、
先日「グリーン・マイル」を読み、映画とはまた別な楽しみとい
いますか、新たな驚き、映画の出来が悪かった、というわけでは
なくとも(トム・ハンクスは素晴らしかったです)、原作の描写
のほうがより心に深く滲み入った場面もあり、一概に、原作を読
んでから映画を見るのが正しい順序というわけでもないなあ、な
どと自分に言い聞かせ、それなら、日本でも大ヒットした『スタンド・
バイ・ミー』を読んでみようじゃないか、と。

『スタンド・バイ・ミー』は、(恐怖の四季、秋冬編)に収められて
いる、キングの中編作品で、もうひとつの作品は「マンハッタンの
奇譚クラブ」という、こちらは短編の部類にはいるくらいの長さで、
「まえがき」によると、ホラー作家としての名声(名誉か不名誉かは
言及されてませんが)があり、ここにきて、中編ばかり4編集めた、
ふつうの小説を出すに至ったいきさつを書いています。

ただし、「ふつう」とはいっても、田舎の少年4人組が死体を発見し
に旅をする、という話の筋は「ふつう」の範疇ではないところが、ま
えがきに「これは恐怖小説ではありませんよ」とは書いたものの、そ
れでも人を食った仕掛けでもあるんじゃないの?と期待をした人を大
いに裏切るようなことはないところが、なんともユーモアですけど。

大人になり作家となったゴーディという男の少年時代の回想。メイン州
の片田舎で、仲良しの4人組、少年時代の自分、家庭に問題のあるクリス、
気性の荒いテディ、ちょっと行動と思考が遅いバーンは、ある話で盛り
上がります。それは、ある少年が仲間とはぐれて行方不明となり、その後
どうやら事故死したらしく、その死体がはぐれた森のどこかにあるという
のです。

自分たちの遊ぶテリトリーからは、歩いて20マイルも30マイルもある
森。でも4人は興味と好奇心に抗えず、庭でキャンプをすると親たちに
ウソをついて、その森へ死体を探しに旅に出るのですが・・・

1日に数本しか通らない電車の線路がかかる橋。これを渡らなければ遠回り
になります。一同おそるおそる渡っていたところに、ちょうど橋の中腹まで
さしかかったあたりで、耳をすますと、遠くから電車の音が。
森の入り口近辺に、ゴミ捨て場の管理をしている男と、獰猛な番犬がいるの
ですが、これを突破しなければならず、運悪く男と犬に見つかってしまう。
とまあ、少年たちの旅に出てくるイベントは、インディ・ジョーンズのような
大アクションは当然出てきません。途中、些細な揉め事も勃発しますが、
大人の視点では「なにをそんな小さいくだらないことを」でも、彼らに感情
移入して読むと、小さいことにいちいちムキになったり、くだらないことに
真剣に取り組んだりするのは、うんわかるわかる、とノスタルジック。

これが、たんなる少年時代の冒険物語であったら、正直さほど面白くは
なかったでしょう。というのも、大人になった4人組のうちのひとりが、
このことを、たんに懐かしんで書いている、ということではないからです。
大人と子ども、大人の中でもうちの親と他所の親、子ども同士でも自分と
友達、それぞれ違う立場があり立ち位置がある、それを、はっきりと認識
まではしなくとも味わった、その頃のビッグイベント、それが死体を探す旅
だったのです。

「マンハッタンの奇譚クラブ」は、日々の単調な生活にいささか「うんざり」
していた男のもとに、上司から、ある面白い集まりに来てみないかと誘われ
ます。妻は、どうせ大昔の戦争の武勇伝だのそういった「昔は良かった」的
な話を聞かされるだけとしらけますが、上司の誘いということもあり、男は
東35ストリート249Bの建物を訪れて、そこである医師の老人から、
とても奇妙な話を聞くのです。

こちらはなんというか『スタンド・バイ・ミー』とはうって違って、大人の
雰囲気漂う、窓の外は雪、暖炉の前のロッキングチェアに座って、ブランデー
入り紅茶でも飲みながら読みたいなあ、などと夢想を抱かせる作品。


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2 コメント

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映画以前に読みました (hi-lite)
2010-11-19 18:08:24
この物語の主人公・ゴーディが作者・キングにダブってみえました。
あぁ~子供の頃から、こうしてRPG(ロールプレイングゲーム)が染みついているから優秀なストーリーセラーになれたんだなって…。
私は「ショーシャンクの空に」の原作「刑務所のリタ・ヘイワース」も好き。
返信する
Unknown (ロビタ(管理人))
2010-11-20 11:46:36
hi-liteさん>

コメントありがとうございます!
この作品は「半分自伝的」ということらしいので、
キング≒ゴーディですね。

「リタ・ヘイワース」は「春夏編」ですね、
すでに買ってあるので、読むのが楽しみです♪
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