Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ポスト・グーグルは占い?

2007-03-29 10:49:53 | Weblog
「グーグルの次のビジネスモデル」という刺激的な副題を持つ,佐々木俊尚『次世代ウェブ』。著者によると,「Web2.0というパラダイムは,極大化されたデータベースの海と,そこから的確に有用なデータを拾い上げるための「UFOキャッチャー」アーキテクチャという二つの層からなっている」という。ふうむ。UFOキャッチャーとは,ぼくにとっては,狙うものをつかめそうでつかめず,せっかくつかんでも,いいところでするりと抜け落ちてしまう経験を想起させる。そういうニュアンスを含めた表現なのかな・・・。

これからの検索エンジンの課題について,佐々木氏は「個人の好みを完全に把握するには・・・その人が検索しようとしている瞬間の意向をとらえる必要がある」ということばを引用している。「瞬間」というのは,サービスについてよく言及される,重要な概念だ(人生においても・・・)。ユーザの過去の履歴と,いまそこにいる環境が交差するのが,検索の瞬間だろう。しかし環境というのは定義からしても,ウェブのなかで閉じていない。つまりデータベースには書かれていない情報なのだ。ベテランの販売員が,相手の表情や仕草から読み取るような手掛かりを,ウェブでどうやって得るか。

この本には,顧客のプロファイリングに四柱推命や星占いを変数として加えているという企業の例が出てくる。おいおい,と最初は思ったが,確かに人々の過去ではなく将来を予測するという意味で,占いは長い歴史を持っている。運命とか運勢とかが本当にあるなら,ある「瞬間」のベクトルを把握するのに役立つだろう。だが,ぼくが占いから学ぶべきだと思うのはむしろ,実際に的中したかどうかの客観的な判定に立ち入ることなく顧客を満足させ,リピートさせられることだ。

ともかく,日本でもいろんな動きが進行中で,結果これから出てくる,ということだ。本書は楽天のビジネスモデルには悲観的で,ヤフーの今後は様子見,経産省の「情報大航海プロジェクト」には他の論者と違って期待している,というように見える。そうしたことを含めて,今後どうなるかが楽しみだ。

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