価格設定については多くの教科書・研究書が書かれている。マーケティングの教科書の価格設定に関する章を含め,そこに書かれていると予想される範囲をこの本は完全に超えている。第1章で取り上げるのが "Pay as You Wish" Pricing ... いきなり変化球が投げ込まれる。
そのあとも意表を突く変幻自在の投球が続く。常識的な価格設定について知りたい初学者には勧められないが,それらを十分理解したうえで,価格でイノベーションを起こせないかと考えているマーケターや,それにについて学びたいマーケティング研究者に強くお勧めできる。
著者はいずれもウォートンスクール(ペンシルバニア大学Bスクール)のマーケティング教授で,バスだとリトルだのといった栄誉ある賞を受賞した超一流のマーケティング・サイエンスの研究者である(二人の名前を知らなかったぼくは,もはやこの分野からはぐれてしまった・・・)。
おそらく彼らの論文は難解な数式や定理-証明で埋まっているはずだが,この本にほとんど数式は登場しない。しかし,豊富な話題の背後には一貫した論理がある。それは一言でいえば「価格差別化」である。ぼくの授業でも,その原理をできる限りわかりやすく伝えたい。
もう一つの論理は,行動経済学が明らかにしてきた人間の知覚バイアスを利用することだ。その点をもっと知りたい読者には,巻末の参考文献リストが役に立つ。ただ面白いのは,価格設定の実践が先行し,理論・実証は後追いしていること。優れた実務家の直観に勝るものはない。
そのあとも意表を突く変幻自在の投球が続く。常識的な価格設定について知りたい初学者には勧められないが,それらを十分理解したうえで,価格でイノベーションを起こせないかと考えているマーケターや,それにについて学びたいマーケティング研究者に強くお勧めできる。
スマート・プライシング 利益を生み出す新価格戦略 | |
ジャグモハン・ラジュー, Z・ジョン・チャン | |
朝日新聞出版 |
著者はいずれもウォートンスクール(ペンシルバニア大学Bスクール)のマーケティング教授で,バスだとリトルだのといった栄誉ある賞を受賞した超一流のマーケティング・サイエンスの研究者である(二人の名前を知らなかったぼくは,もはやこの分野からはぐれてしまった・・・)。
おそらく彼らの論文は難解な数式や定理-証明で埋まっているはずだが,この本にほとんど数式は登場しない。しかし,豊富な話題の背後には一貫した論理がある。それは一言でいえば「価格差別化」である。ぼくの授業でも,その原理をできる限りわかりやすく伝えたい。
もう一つの論理は,行動経済学が明らかにしてきた人間の知覚バイアスを利用することだ。その点をもっと知りたい読者には,巻末の参考文献リストが役に立つ。ただ面白いのは,価格設定の実践が先行し,理論・実証は後追いしていること。優れた実務家の直観に勝るものはない。