晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

遠藤周作 『わが恋(おも)う人は』

2010-11-16 | 日本人作家 あ
遠藤周作の作品はそんなに多く読んでるわけではないのですが、
背表紙のあらすじ説明に「異色長編小説」とあり、確かにこれは
異色です。

雑誌記者の秋月美子は、原稿をもらいに、作家の別荘がある軽井沢
へと向かいます。そこで、作家と知り合いだという男を紹介される
のです。その男は、戦国時代の武将、小西行長の子孫だというのです。
歴史に疎い美子はそれに関しては興味を持ちませんでしたが、その男、
実業家の小西には別な意味で惹かれます。

そこで、ある面白い話を聞きます。それは、行長の娘たえは、九州の
対馬領主、宋義智に嫁ぐのですが、その後の関が原の合戦のさい、小西
家と宋家は敵味方となってしまい、義智はたえと離縁します。しかし
たえと義智は互いに深い愛で結ばれていたようで、離縁後も手紙の
やりとりがあり、そして、ふたりが大切にしていた雛人形を持ち分け
たそうなのです。

男雛のほうは、子孫である小西の家が代々持っていて、現在は小西の
姉が持っているとのことですが、宋家が持っていると思われる女雛の
ほうは行方知れず。それもそのはず、義智はたえと離縁後、あらたに
正室を迎えたのです。

こんなみやげ話を、美子は編集長に話すと、編集長は食いつき、雑誌で
失われた女雛の捜索の記事を載せるとはりきります。

何件かの問い合わせがあり、そしてとうとう、由緒も正しい、どうやら
本物らしいという連絡があって、美子はその女雛を400年ぶりに男雛
と再会させるために・・・

ところが、持ち主は、その女雛が家にきてからというもの、悪いことが
起こり、なんと女雛が夜中に笑っているところを目撃し、そして身内に
不幸があり、これはあの女雛のせいだと思い、新聞に包んで捨ててしま
ったというのです。

女雛を持った人、とくに女性につぎつぎと不幸がふりかかるようになり
ます。はたしてこれは女雛に乗り移ったたえの「祟り」なのか・・・

心理学セラピー、催眠療法、そして前世の記憶(輪廻転生)というアプ
ローチでこの謎を解明しようとするも、失敗におわります。
「前世の記憶」といえば、遠藤周作の名作「深い河」で扱われるテーマ
ですが、ちょっと取り扱いを変えるとオカルトとなってしまうところを
絶妙なバランスで恐怖を緩和させていますね。


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