Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

大学偏差値のグローバル化

2009-02-14 18:25:36 | Weblog
「スポーツビジネス崩壊」という記事が読みたくて週刊エコノミスト2/17号を買ったが,それより関心を惹いたのが「「大学版 PISA」上陸で大変革迫られる日本の大学」という記事であった。著者の黒木比呂史氏は,教育ジャーナリスト。で,そもそも PISA とは何かというと,OECD が世界各国の15歳を対象に実施している学習到達度調査のことである。2000年以降3年おきに実施されているが,その結果は「日本の子供たちの学力の「惨状」を白日の下にさらけ出した」と黒木氏はいう。

この記事に出ている表によれば,2006年の調査で日本の15歳の「読解力」は世界15位,「数学的リテラシー」は10位,「科学的リテラシー」は世界6位である。以前より順位が下がっているものの,「惨状」というのはいい過ぎのようにも感じる。日本の順位は,米国はもちろん英独仏にも負けていない。上位にいるのはフィンランド,香港など,比較的小さな国(地域)が多い。もちろん,ヒトという資源しかない日本が,子どもの学力で世界トップクラスを目指すことは悪いことではない。

さて,本題の大学版 PISA とは AHELO と呼ばれる,やはり OECD が企画している調査のことで,文科省は実験に参加する意向だ。この試験は日本語ではなく,英語で実施される可能性が高いという。さらに「批判的思考力」や「分析的論理付け能力」,「文章表現能力」を問う問題が出題されるため,日本の大学生の成績はかなり低くなるのではと,黒木氏は危惧する。そうだろうとぼくも思う。このテストで日本の大学生が世界の最低ランクに位置づけられても驚きはしない。

この調査が実施されれば,世界レベルで日本の大学全体に「偏差値」をつけることになる。日本で一流とされる大学でも,世界的には下流となれば,優秀な頭脳は海外(米国)へ流出すると黒木氏は予測する。ただし,昨年ノーベル賞を受賞した南部氏や下村氏のように「頭脳流出」はずっと以前からある。むしろ,特に経営分野では,海外留学したり,海外で教える学者が最近減っているという説もある。「グローバル偏差値」が発表されることで,どちらにドライブがかかるのだろうか。

高等教育では米国が圧倒的に優れている,という見方は一般的だし,ぼくも基本的には同意する。大学評価がグローバル化することで,日本の大学が「グローバル・スタンダード」を目指すことは避けられないし,望ましいことかもしれない。一方,日本の大学には日本社会に適合した文化があり,日本語による高等教育や,その裏づけとなる研究を維持することに価値があるという主張にも共感する。まさに日和見的だが,2つのベクトルの間で揺らいでるのが,正直なところだ。

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2 コメント

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自分も (ふーた・ろーさ1号)
2009-02-15 20:32:46
日本の大学のレベル(グローバル化)がいかほどかは。。。ですが(微苦笑)。

(われわれの社会科学だからこそ(?!))日本でしか見られない&面白い現象はあり得ると思います(微笑)。
そういうものをしっかり(!!)発信してゆきたいです(再微笑)。

しかし、発信力≒英語力が不足の自分(苦笑)。
研究環境の良し悪しはともかく(微苦笑)。
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両にらみ (mizuno)
2009-02-15 21:04:15
正直,この件については,自分はどっちつかずの立場にあります。
国際ジャーナルを目指すべき,一般化されたテーマで研究したいと思う反面,母国語でしか適切に表現できないテーマを追求していきたいという気持ちも強まっています。
後者は,表現領域として文学に近いといえるでしょう。母国語で表現するのがふつうでしょうが,母国語以外でそれを達成する作家もいます。
自分に許された時間と能力の範囲で,何をなすべきか,ですね。

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