Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

IQ は高いほうがいい,だがそれだけでは …

2008-08-21 22:45:36 | Weblog
昨日は,芝公園で実務家向け「選択モデル」セミナー。今回,パワポをかなり整理縮小して臨んだつもりだったが,やっぱり最後のほうは時間が足りなくなって,駆け足になってしまった。2時間という制約のなかで,何をどれだけしゃべればいいのか・・・。この10年近く,いろいろ試行錯誤しながら講義内容を微調整してきたが,堂々めぐりの感が否めない。

製品・サービス間の競争を前提に消費者行動を予測するうえで,離散的選択モデルはなかなか有用だと思う。だから,それを実務家に教えることに大いに意義はあるのだが,一方で,選択モデルが抱える問題が気になってもいる。線形選好関数で扱えない問題のほうが実務的により重要で,よりチャレンジングだという思いが強い。だが,それに自分なりの解答を出せていない。

帰り道,つい買ってしまった Pen 9/1号は「ポルシェの美学」特集。Mac のデザインでも強く意識された Porsche だが,常人の予想を超える進化を遂げている。数年前に SUV のカイエンを出したのに続き,来年,ポルシェは4ドアクーペ「パナメーラ」を発売するという。Pen にそのイメージ・イラストが出ている。その「属性」が明らかになったとき,選択モデルはその成否を予測できるだろうか? 

ポルシェは企業としてもとてもユニークに感じる。創業者一族が力を持つ点で,フォードやトヨタ以上のようにみえるが,非常に革新的だ。VWを傘下に置こうとしている点も,大衆ブランドの企業が高級ブランドを吸収するという,一般的な傾向と異なっている。パナメーラは VW やアウディとも「基本設計を共有する」という。徹底した美学と職人気質がいかに野心的な経営と結びついているか・・・。一度きちんとした分析レポートを読んでみたい。

Pen (ペン) 2008年 9/1号 [雑誌]

阪急コミュニケーションズ

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同時に買った DIAMOND ハーバードビジネスレビュー9月号では「組織IQ」が特集されている。要するに,IT をどう活かしていくかという議論であり,最も注目される企業はグーグル,ということになる。この土俵でも,日本企業はなかなかベンチマークの対象にはならない。IQ より EQ? これも最近どうなんだろう・・・。ぼくとしては,Creative Intelligence Quotient (CQ) を主張したい。それこそが,アップルやポルシェの強みを「説明」(同義反復?)するだろうから・・・。

今回の DHBR では,クリステンセンたちの「財務分析がイノベーションを殺す」という論文が面白い。非現実的な前提に立つ「手続き的に優れた」手法が,「結果的に劣った」帰結をもたらすことが指摘されている。同じような批判が,選択モデルやマーケティング・サイエンス(あるいは,マーケティング・リサーチ全般)に対してもあり得るのでは・・・。そのようなことを,シミュレーションで示してみても面白いだろう。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2008年 09月号 [雑誌]

ダイヤモンド社

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