Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

マーケティングの質感

2006-09-12 23:06:48 | Weblog
スクリーンに映し出された新製品を見たとき,昔感じたことがある,何ともいえない感覚に捉われた。その製品が画期的であること,そしてぼくが十年以上前に「得意先」としていた企業の製品であることも関係したかもしれない。

それは,いわば「マーケティングの質感」とでもいうべきものだ。普通の生活で消費者として感じているものとは逆の情報の流れ。それは店頭や商談の場,製品テストの会場から企画会議が開かれている会議室まで,「現場」であればどこにでも遍く存在する。うまくいえないが,一つは作り手=売り手の能動性,もう一つは一見それと相反するが,消費者に対する無知を認める謙虚さというか。

冒頭で述べた感覚を抱いたのは,研究への協力を求めて訪れた会社の会議室であった。消費者間の影響関係を測定するにはどんな製品カテゴリがいいか,本当は仕事で忙しい実務家たちが,熱心にブレストしてくれた。その流れのなかで出たのが,冒頭の新製品の話題である。

話のついでに,シャンプーの購買にクチコミは影響しないと言い放ったマーケティング研究者の話をしたところ受けた。皆さん「しょーがないオジサン」を連想したようだが,真相を明かすと口あんぐり。マーケティングの質感が存在しない,記号だけの研究の世界もある,ということだ。

マーケティングの質感に気づいたことは,大きな啓示かもしれない。それを可能にしたのは,昨日の訪問先のように,自分たちにどんな得になるかよくわからない研究に一肌脱いでくれる,友人たちの存在だ。何社かそうしたネットワークがある,というだけで,ぼくは格段に恵まれている。恩返ししないと,いつかバチが当る。

蛇足:一方で,現場感覚だけの「研究者」たちもいる。コンサルを名乗るなら何ら問題はないが…。

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