Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

知識共創フォーラム2012@JAIST

2012-03-05 10:40:18 | Weblog
3月3~4日,北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)で開かれた知識共創フォーラムに参加した。昨年,3.11の直後に第1回目が開かれ,今回が2回目となる。ぼく自身は初めての参加である。共著者とその共著者を除き,報告者も聴講者も全く面識のない方々ばかりであった。

宿泊したのは金沢駅前のホテル。予約しているつもりで訪れたら予約されていなかったところから躓きが始まった。MacBookAir のACアダプタを自宅に忘れてきたことが躓き第2弾。報告の日にプロジェクタにつなぐケーブルをホテルに忘れたことが第3弾・・・さらに失敗はあったが省略する。

会場となった JAIST は金沢からは二本列車を乗り継ぎ,専用バスに乗る。計約1時間。本数が限られるので,時刻表に注意しながらの行動となる。そう広いキャンパスには見えないが,構造が入り組んでいる。会場からバス停への移動では連日,主催者の方々にお手間をかけてしまった。

参加者は全体で3,40人ぐらいだろうか。実験室のような教室に一堂に会して発表が行われる。報告が15~20分,質疑応答が20分という構成なので,議論に充てられる時間がかなり長い。報告だけでは理解できなかった内容が,質疑を通じて腑に落ちたり閃きを得ることが何度もあった。

(↓会場の様子)


報告内容の多くは「知識科学」ということばでまとめることができる。これは主催者である JAIST の知識科学研究科を束ねるコンセプト。情報科学,認知科学からデザイン,知識経営など,幅広い分野をカバーする。創設期に在籍した野中郁次郎氏が残した影響も無視できないようである。

招待講演は哲学者である下嶋篤先生(同志社大学)による「知識機構と認知の分散性」であった。 JAIST に長く在籍されていたということで,この講演で述べられた「知識機構」という考え方が今回のフォーラムにおける(特に JAIST からの)発表者の多くに共有されているようであった。

ぼくの発表は「広告クリエイターはいかにインサイトを獲得するか?」。生稲史彦氏と行ったクリエイティブ・エージェンシーの取材(論文はここ)を基に,消費者インサイト獲得の論理に関していくつか仮説を提出した。検証はないがシーズ・セッションなのでそれもありと判断した。

キーワードは,棲み込み(ポランニー-石井淳蔵),未来の消費経験のシミュレーション(藤本隆宏),消費者の樹=超顧客主義(片平秀貴)などなど。これらをクリエイティブ・マーケティングの論理として統合的に整理していきたいのだが,まだまだ理論的・経験的研究が不足している。

発表直後の質疑応答だけでなく,懇親会や休憩時間に多くの方々から質問やコメントを受けた。知識科学の研究者たちの関心を惹いたことは大きな喜びであるし,マーケティング研究のある種の責任を感じた。また,橋本敬先生から,今後読むべき文献の示唆を受けたのも収穫であった。

JAIST に集まっている大学院生の方々とお話できたことも刺激になった。彼らの多くは大学のそばの寄宿舎に住み研究に没頭している。そこでの相互作用を通じて,新しい知が生み出されていくことを大いに期待したい。加えて学外者へのホスピタリティの高さも印象的であった。

いくつかサービスサイエンス関係の発表もあった。やはり知識科学あるいは知識機構という共通のプラットフォームが存在する点が面白い。グループで研究を進めるとき,各種方法論のごった煮状態で終わらせないためには,ある意味での思想的な紐帯が必要かもしれない。

橋本先生が最初の挨拶で,知識共創を対象として研究するだけでなく,このフォーラム自体が知識共創の場になるという希望を表明された。ぼくの場合,いただいた多くの知識を自分の頭のなかで熟成させる必要がある。その結果,時間差知識共創が起きることを夢見ている。


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