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晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジョン・グリシャム 『路上の弁護士』

2009-02-11 | 海外作家 カ
それにつけても、グリシャムという作家は、アメリカにおける
弁護士稼業を書き続ける。よくもこんなにネタ切れしないもの
かと思う一方、それほどまでもアメリカ法曹界はいろいろな
ネタを提供してくれるのかという、それだけ飽きない(懲りない)
世界で面々がいるのだなあ、と笑ってしまうところ。

まず、私は訴訟やら何やらで弁護士様のお世話になったことがないので
日本の事情はわからないのですが、グリシャムの作品に出てくる<全米
屈指の規模を誇る大法律事務所>、弁護士人数500人かそれ以上を
抱える大所帯に所属する弁護士の一時間あたりの報酬請求という、聞き
慣れないシステムがあり、時間単位で200ドルから300ドルあたり。
単純計算で、週80時間働いたとして、報酬請求額200ドルとしたら、
依頼人のもとには「私はこれだけあなたのために働きましたよ、だから
1万6、000ドル時間給として請求します」という仕組み。
ランチも依頼人とのミーティングを兼ねたものだとしたら、当然その
時間も報酬請求に入るというわけ。

こんな、金が湯水のごとく湧いて出てくる夢のような環境に所属しながら
も、ある日、ホームレスに弁護士事務所に立てこもられて人質となり、
ホームレスは警察に射殺され、人質は全員無事であったものの、どうしても
その事件以降働く意欲が出ず、またなぜあのホームレスは弁護士事務所に
来たのかを知りたくなり、ついに、その謎を突き止めて、関係書類を拝借
(返すつもりが機会を逸して、結果盗んだことになってしまう)し、所属
していた大法律事務所を退職し、公益活動中心の法律事務所に転職。
そして、自分がかつて所属していた事務所を相手どり、裁判に・・・。

かつて、あるアメリカのコメディドラマで、登場人物の女性がホームレス
支援の集会に出向き、人権だの援助だのを政府や自治体に要求する演説を
ぶって、その後、ホームレスを支援「しない」団体の集会に出向き、
「彼らに100ドルあげたら、彼らは何を買うか、どうやって使い切るか
しか考えない。しかし、金持ちはその100ドルをどうやって増やすかを
考える。それがホームレスと金持ちの違いだ。つまり彼らはなるべくして
なっている」
という、双方の団体にいい顔をしたいがために、二枚舌外交をしてしまう
シーンでのセリフを思い出しました。

そして、彼らの多くは、アルコール依存、ドラッグ摂取など、つまり
みずからをもって働けない環境、肉体を作り上げてしまった部分も否めず、
(もちろん中には搾取労働、差別、虐待など外的要因も多い)
一概に政治の責任のみを追及しても建設的ではないでしょう。

「働きたいのに働けない」日本の問題は、政治責任が大きいんですがね。