著者の一人ジェニファー・アーカーは,ブランド論の権威である「かの」デビット・アーカーの娘であり,かつご自身もブランド・パーソナリティ等々の分野で知られたマーケティングと消費者行動の研究者である。その彼女が,コンサルタントをしているご主人と著したのが本書である。
本書を一般的なソーシャルメディア・マーケティングに関するビジネス書だと思うのはいささか早計である。副題の「ソーシャルメディアで世界を変える」(... Use Social Media to Drive Social Change)という一文が示すように,公益を目指したビジネスやキャンペーンに焦点を当てている。
ドラゴンフライトとはトンボのこと。トンボの4つの羽に「焦点 (Focus)」「注目 (Get Attention)」「魅了 (Engage)」「行動 (Take Action)」が対応する。略すと Focus + GET だというのはいいとして,トンボの比喩が出てくるのはよくわからない(・・・英語の語感がいいのだろうか)。
注目-魅了-行動というフローは AIDA (Attention-Interest-Desire-Action) と基本的に同じであり,その点で本書の発想はきわめて古典的といえる。情報過多な社会にあっては,何らかの仕掛けで「注目」を獲得しないとコミュニケーションは成立しないというのは,確かに首肯し得る。
それはともかく,興味深いのは著者たちが IDEO の「デザイン思考」に敬意を払い,ソーシャルメディアの活用に関する「デザイン原則」を提案していることだ。こうした整理の仕方は,アレグザンダーが提案し,最近では井庭崇さんが精力的に展開しているパタン・ランゲージに通じるものがある。
これらのデザイン原則は,より営利的なソーシャルメディア・マーケティングにも有用であろう。さらに本書は最新の心理学や消費者行動の研究を紹介しており,研究者にも参考になる。注(参考文献)だけでなく索引まであって,安直なビジネス書とは違う丁寧な本作りが素晴らしい。
一方,ソーシャルメディアそのものというより,それが可能にした新たなソーシャルビジネスに関するマニフェストとして本書を読むこともできる。いや,そのほうが本書の真価を語っているといえる。スタンフォード周辺では,ビジネス,デザイン,公益が一体となっていることが推察される。
最後に「魅了」や「行動」のデザイン原則をより深く理解したい向きに,以下の古典的名著をお奨めしておきたい:
本書を一般的なソーシャルメディア・マーケティングに関するビジネス書だと思うのはいささか早計である。副題の「ソーシャルメディアで世界を変える」(... Use Social Media to Drive Social Change)という一文が示すように,公益を目指したビジネスやキャンペーンに焦点を当てている。
![]() | ドラゴンフライ エフェクト: ソーシャルメディアで世界を変える |
ジェニファー・アーカー, アンディ・スミス | |
翔泳社 |
ドラゴンフライトとはトンボのこと。トンボの4つの羽に「焦点 (Focus)」「注目 (Get Attention)」「魅了 (Engage)」「行動 (Take Action)」が対応する。略すと Focus + GET だというのはいいとして,トンボの比喩が出てくるのはよくわからない(・・・英語の語感がいいのだろうか)。
注目-魅了-行動というフローは AIDA (Attention-Interest-Desire-Action) と基本的に同じであり,その点で本書の発想はきわめて古典的といえる。情報過多な社会にあっては,何らかの仕掛けで「注目」を獲得しないとコミュニケーションは成立しないというのは,確かに首肯し得る。
それはともかく,興味深いのは著者たちが IDEO の「デザイン思考」に敬意を払い,ソーシャルメディアの活用に関する「デザイン原則」を提案していることだ。こうした整理の仕方は,アレグザンダーが提案し,最近では井庭崇さんが精力的に展開しているパタン・ランゲージに通じるものがある。
これらのデザイン原則は,より営利的なソーシャルメディア・マーケティングにも有用であろう。さらに本書は最新の心理学や消費者行動の研究を紹介しており,研究者にも参考になる。注(参考文献)だけでなく索引まであって,安直なビジネス書とは違う丁寧な本作りが素晴らしい。
一方,ソーシャルメディアそのものというより,それが可能にした新たなソーシャルビジネスに関するマニフェストとして本書を読むこともできる。いや,そのほうが本書の真価を語っているといえる。スタンフォード周辺では,ビジネス,デザイン,公益が一体となっていることが推察される。
最後に「魅了」や「行動」のデザイン原則をより深く理解したい向きに,以下の古典的名著をお奨めしておきたい:
![]() | 影響力の武器[第二版] ―なぜ、人は動かされるのか |
ロバート・B・チャルディーニ | |
誠信書房 |