Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

これもリースリングの神髄

2016-01-06 | ワイン
初買いを済ました。特別なものはなかったが、パン屋と肉屋が閉まっている時であるから、朝食にはビスケットやバナナを齧れるようにしておいた。チーズは先ずは我慢しよう。

年末年始のワインについて纏めておくべき時だろう。最後のワインは、2012年のザールからのリースリングである。ファン・フォルクセム醸造所の歴史的グランクリュ地所ゴッテスフースである。20世紀初頭にはボルドーの彼のマルゴーよりも高級だったリースリングの復興である。

赤スレート土壌で、丁度場所通りアルテンベルクとシャルツホーフベルクの中間のような個性があり、前者より高級であり、後者よりも奥が深い。120年前のそのままのアルテレーベンと呼ばれる古い葡萄からの果実であり、なかなかテロワールが凝縮している。

2012年産であるからまだまだこれから眠りに就こうかという按配だが、自宅で開けるのは初めてであり、その潜在力を吟味したかった。同時にこの醸造所の今後の可能性をも値踏みしてみたかった。

比較対象には、既に開けてあったデーノッフ醸造所のデルヒェンとブリュクリン・ヴォルフ醸造所のアルテンブルク2014年とする。前者は若干粉っぽくぬるっとしたポルフィール土壌で、後者は酸が強い雑食砂岩にぺトロール風の土壌感がある。後者は通常は重いリースリングになり過ぎて好みではなく、何よりも新鮮なぺトロール風味があまり気持ちよくない。しかし2014年はずば抜けた酸の量感で楽しめるのだ。前者とゴッテスフースには、チェリー風味で共通点がある。2014年産の一般的な特徴でもある。但しこちらのアルコールは13%と、やはりビュルクリン・ヴォルフ醸造所などとも共通性が高い。

但し、ファン・フォルクセムの場合は天然酵母にも拘っているので、どうしてもデーノッフの培養酵母の造り方とも、ビュルクリン・ヴォルフのような最新天然酵母醸造技術とも異なるのである。要するに、グラスに注いで鼻につくのは農家の家畜小屋の藁などの匂いなのだ。それを野卑と貶すのは容易くとも野趣と楽しむまでは行かないだろう。その辺りが我々ごく一般的なリースリング愛好者の味覚からの反応だと思われる。

しかし、まだまだ瓶熟成とはいかない今、その味覚には、チェリーだけでなくて、苦味のある薬草やレモンの茎などの深みがあるのだ。これだけでも一流のグローセスゲヴェックスだ。よろしい、通常よりも糖を残しているかもしれない。しかしその酸とミネラルとアルコールでバランスが取れていたならば、なんの文句があろうか。アロエのような苦味と蜂蜜の甘みが、決して表には出ない。これには気が付かない人も多い筈だ。その繊細さこそが、リースリングの神髄だ。

この二つのグローセゲヴェックセは、現在のVDPの規定からすると明らかに逸脱したもので、瓶熟成の変化も追ってみなければ結論は出せない。しかし、今の時点で双方とも並々ならぬ実力を示したもので、決してメインストリームではないが、各々がこうした可能性を追求して明白な成果を出してほしい。



参照:
神の膝元のリースリング 2015-06-02 | 試飲百景
大量生産ビオ商品市場で 2012-08-26 | 試飲百景
聖土曜日から復活祭にかけて 2013-04-01 | 暦
グローセスゲヴェックスとは? 2013-04-18 | ワイン
菊牛蒡とタロイモの年始 2016-01-03 | 料理
石橋を叩いての樽試飲 2015-06-08 | 試飲百景
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