Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

2012年 研究の抱負

2012-01-01 14:05:51 | Weblog
2011年3月11日に起きた東日本大震災により多くの人々が命を失い,家族や財産を失った。地震による直接的な被災に続き,原子力発電所の事故が広範な放射能汚染を引き起こした。こうした事態は,志の低い一マーケティング研究者にもそれなりの衝撃を与えた。

ここ数年クチコミ・マーケティングを研究してきた者として,震災直後にはソーシャルメディア上のデマの氾濫が気になった。当初流布したデマは,あとから考えるとデマと分かりやすいものであったが,緊迫した状態では一種の正義感が真実に対する目を曇らせてしまった。

しかし,原発事故や放射能汚染に関する議論は短期の真偽判定が難しく,対立する論者どうしが相手をデマゴーグと罵り合う展開になる。したがって,研究上の関心はデマかどうかの判定よりも,対立する争点-議題がどう設定され,議論がどちらに推移していくかに向かう。

TPPや消費税,あるいは大阪都構想など昨年注目を集めた政策論争も同じ構造だ。iPhone か Android のどちらが「買い」かという議論さえ,似たような構造だと見ることができる。こうした事象の研究枠組みは,社会心理学や政治学にかなり準備されているようである。

こうした研究を数理的に抽象化していくと opinion dynamics になる。一方,心理的基盤を掘り下げていくと選好形成の実験的研究などと深く関連するだろう。その両者を視野に入れつつ,ソーシャルメディアのデータ等を使って理論と実証のバランスが取れた研究を目指したい。

以上は昨年から2012年に引き継ぐ宿題の1つである。他に山ほどある以前からの「在庫」のうち,昨年は2つだけ「出荷」することができた。残っている課題を着手の予定時期の順に並べると以下の通りになる:

1)乗用車の「重装備」が市場成果に与える影響 ・・・現在執筆中。投稿先思案中。

2)アフィリエイト広告の実態調査 ・・・昨年実施した調査結果をじっくり分析。ABMへの架橋。年度内報告。

3)クリエイティブな仕事意識と消費行動の関係 ・・・早々に追加データを入手し,平明な分析を目指す。

4)顧客視点でのロングテール・ビジネス研究 ・・・昨年予備分析を学会発表。今年はより本格的な研究へ。

5)消費者のトレンド予測能力に関する実験 ・・・学会発表時の分析水準で十分と思われ,いつ書くかの問題。

6)ワインのテイストテストによる選好形成実験 ・・・分析手法を投稿先に合わせて再執筆したい。理論武装が課題。

他にもまだ多くの研究課題やプロジェクトがあるが,申請中や準備中なのでここでの紹介は省略する。そのほとんどが学際的な共同研究なので,うまくいけば社会学,経済学,政治学,物理学,情報工学,経営学,会計学など様々な分野の研究者と交流できるだろう。非常に楽しみだ。

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