晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

水原秀策 『サウスポー・キラー』

2011-02-06 | 日本人作家 ま
この作品は、第3回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作で、
まだ「このミス」は10年経ってはいませんが、すでに大物輩出
の文学賞となってしまいましたね。

といって、じゃあすべてが浅倉卓弥、海堂尊クラスのレベルに
至ってるか、というと、まあ正直そうでもありません。
特に目立つのが、全体的にはシリアスあるいは暗黒ミステリー
の流れのなかにポッと差し込むユーモアだったりロマンチックな
会話だったりが溶け込めていない(これはあとがき解説にも同様
の指摘がありました)のです。

全体的に軽めのタッチで、ここは物語の中で重要だ!というシーン
になったら引き締めて硬くする、例えば先述の海堂尊、または
伊坂幸太郎、垣根涼介などは、その“塩梅”がバツグンに上手い
ですね。

日本プロ野球界で人気、実力ともにナンバーワン球団のオリオールズ
に在籍するピッチャー、沢村。
彼の経歴はちょっと変わっていて、高校まで野球をやっていたものの
チームメイトと折り合わず野球に嫌気がさして、大学では野球をやめ
ていました。そこに、高校時代の沢村の素質を知っていた、大学野球部
のキャッチャーに誘われて、野球部に入部。この大学が所属する東京の
リーグの中でも毎年最下位というなか、沢村のピッチングは、強豪の
チームを苦しめます。
沢村は大学卒業後、アメリカへ渡り、本場の「ベースボール理論」を
学びます。
帰国後、ドラフトにかかり、沢村はオリオールズに入団。しかし、
彼の最先端の野球理論は古いタイプの「根性野球」に子固執するコーチ
とたびたび衝突、チーム内でも孤立します。

しかし、彼の最大の理解者は、現役時代は日本中の野球ファンをとりこ
にし、引退後は「野生の勘」頼りの采配で、名選手は名監督にあらずの
言葉を地で行く葛城監督。
葛城は、沢村をことあるごとに擁護します。
(…とまあ、ここまで説明すると、オリオールズは巨人、葛城監督は
ミスターだと想像できますね)

ある日、沢村は家に帰ると、玄関前に怪しい男に因縁をつけられ挙句、
暴行されます。しかし沢村にとってはまったく身に覚えのないこと。
ところが、球団事務所に、沢村が八百長に関与しているとタレコミが
入ってきたのです・・・

この情報はやがてマスコミにも回り大騒動に。沢村はしばらく自宅謹慎
ということなりますが、納得はできず、独自で調べてゆくと、オリオールズ
という球団では、前からこの類の八百長告発文章が来ていたのです・・・

はたして、沢村は何者によって陥れられそうになっているのか・・・

文中に登場する、事件解決のカギを握る、大人気一歩手前の黒坂美鈴という
女優が出てくるのですが、巨人をオリオールズ、ミスターを葛城、また
オリオールズの名物オーナーも実在をモデルにして描いているところを
みると、この黒坂という女優のモデルは黒坂真美?でしょうか。

先述したように、沢村と黒坂とのセリフまわしは全体の流れからやや
「浮いてる」感は否めませんが、それでもミステリーとしての完成度は
高いと思います。野球&ミステリー好きな方にはオススメです。
コメント
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