Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

JACS@東海大短大

2008-11-23 22:56:19 | Weblog
土曜はゼミ入室試験。「最低募集定員」15人のところ12人の応募があった。人気ゼミでは,50人を超す応募がある。やはり「統計」「コンピュータ」「サイエンス」ということばを並べたことで,文系の学生たちは引いてしまったか…。しかし,逆にいうと,それがよい選抜になったかもしれない。面接試験で10人を合格とする。5人を定員に二次募集を行う。何人ぐらいの応募があるだろうか…。

JACS に参加するため,夜静岡へ移動。初めての土地。駅近くでマグロ料理,生しらす(最高!),桜エビのてんぷら,黒はんぺんなどを食べる。お店の人によれば,静岡は住み心地がよすぎて,長くいると,のんびりした性格になってしまうという。泊まったホテルにはウェルカム・ドリンクなるサービスがあり,1時間に限り,各種のお酒が飲み放題となる。早い時間にカニが出る日もある。

翌朝,ローカル電車に乗って東海大短期大学へ向かう。心理学的な研究を中心に発表を拝聴する。最初に,竹村他「Consumer's ambiguous comparative judgment: Fuzzy theoretic model and data analysis」を聞く。推移性などを満たさない不完全な選好をファジー集合モデルで分析しようとするもの。ただ残念ながらファジーの理論になじみがないので,ほとんど理解できなかった。

次いで芳賀「コンジョイント・レスポンスレイテンシー法」。ウェブ調査で計測した対比較での反応時間に影響する実験要因が分析される。反応時間はタスクの困難性を反映していると見るのが一般的。ただ,そうした前提を含め,反応時間が本当は何を測っているのか,より深い心理学的分析に興味を感じる。そこがうまく識別できれば,ぼく自身の研究でも強力なツールになるだろう。

都築他「多属性意思決定における文脈効果に関する実験的検討とモデル構成-選択反応と眼球運動測定に基づく検討-」は,文脈効果を検証する三択のタスクをアイカメラで計測する。前段で語られた,魅力効果,類似効果,妥協効果のうち,魅力効果が最も顕著に再現されることや,それを予測するコネクショニスト・モデルが興味深い。系統的に研究が積み重ねられている。

発表後都築先生に,文脈効果研究の動向について少し伺う。消費者行動研究以外にも,認知科学のほうで相当研究されているらしい。それにしても,魅力効果の再現性が高いということは,人間の意思決定パタンとして,脳に深くプログラムされているということだ。そこにどういう適応性があるのか,進化心理学的な説明は可能だろうか,なんてことに興味を覚える。

教室を移動して,杉谷「企業に対する「信頼」とは何か:不祥事報道において有効なコミュニケーション戦略の検討」。実験によれば,企業不祥事に対する謝罪広告は,感情に訴えるより理性に訴えるコミュニケーションのほうがおしなべて効果的である。ただし,コミュニケーションの主体が報道機関になった場合は別だという。発表者自身の説得的コミュニケーション能力も高い。

最後に,濱岡「アクティブ・コンシューマー4.0 首都圏調査2008」を聞く。消費者による製品アイデアの提案や使用方法の創意工夫のような「創造的消費」行為を,Howard-Sheth のような消費者行動の枠組みに組み込むことが著者の目標だという。そのために,着々と調査が積み重ねられている。今回聞いた多くの発表から共通に学べるは,「積み重ね」の偉大さである。

学会のあと清水に立ち寄り,再びマグロ料理。なお,近海ものを味わうには焼津や御前崎がいいというから,いずれぜひそちらも訪れてみたい。今週末は JIMS。今度は,聞き役に徹しているわけにはいかない。
 

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