Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

「格差」「階層」本溢れる

2008-07-06 22:12:07 | Weblog
自分の主要な研究テーマではないが,細々と関心を持続させているのが「格差」「不平等」「階層」に関する研究だ。一つには,この分野は社会学にしては計量モデルが積極的に使われていて,個人的に親しみやすいことがある。だがそれ以上に大きいのが,昔からこの問題に関心があることだ。それはおそらく,中学生になるかならないかの頃だから,マーケティングや消費者行動よりはるか昔に関心を持ったことになる。

このテーマに関して,戦後の主な論文を集めたというリーディングスを購入,つらつら眺めてみる。さすがに第1巻(1945~1970年)には思い出深い論文はない。だが第2巻(1971~1985年)ともなると,岸本重陳氏や村上泰亮氏といった「懐かしい」論客の名前を目にすることができる。実際,70年代後半から80年代前半は,いまより多少は本を読んでいた時期だ(といっても社会学者からみれば,何も読んでいないに等しいが・・・)。

第2巻で面白いのは「学歴への関心」という章が設けられ,その筆頭に盛田昭夫「学歴無用論」(1966年)が取り上げられていること。教育社会学者たちの論文で掲載されているのは,その10年後あたりに発表されたものばかりだ。教育の問題は,第3巻(1986~2000年)でも一章が割かれている。第3巻でぼくが読んだ記憶があるのは,佐藤俊樹氏の「不平等社会日本」(2000年)。だが社会学の世界では,世間の「ブーム」とは関係なく,連綿と研究が続けられてきた。

リーディングス戦後日本の格差と不平等 1 (1)

日本図書センター

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リーディングス戦後日本の格差と不平等 2 (2)

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リーディングス戦後日本の格差と不平等 3 (3)

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2000年以降の研究動向を示すのが,以下の本だろう。分析に多項ロジットモデルが使われていたりして,個人的にはより親しみを感じやすい。もっとも,分野が違うことで,おそらく本質的には同じ手法が別の進化の経路を歩むことになる。そうした違いを見つけることもまた愉しみである。ただ,手法が高度に発達した分,一般の読者には近づきにくくなっているかもしれない。

講座社会学 13 階層

東京大学出版会

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研究室の書棚の一角が,社会学関係の本に当てられているが,そこは完全にオーバーフローしていて,これ以上収納できるスペースはない。経済学の本は思い切って処分できるのに,社会学の本はできないのはなぜだろう? 門外漢だから残すか捨てるかの選別が難しいからか,読む「コスト」が低いので将来読む可能性が高いと判断しているのか・・・。それとも実は(計量)社会学が「好き」ってことなのか・・・(だったら,なぜ優先的に読まないのか?)

考えられる動機の一つは,おそらく近い将来,自分の人生を振り返るとき,社会学における良質の実証研究から教わることが多いと期待しているということだと思う。なぜなら,家族のこと,学校のこと,職場のこと・・・等々を振り返るとき,ぼく自身はそれをできる限り一般化・抽象化して理解したいという変な欲望と持つからだ。そのとき役に立つのが社会学なのだ(・・・ということで,当面きちんと読まない理由が完成)。

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