Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

行動経済学会@青山学院大学

2012-12-09 21:31:22 | Weblog
12月8日,共同研究を行っている山田尚樹君(筑波大)の発表を聴きに,青山学院大学で開かれた行動経済学会第6回大会を訪れた。実験社会科学カンファレンスとの合同開催で,併行セッションが7つもある。老若男女,様々な分野の研究者が集まり,賑わいを見せていた。

山田君の発表終了後,マーケティング・サイエンス学会(JIMS)が開かれている汐留に移動する手もあったが,行動経済学の動向を知りたくて,そのまましばらく居残った。新会長の池田新介先生(阪大)の講演が終わる直前に,JIMS の懇親会に出るため会場を去った。

池田氏は講演で,消費者はしばしば「自滅する」選択を行うが,そうした行動は稀少な資源である「意思力」を最適配分した結果として説明できることを論じられた。いかにも経済学者らしい議論だが,会場に少なからずいたであろう心理学者たちがどう聞いたかが気になる。

自滅する選択―先延ばしで後悔しないための新しい経済学
池田新介
東洋経済新報社

竹内幹先生(一橋大学)の発表では,消費者の推論プロセスがアイトラッキングで測定され,下條信輔先生(CALTEC)の視線のカスケード現象と比較されていた。経済学と心理学が架橋されつつあるのは事実で,お互いの差異を残しつつ,刺激し合っていくとしたら素晴らしいことだ。

この学会には,星野崇宏先生(名大)が主宰するマーケティングのセッションもある。マーケティングと心理学の交流は深いが,経済学との交流は計量経済学的手法の導入に留まる。しかし,行動経済学を介してつながっていくことはあり得るシナリオで,今後の発展に大いに期待した。

ぼくが最も興味深いと思ったのは,鷲田豊明先生(上智大)による「人工社会における構造と人格」という発表だった。方向性と速度だけで表される「個性」を持つ膨大な数のエージェントが,空間上を飛び回って相互作用するというモデルだが,そこからある種の秩序が創発される。

このモデルが生み出すパタンを社会の原型と考えていいのか,どう解釈すべきかよく分からないが,非常に刺激的である。物理学者なら,この現象に合致する数理モデルを見いだすかもしれない。なお,この発表があったのは行動経済学ではなく,実験社会科学のセッションであった。

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