晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

海堂尊 『螺鈿迷宮』

2010-01-25 | 日本人作家 か
海堂尊の「チームバチスタの栄光」からはじまる、架空の都市、桜宮市
にある東城大学付属病院での諸問題を、不定愁訴外来という名の、よう
は患者の愚痴を聞くためにいる田口医師と、厚生省から来た白鳥の活
躍を中心に描くシリーズものがありまして、今回読んだ『螺鈿迷宮』は、
同じ桜宮市にある、東城大病院よりも古くからある碧翠院桜宮病院での
話となっています。

東城大医学部に通う落ちこぼれ学生の天馬大吉は、幼なじみの別宮葉子
から、碧翠院桜宮病院に潜入してほしいと依頼されます。
葉子は小さい新聞社の桜宮支社で働く記者で、厚生労働省から今回の
取材要請が来ており、現在桜宮病院で募集しているボランティアとして
潜入取材をするというもの。

乗り気ではない大吉は、一度は断りますが、いきつけの雀荘で大負け、
100万円の借金を背負わされます。流しの男に契約書を書かされ、
行き着いた先には、なんと葉子が。
実は桜宮病院の潜入取材にはもうひとつの依頼があって、それは流し
の男こと結城の会社「メディカル・アソシエイツ」の社員が潜入して
から行方不明になっているとのこと。

桜宮病院は、終末期医療で名高いものの、もともと悪い噂の絶えない
病院で、大吉は不承不承ボランティアとして潜りこむことに。
桜宮の終末期医療とは、患者に院内の仕事を与えて生きがいを持って
もらうというもの。そして大吉も医療ボランティアとして働きはじめるも、
姫宮という看護士のミスに巻き込まれ、大怪我を負ってしまいます。

ボランティアから患者になってしまった大吉は、院内の仕事を与えられる
ことになります。しかし、今日、翌日、そして2日後と、次々と患者が
亡くなっていき、それもつい昨日までは元気だった患者が不自然と思える
死を・・・

桜宮病院の外観が巨大なかたつむりのような円形をしていて、こどもたち
は「でんでん虫」と呼びます。そして、かたつむりの頭の部分になる塔から、
光が発射されるという、こどもの間の噂があったのですが、その仕掛け
というか理由が後に解明されます。
院長をはじめ、その二人の娘も医者なのですが、今の医療体制、とりわけ
厚労省の無能無策ぶりに吼えます。
もっともこの作品だけに見られることではなく、海堂尊という作家は現役
の医師で、小説という場を借りて厚労省の無能無策を叩いていますね。

『螺鈿迷宮』は、田口、白鳥コンビのシリーズもののスピン・オフ的な
作品で、あとでこの桜宮病院に白鳥が東城大からの派遣医師として登場。
田口や東城大病院長も名前だけ出てきます。
そして姫宮とは、シリーズものには名前だけ登場していたある人。

ラストシーンは衝撃。さしもの白鳥も負けを認めるほどです。
コメント
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