晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ディーン・クーンツ 『ミスター・マーダー』

2010-01-14 | 海外作家 カ
クーンツ作品は、重厚というほどでもなく、また社会に警鐘を
鳴らすといったものでもなく、よくも悪くもライトタッチで、
時々ファンタジックな、それでいてスリリングといった、かと
いって決して「チープ」では終わらせない、その評価は「とりあ
えず読んでみて」としか伝えられないのですが、『ミスター・
マーダー』は、これは読むべきだと声を大にして言いたい、そんな
作品。

ミステリー作家のマーティは、ある日突然、頭の中に奇妙な言葉
が浮かび、それを口にしていることに気付きます。
小説の構想も、その奇妙な言葉に邪魔されてしまいます。
児童カウンセラーの妻とふたりの娘の幸せな生活も、脅かされて
いるよう。

マーティは、妻の紹介でカウンセラーに相談しますが、ストレス
にる幻聴程度のものだと診断され、家に戻ると、そこには、マーティ
とうりふたつの顔、そして同じ声の男が・・・。
男は「おれの人生を返せ」とマーティに詰め寄り・・・

ここから、マーティにそっくりな男が、妻と娘をかどわかそうとし、
連れ去られまいとするという闘いが描かれていきます。
しかし、この男は、マーティこそ偽者だと思い込んでいるのです。

そして、この男を追うなぞの組織とは・・・

『ミスター・マーダー』とは、マーティがある雑誌の取材で掲載された
本人にとって不本意な紹介のされかたによるもの。
あたかも、ミステリー小説に出てくる殺し屋の持つ残忍性が、この作者
にもあるかのような構図の写真。
このせいで、自分に瓜二つの男に殺されかけた時も、警察はマーティの
言い分を信じようとせず、自作自演の狂言だと疑ったほど。

マーティは格闘の末、隠してあった銃で「片割れ」の男を確かに撃ち、
廊下は血の海になったはずなのですが、男の姿はありません。
その驚異的な回復力は、先述したある「組織」と関係があるのですが・・・

後半は、追う者と追われる者の闘いという構図で、徐々にさまざまな
謎が明らかになっていき、すっきりとしつつもどこか哀愁につまされ、
はやく結末まで読みたい、でもこの物語の世界にまだ浸っていたい、
そんなジレンマに悩みます。

終わりに、「パラサイトイブ」の著者、瀬名秀明氏による解説があるの
ですが、こちらもまた読みごたえあるひとつの作品となっております。

コメント
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