今日は筑波の非常勤。MBA コースの学生に金融マーケティングの課題を与え,データに基づく顧客分析の結果を報告してもらった。ターゲット・セグメントの設定,彼らの意識や行動の理解が鍵となる。各チームの発表は,こちらで与えたクロス表をただグラフにした程度の分析が最低レベルとすると,独自のクロス集計が中レベル,因子分析や決定木,ロジスティック回帰等を使うのが最高レベルである。もちろん「高度な」解析手法を使えば,鋭い洞察が得られるというわけではない。
学生たちの発表を聴きながら,マーケティング意思決定のためのデータ解析のあり方について,いろいろ考えさせられた。クロス表であれ決定木であれ,本質は「比較」にある。そのとき,何と何を比較するかの選択が非常に重要になる。たとえば,ターゲットに設定したセグメントの特徴を理解するのに,誰と比較すべきだろうか。残りすべての対象者と比較することは,統計的手続きとしては間違っていないが,ある対象を理解するための戦略としては,必ずしもうまい方法ではない。
たとえば,性別と年齢と所得によって規定されたセグメントがあったとする。残りすべての人々を一つにまとめ,そのセグメントと比較して何らかの差異が見つかった場合,それを彼らの特徴とみなす。それはよいとしても,さらにその特徴を性別,年齢,所得に分解できないか試みるべきである。そして各要因は独立に効いているのか,交互作用があるのかも調べたい。それによって,それがそのセグメントの「本質」的特徴なのか,やや周辺的な特徴なのかがわかってくる。
また,セグメント×特性の二重クロス表から得られる知見を積み重ねて,そのセグメントを代表する個人を,それらすべての特徴を合わせ持つ者のように語ることがけっこうある。そう考えて正しい場合もあるが,設定されたセグメント内に異質な集団が複数ある場合は,誤った判断につながる。そのことは多重クロス表を作ってみればわかることだが,そこまで掘り下げないで,安易に結論づけてしまう。データのサイズが小さすぎる場合は仕方ないが,そういう場合ばかりとは限らない。
今日の授業で総じて思ったのは,データ解析の手法に加えて,その戦略をどう教えればいいかということだ。戦略にはつねに正解があるわけではない。しかし,実務でデータを分析する場合,データのどの部分を取り出し,何と何を比較するのかという「切り分け」の問題に必ず直面し,悩むことになる。これは,統計学やデータ解析の授業では教えてくれない。実習を通じて直に語り合うのも悪くはないが,もう少しまとまった形で,知識として提供できないかと思ったりする。
学生たちの発表を聴きながら,マーケティング意思決定のためのデータ解析のあり方について,いろいろ考えさせられた。クロス表であれ決定木であれ,本質は「比較」にある。そのとき,何と何を比較するかの選択が非常に重要になる。たとえば,ターゲットに設定したセグメントの特徴を理解するのに,誰と比較すべきだろうか。残りすべての対象者と比較することは,統計的手続きとしては間違っていないが,ある対象を理解するための戦略としては,必ずしもうまい方法ではない。
たとえば,性別と年齢と所得によって規定されたセグメントがあったとする。残りすべての人々を一つにまとめ,そのセグメントと比較して何らかの差異が見つかった場合,それを彼らの特徴とみなす。それはよいとしても,さらにその特徴を性別,年齢,所得に分解できないか試みるべきである。そして各要因は独立に効いているのか,交互作用があるのかも調べたい。それによって,それがそのセグメントの「本質」的特徴なのか,やや周辺的な特徴なのかがわかってくる。
また,セグメント×特性の二重クロス表から得られる知見を積み重ねて,そのセグメントを代表する個人を,それらすべての特徴を合わせ持つ者のように語ることがけっこうある。そう考えて正しい場合もあるが,設定されたセグメント内に異質な集団が複数ある場合は,誤った判断につながる。そのことは多重クロス表を作ってみればわかることだが,そこまで掘り下げないで,安易に結論づけてしまう。データのサイズが小さすぎる場合は仕方ないが,そういう場合ばかりとは限らない。
今日の授業で総じて思ったのは,データ解析の手法に加えて,その戦略をどう教えればいいかということだ。戦略にはつねに正解があるわけではない。しかし,実務でデータを分析する場合,データのどの部分を取り出し,何と何を比較するのかという「切り分け」の問題に必ず直面し,悩むことになる。これは,統計学やデータ解析の授業では教えてくれない。実習を通じて直に語り合うのも悪くはないが,もう少しまとまった形で,知識として提供できないかと思ったりする。
「もう少しまとまった形で知識として提供」というご意見を非常に興味深く思いコメントさせていただきました。
広義のデータ解析マインドの醸成はなかなか形式知を通じて行なえないのが実務での現状と認識しています(徒弟制度的な関係性から学ぶのが現状と感じています)。
したがって、体系化した知見として提示するのはとてもハードルが高いことです。
とはいえ、細部はともかく「こういうデータの見方は気をつけよう」というような「杖」のような「文献」があると実務家としては心強いです。
(ダレル・ハフの「統計でウソをつく方法」の、マーケティング戦略におけるデータ解析ver.のようなイメージです。)
ある程度オーソライズされた形で(あるいは実務家が自分のビジネスを売り込むためのメッセージが入っていない)あると、私個人としても、データ解析に携わる人間としても嬉しい、と感じます。
しかしながら,今後授業や学生の指導で感じたことを少しでも記録していくと,その一歩が踏み出せるかもしれないと思い,拙文をブログに書いた次第です。
>クロス表であれ決定木であれ,本質は「比較」
おっしゃるとおりだと思います。
個人的には、「比較」は「データ分析(統計手法)」に依存するというよりも、分析対象の「論理構造」に依存する気がしています。
>各要因は独立に効いているのか,交互作用があるのかも調べたい
実務にかかわっていると、お客さんはもとより、分析者でさえ、主効果や交互作用のような考え方に興味がないと、よく感じます(わが社だけかもしれませんが)。最近は、データ分析など、分析者でさえ重視していないかも、、、なんて思ったりします。
同じような思いの違う立場の方々が今後も多く出てくると嬉しいですね。
ありがとうございました!
確かにそれをやり始めるときりがなく,ワークライフバランスが崩れてしまうわけですが・・・
でもこれは,学者といわれる人々も,最近では同じかもしれません。これは決して人ごとではないので,もう一息だけ drill down してみることを,自分に義務づけるようにしたいなと思っています。