晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

高杉良 『濁流』

2010-01-23 | 日本人作家 た
高杉良といえば「金融腐食列島」などの経済小説でおなじみ
だとは思うのですが、この『濁流』は、舞台こそ経済専門の
出版会社での話ですが、その内輪のゴタゴタがメインで、人間
模様が強く印象に残ります。

「産業経済新報社」という雑誌社は、「鬼のスギリョー」こと杉野
良治の超ワンマン主幹が率いていて、杉野は政治、経済に幅広く
顔が利き、社主催のパーティーには現職総理や大物経営者などが
集まるほど。
といっても、そんなに格式高い雑誌社というわけではなく、その実
企業の醜聞などを嗅ぎ付け、それを雑誌に掲載、広告でこれでもか
と叩き、それを恐れる会社側がしぶしぶ定期購読をさせられている
といった状態で、中には杉野に金を脅し取られるといったことも。

しかし、大物政治家や大企業のトップに顔が利くということもあり、
フィクサーとして企業の合併や事件のもみ消しなどに暗躍。
まさに「さわらぬ何とやらに祟りなし」といった具合。

ワンマンぶりは傍若無人で、杉野の意に添わない人物は片っ端から
切り捨て、挙句、信奉する振興宗教に入信しないと解雇させられる
始末。

その杉野の秘書である田宮は、編集から秘書に移されて2年余り。
杉野は田宮を気に入り、次期主幹を任せると言い、一人娘との
結婚を勧めます。しかし杉野の家族は父親に対する反感が強く、
杉野は長年、家には戻らず、ホテル暮らし。

田宮は杉野の娘、治子に会い、交際に発展しますが、問題が。
田宮は社員ということで不本意ながらも新興宗教の儀式に参加して
いるのですが、治子は大反対。杉野からは家族を新興宗教に連れて
こいと言われて板挟み。

そんな会社内にも不満分子がいないわけでもなく、田宮のかつての
編集部時代の後輩は一度も儀式に出席しておらず、とうとう杉野は
強制的に参加を命令。折衷案を杉野に提案するも杉野の逆鱗に触れ
田宮は取締役から降格となり・・・

この本が出版された時代背景はバブル崩壊前後。その時代にこんな
会社があったんかいな、というのが感想ですが、しかし最近流行の
「ブラック会社」という、法令遵守なんてクソくらえの会社が存在
しているのも事実。
田宮はことあるごとに「大人の対応」を迫られますが、杉野を筆頭
に上司はどいつもこいつも小学生レベル。

「世の中きれい事では渡っていけない」「お前も大人になれ」と
正義側を諭しますが、どうにも大人を履き違えている人が多すぎますね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする