あっという間に日が経ってしまったが,火曜の夜,筑波大学のサービスカイゼン研修で,あろうことか「コンセプト創造論」というタイトルで講義してしまった。このタイトルは主催者がつけたもの,という言い訳は,あとで主催者に訂正を申し出たわけでもないので,フェアでないだろう。そもそも本務校で「クリエイティブ・マーケティング論」という名前の講義を平然と行っているくせに,いまさら謙虚な振りをしても説得力はないかもしれない。
ぼくの前に,経営学者の生稲さんがコンセプトという視点から事例を講義された。企業戦略の視点から,コンセプトの概念(何か変な表現だな・・・)を具体的にイメージしてもらったあと,ぼくが抽象的にコンセプトを作る方法論を話すという段取りだ。もちろん,そんな方法論が世のなかで確立しているわけではなく,ましてぼく自身が熟達しているわけではない。貧しい経験と参考書を頼りに,つくばの実務家の方々にお話しさせていただいた。
コンセプト構築のプロセスはさまざまだが,まずは顧客分析から始める,という筋立てを採用した。セグメンテーション/ターゲティングの一般論のあと,ペルソナ法について言及した。マーケティングの現場では昔から類似の方法はあったわけで,多少の経験はある(ただし古い!)。そして,極端例の具体性を重視するエスノグラフィへと話を進めつつ,その対極に鎮座する,代表性を重視する統計分析とは補完関係にあるという「大人の見解」を披露する。
個別的・具体的な顧客理解の典型が,世界的デザイン会社 IDEO の方法論だ。それは以下の本によれば「洞察」「観察」「共感」の3ステップに集約される。そしてアイデアの生成段階では「ブレーンストーミング」と「試作」の役割が強調される。IDEO といえば製品デザインを連想してしまうが,この本には病院やホテルなど,サービス産業での実例が豊富に盛り込まれている。では,サービスのデザインにおける試作とは?これについても興味深い事例が紹介される。
つまり, IDEO 流デザイン思考は,サービス・イノベーションにも役に立つということだ。サービスでのデザイン思考=店内の内装や什器の話,などと思ってはならない。本書は,これまで IDEO を紹介してきた書物と一部重複しつつも,こうした新たな内容を含む。パート2「これからどこに向かうのか」では,デザイン思考の社会問題への応用を論じており,大変意欲的である。ただし,ぼく個人は,そのおかげで本書がやや冗長になった気がしないでもない。
では,顧客理解,ブレストを通じていかにコンセプトを創り出すのか。いったん拡散したアイデアをふるいにかけ,生き残ったものを混合し凝縮し変換させる。その手続きはあまり明確ではない。形式知化することが難しい部分かもしれない。しかし,よいコンセプトが満たすべき条件はある。ハース&ハースの「記憶に焼きつく(stick)アイデアの6原則」(*)のうち,少なくとも最初の3つがそうだろう・・・すなわち,単純明快で,意外性があり,具体的であることだ。
よいコンセプトを生み出すテクニックの1つが,アナロジーである。それを教えてくれるのが以下の本,特に
4章の「始まりはコンセプト」だ。そこで紹介されている事例を使わせていただいた。たとえば,
ぼくの講義のあと,この研修のモデレータである岡田さんが実習を行なう予定であったが,ぼくがしゃべりすぎて,その時間があまり取れなかった。年長をいいことに傍若無人に振る舞うという,最も唾棄すべき「老害」が自分にも現れたということか・・・。この研修,来週からいよいよ佳境に入っていく。受講者,講師の皆さん,あとひと頑張りです!
そしてスタッフの皆さん,陰の立役者・根立さんにも多謝!
ぼくの前に,経営学者の生稲さんがコンセプトという視点から事例を講義された。企業戦略の視点から,コンセプトの概念(何か変な表現だな・・・)を具体的にイメージしてもらったあと,ぼくが抽象的にコンセプトを作る方法論を話すという段取りだ。もちろん,そんな方法論が世のなかで確立しているわけではなく,ましてぼく自身が熟達しているわけではない。貧しい経験と参考書を頼りに,つくばの実務家の方々にお話しさせていただいた。
コンセプト構築のプロセスはさまざまだが,まずは顧客分析から始める,という筋立てを採用した。セグメンテーション/ターゲティングの一般論のあと,ペルソナ法について言及した。マーケティングの現場では昔から類似の方法はあったわけで,多少の経験はある(ただし古い!)。そして,極端例の具体性を重視するエスノグラフィへと話を進めつつ,その対極に鎮座する,代表性を重視する統計分析とは補完関係にあるという「大人の見解」を披露する。
個別的・具体的な顧客理解の典型が,世界的デザイン会社 IDEO の方法論だ。それは以下の本によれば「洞察」「観察」「共感」の3ステップに集約される。そしてアイデアの生成段階では「ブレーンストーミング」と「試作」の役割が強調される。IDEO といえば製品デザインを連想してしまうが,この本には病院やホテルなど,サービス産業での実例が豊富に盛り込まれている。では,サービスのデザインにおける試作とは?これについても興味深い事例が紹介される。
つまり, IDEO 流デザイン思考は,サービス・イノベーションにも役に立つということだ。サービスでのデザイン思考=店内の内装や什器の話,などと思ってはならない。本書は,これまで IDEO を紹介してきた書物と一部重複しつつも,こうした新たな内容を含む。パート2「これからどこに向かうのか」では,デザイン思考の社会問題への応用を論じており,大変意欲的である。ただし,ぼく個人は,そのおかげで本書がやや冗長になった気がしないでもない。
デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice), | |
ティム ブラウン, | |
早川書房 |
では,顧客理解,ブレストを通じていかにコンセプトを創り出すのか。いったん拡散したアイデアをふるいにかけ,生き残ったものを混合し凝縮し変換させる。その手続きはあまり明確ではない。形式知化することが難しい部分かもしれない。しかし,よいコンセプトが満たすべき条件はある。ハース&ハースの「記憶に焼きつく(stick)アイデアの6原則」(*)のうち,少なくとも最初の3つがそうだろう・・・すなわち,単純明快で,意外性があり,具体的であることだ。
*あとの3つは、信頼性があり、感情に訴え、物語り性があること。これはどちらかというと,コンセプトを説得する際の条件のように思われる。
アイデアのちから | |
チップ・ハース,ダン・ハース, | |
日経BP社 |
よいコンセプトを生み出すテクニックの1つが,アナロジーである。それを教えてくれるのが以下の本,特に
4章の「始まりはコンセプト」だ。そこで紹介されている事例を使わせていただいた。たとえば,
ブックオフ:「中古本のコンビニエンスストア」,最近では「捨てない人のためのインフラ」著者の楠木氏は経営戦略論の研究者だが,コンセプトの役割を重視されている点は,マーケティング研究者にとっても興味深く,心強くもある。しかも本書は,競争戦略に「ストーリー」という視点を持ち込もうとする意欲的な書物だが,ぼくは講義でほんの一部を使わせていただいたにすぎない。経営学とちがい,ぼくの視野は顧客との接点にだけ集中している。
サウスウェスト航空:「空飛ぶバス」
スターバックス:「第三の場所」・・・これはアナロジーではない?
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books), | |
楠木 建, | |
東洋経済新報社 |
ぼくの講義のあと,この研修のモデレータである岡田さんが実習を行なう予定であったが,ぼくがしゃべりすぎて,その時間があまり取れなかった。年長をいいことに傍若無人に振る舞うという,最も唾棄すべき「老害」が自分にも現れたということか・・・。この研修,来週からいよいよ佳境に入っていく。受講者,講師の皆さん,あとひと頑張りです!
そしてスタッフの皆さん,陰の立役者・根立さんにも多謝!
まだまだ「修行」不足で、事例を通じて上手く「コンセプトの力」を語ることができませんでした(反省)。。。
でも、mizunoさんはじめ、表舞台の方、陰の立て役者の方々のお陰で、全体としてはよい講義だったと思います(微笑)。
でも。。。もっと、修行せねば!!