晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

高村 薫 『照柿』

2009-02-01 | 日本人作家 た
著者の作品は、『マークスの山』『レディ・ジョーカー』と読んだことがあって、
数ページ読んでいくと、うわ、こりゃヘビーそうな内容だぞ、と思うのですが、
読み進めていくうちにハマってしまい、序盤の想像通り、重苦しい部分も多いの
ですが、作品中に意識を溶け込ませるとでもいいましょうか、物語に引き込まれ
ていくのです、ぐいぐいと。

心の奥に凶暴性を持つ男、という男がいるのですが、その男の背景がなんとも
壮絶というか、悲惨というか。
だからって、殺人を犯す必然性は無いのですが、かつては手のつけられない
ほどの悪童だった男が、その後普通に就職し工場で働き、教師の女性と結婚し、
公団住宅に住み、男の子を授かり、しかし、衝動とはいえない他人にむけられ
た狂気を抱くまでのプロセスがしっかりと描けています。

この男の幼馴染みで、警視庁捜査一課の刑事。実直に職務をまっとうしているか
といえばそうではなく、だんだんとまずい立場に。
別れた元妻の兄(つまり元義兄)は、検事。妻と別れても交流はもち続けている。
あれ、この構図、どこかで読んだことがあるな、違う作家?と思い、本棚にある
本の中からそれらしいのを推量して、判明したのが、『レディ・ジョーカー』
でした。この刑事は『レディ・ジョーカー』にも出てました。

ズシンとなにか重たいものが心に響く、重厚感あふれる、そんな作品でした。
ただ、敢えて苦言をいうならば、はじめの部分の、工場の工程描写。
後でそれなりに重要になってくるので、ここはきちんと説明されているな、
というのは分かるのですが、ちょっと読み苦しかったかな。
コメント (1)
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