晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

奥田英朗 『最悪』

2011-02-25 | 日本人作家 あ
奥田英朗といえば、現在ドラマ化されている「空中ブランコ」「イン・
ザ・プール」の精神科医、伊良部シリーズがいちばん有名でしょうか。
ユーモラスとシリアスの配分が素晴らしく、とても上手だな、という
印象を持っていました。
そんな奥田英朗のデビュー2作目『最悪』は、ゴリゴリのクライム・
ノベル。

町工場の社長、川谷は、取引先からの無理難題や近所からの騒音苦情に
日々悩み、なんやかやで自分の工場には分不相応と思われる高額の機械
を入れることになったのですが、銀行の担当者から、融資の打ち切りを
言い渡され・・・

その銀行の窓口業務で働くOLのみどり。家に帰ってこない妹、未来の
見えない職場環境、挙句、上司からセクハラ・・・

そのみどりの妹と出会った和也。彼は悪い仲間とトルエンを盗んだときの
不始末でヤクザに絡まれ、盗みの相棒は行方をくらまし・・・

こんな3人の、まったく別な物語があったのですが、ある日、ある場所で、
たまたま居合わせるのです。

こういったクライムノベルの構成というか展開として、例えば事件が起こ
って、逃げる側と追う側はスピーディーに描けるのですが、この話の主軸
となる3人の背景をじっくりと描くと、どうしても途中で「だれる」こと
がよくあります。ですが、ここがとても肉厚で描けていて、なんというか
「嵐の前の静けさ」感がよく現されています。
この3人が、じわりじわりと崖っぷちに追い込まれてゆき、さあ、あと数歩
で落ちちゃいますよ、飛び降りてみますか、死んじゃいますけど?といった
雰囲気作りが秀逸。

そして、締めくくり方もまた素晴らしいですね。
コメント (4)
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