Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

JIMS@大阪大学→心斎橋で考えた

2010-06-27 22:54:42 | Weblog
今週末は大阪大学で日本マーケティング・サイエンス学会が開かれた。わが部会からは,松村さん(大阪大),山本さん(成蹊大)の「モバイルSNSにおけるクチコミネットワークの価値」を発表した。紹介制の SNS の実データを用いて,紹介ネットワークが実現する利益の増加を計算し,その要因を分析したもの。フロアから活発なコメントが出たのは,テーマの現代性に加え,いい意味でのモデルの簡素さの故だと思う。

本筋から離れるが,もう一つ本報告の「歴史的意義」は,JIMS 初の iPad によるプレゼンが行なわれたことだ。数十分後に濱岡さん(慶應大)がやはり iPad でプレゼンしたが,「初」の栄誉はわれわれにある。そして実は,松村さんの報告に先立ち,ぼくが(彼の)iPad で部会の活動概況を報告した。つまり,正確には,ぼくが JIMS の歴史の一頁を開いたのだ・・・といった瑣事でしか,自分の「存在価値」を出せなかった。

そのあと,近藤さんのモバイル情報サービスの研究にコメント。さらに主に普及や新製品開発に関する研究発表を聴いた。濱岡さんや井上さんのパワフルなプレゼンに感心しつつ,長岡-山田組の革新性の概念探求や阪本さんの色彩に関する研究を聴き,同じテーマを一歩一歩追求し続ける姿勢にも感心した。聴講できなかった発表のなかにも,素晴らしい研究があったであろう。では,この学会は順風満帆なのだろうか。

個人的な感覚として,何ともいえない停滞の感覚を覚える。INFORMS Marketing Science Conference と比べて,とかではない。両者は置かれている立場,歴史的背景,すべて違う。国際学会で展開される「超絶技巧」にひたすら追随すべきだとは思わない。では日本のマーケティング・サイエンスは,独自の実り豊かな道を歩んでいるのだろうか? このフレンドリーな空気から何が創造されているのだろう?

学会のあと,恩師や「同門の」人々と心斎橋へ。そこで名プロデューサ吉田さんが語ったことが印象に残る。日本企業はなぜアップルになれないのか,なぜスティーブ・ジョブズが出てこないかと問うより,自分がジョブズになろうと考えないのか。そのために科学ができることは限られるが,何もないわけではない。それは何なのか・・・いまのぼくにはその答えははっきり見えないが,雰囲気はわかる。

結局,何を面白いと思うかは,その本人の関心による。何を美しいと思うかは,その人の美意識にによる。経済学や物理学のように,確立したディシプリンがあれば,面白さや美しさの基準は比較的共有されやすいが,マーケティング研究ではそこが少し違う。いまは自分が何を面白いと思い,美しいと思うかを探求すべきだろう。そこに強い信念がないと,誰かとそれを共有することなど到底できはしない。

まずは「血みどろの」読書から始めるべきかな。

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