朝日新聞社から出ている『Journalism』9号は「広告はどこに行った」という特集を組んでいる。日本アドバタイザーズ協会(広告主協会が改名!)の専務理事(元・東芝広告部長)小林昭氏やトヨタの現・宣伝部長薮敷大浩氏がインタビューに答え,新聞広告の価値について厳しい意見を述べている。ウェブ広告に比べ,新聞広告は効果が不明瞭で,値段が高く,柔軟性がない点で劣っているという。もしかしたら,これでもまだ,新聞社に遠慮した発言かもしれない。
新聞広告に何か優位性はないのか?小林氏は,新聞広告が「ネットへの入口」「起点メディア」になっている点を挙げる。ただ,テレビもまた起点メディア化しているはずで,それと差別化できるだろうか?薮敷氏は,広告スペースを三角形にするぐらいの大胆な提案を新聞社に求める。現在のモデルを維持したままのカイゼンで,新聞広告の価値を持続的に向上させることは難しい。新聞社はかつてないイノベーションを実行しないと,広告主に見放されるかもしれない。
日経から大学へ移った遠藤彰郎氏は,広告費のネットへのシフトは避けられないと見ている。新聞はネット化していくしかないが,そこで単独でビジネスを行うことは難しく,テレビ局との融合が進むと予測する。ただし,テレビの将来もまた安泰ではないことを,元テレビ朝日の記者で,いまはメディア総合研究所の事務局長を務める岩崎貞明氏が指摘する。番組の質の低下と広告費の減少の負のスパイラルから脱却すべきだという主張は正しいが,実現するかどうか。
日経BPでインターネット担当役員を務めた田中善一郎氏は,米国の新聞業界事情を紹介する。ネットへの転換を図ってきたニューヨークタイムズは,金融危機以降,オンライン広告収入も減少させている。広告に依存したビジネスモデルは脆弱で,収入源の多様化が必要だ。しかし,それだけで従来の大規模新聞社は存続できるだろうか。田中氏は最後に,低コストで良質のニュースを提供しているニュースサイトの例を挙げる。ただその規模は,いまの新聞社よりはるかに小さい。
これらの論考を読むにつれ,新聞広告のみならず,新聞社の将来は非常に厳しいと感じさせられる。しかし,このような特集を組むほど朝日新聞社に強い危機意識があるのだとしたら,まだ希望はある。ほとんどの人がまだ知らないが,実は画期的なイノベーションが近々登場するとしたら,話は変わってくる。率直にいって,「新聞」というメディアが世のなかから消えてしまうとしたら,ぼくの人生にとって大きな衝撃となる。若い世代がそういうかどうか,わからないが。
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新聞広告に何か優位性はないのか?小林氏は,新聞広告が「ネットへの入口」「起点メディア」になっている点を挙げる。ただ,テレビもまた起点メディア化しているはずで,それと差別化できるだろうか?薮敷氏は,広告スペースを三角形にするぐらいの大胆な提案を新聞社に求める。現在のモデルを維持したままのカイゼンで,新聞広告の価値を持続的に向上させることは難しい。新聞社はかつてないイノベーションを実行しないと,広告主に見放されるかもしれない。
日経から大学へ移った遠藤彰郎氏は,広告費のネットへのシフトは避けられないと見ている。新聞はネット化していくしかないが,そこで単独でビジネスを行うことは難しく,テレビ局との融合が進むと予測する。ただし,テレビの将来もまた安泰ではないことを,元テレビ朝日の記者で,いまはメディア総合研究所の事務局長を務める岩崎貞明氏が指摘する。番組の質の低下と広告費の減少の負のスパイラルから脱却すべきだという主張は正しいが,実現するかどうか。
日経BPでインターネット担当役員を務めた田中善一郎氏は,米国の新聞業界事情を紹介する。ネットへの転換を図ってきたニューヨークタイムズは,金融危機以降,オンライン広告収入も減少させている。広告に依存したビジネスモデルは脆弱で,収入源の多様化が必要だ。しかし,それだけで従来の大規模新聞社は存続できるだろうか。田中氏は最後に,低コストで良質のニュースを提供しているニュースサイトの例を挙げる。ただその規模は,いまの新聞社よりはるかに小さい。
これらの論考を読むにつれ,新聞広告のみならず,新聞社の将来は非常に厳しいと感じさせられる。しかし,このような特集を組むほど朝日新聞社に強い危機意識があるのだとしたら,まだ希望はある。ほとんどの人がまだ知らないが,実は画期的なイノベーションが近々登場するとしたら,話は変わってくる。率直にいって,「新聞」というメディアが世のなかから消えてしまうとしたら,ぼくの人生にとって大きな衝撃となる。若い世代がそういうかどうか,わからないが。